後継者

事業承継 技術に頼った経営継承の失敗例

ある時、私は会社の経営から会長(先代)の発言権を完全に奪おうとしました。
なぜならば、先代の存在が非常に疎ましく感じたからです。
しかしそれは上手く行くはずもなく、その前後で社内に混乱をきたしました。
そのことは、ある学びを得るのに非常に有益な経験だったと今では思えます。
それは、人は理屈では動かない、という事でした。


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親の会社を継ぐ技術

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その当時、私はいつも苦虫を噛み潰したような顔をしていました。
もう、形式上は代表者を交代してずいぶんの年月が経っていましたから、外から見れば比較的「スムーズな経営者交代」に見えていたかもしれません。
しかし、実態は、決して自慢できるようなものではありませんでした。

私は私なりにやりたいことがある。
先代は先代としての考えがある。
この相いれない双方の想いのはざまで、様々な問題が起こりました。

 

具体的には、私が社内で会社の今後の戦略を語ります。
事前に会長には、相応の説明をしたつもりですし、その時は積極的にではないものの、
「好きなようにやればいい。」
という言葉をいただいていました。

そして、社内での説明会を一通り終え、質問がないかを社内に問うたその時、会長は自ら発言を始めました。
その発言内容は、私が語ったことを”なかったこと”にするかのような言葉です。
さすがに私も、開いた口がふさがりませんでした。

 

ある時には、会長が同業者の集まりに出席し、そこで何かを話したようです。
人づてに、耳に入った話は、会長が語ったのは「わが社の経営戦略」。
しかも、その中身は、私の考えるものと全く違うものでした。

そんな事もあって、私は激怒し、会長の社内での発言、社外のイベントへの参加はすべて禁止しました。
会長に関していえば、今振り返ってみると、恐らく私が何に怒っているのか、なにをカリカリしているのかわからなかったようです。
私の主張を理解できないわけですから、会長は私にとっては信じがたい言動をあちこちで行います。

当時の私は、もぐら叩きのように、次々と出てくる問題に辟易としていました。
あるとき、直接そのことを本人に問い詰めたことがあります。
その時会長はこういいました。

「お前をサポートするつもりでやってるんやけどな。」

当時はその言葉に頭に血が上ったのを記憶しています。
私の言葉を全く重視せず、自分の価値観だけで動いておいて、何がサポートか、と。

今、冷静になって振り返ってみると、恐らく会長は私がやりやすくなるような行動をしたつもりなのだろうな、と思います。
悪気があったわけではないことは確かです。
ただ、私の価値観を理解しようとせず、
自分の固定観念で判断した”サポート”を繰り返していた
のだと思います。

 

この根本的なすれ違いは、規模の大小はあれど、様々な組織にあるようです。
必ずしも経営の継承に限った話ではありません。
最近の組織論の中では、単なる技術だけでは組織を変えられない、という考え方が広まりつつあります。
理屈では、組織は変わらない、という事です。

事業承継においても、同様です。
弁護士や税理士、保険代理店に相談すれば、自社株対策や相続時の財産分与の事は対応できるでしょう。
しかしそれはあくまで、法的な拘束力で先代を縛るという選択をするだけで、双方の関係が変わるとは期待できません。
法的手段を取るなら話は別ですが。

そういった技術論で解決できないことが、今、後継者の目の前にある問題ではないでしょうか。


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