後継者

鬼のマネジメントと社内のモラル ~後継者が気を付けたいこと

以前知り合いだった二代目経営者が、社員教育について語っていたことを思い出した。
彼は、社員教育に自信を持っており、「ウチの社員はめちゃくちゃ働くで」と自慢げだった。

しかし、その会社は、もうない。
社内では不祥事が続発し、製品の品質も落ち、顧客からのクレームも多かったという。
その会社に何が起こっていたのでしょうか。

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社員を活かすか、殺すか

鬼のマネジメント

組織をまとめよう、というとき、手っ取り早いのは「鬼のマネジメント」。
チームを強制し、規律やルールにのっとって動かす。
マニュアル化の重要性が叫ばれたのもバブルから最近までの風潮だったように記憶しています。
今の管理職世代としては、その文化を引きずっていて、チームをまとめるのには強制をすることが肝要と考えがちです。
とくに、中小企業の二代目となると、親がとっていた軍隊式のマネジメントを踏襲する人も少なからずいる。

とくに、二代目というか後継者世代(今の30歳代~40歳代)は、頭が回る。
どちらかと言えば、「怖いけどスキがある」親世代と違って、二代目世代が軍隊式マネジメントをやると「怖くてスキがない」マネジメントをやりがちです。

すべてをマニュアル化する。
問題が起これば、それを起こさないための対応や仕組みを作る。
そこを逸脱すれば罰を与える。(罰と言っても減俸までいかなくとも、にらまれるだけでも罰と考えています)

すると、そこにいる社員は、「恐怖から逃げる」ために仕事をする。
しかし二代目は次々と逃げ道をふさぐ。
がんじがらめになると、人は思考停止に陥ります。
何か創造的な考えを持つと、支配から外れてしまうから考えないようになる。
そうでもしないと、まともでいられなくなるわけです。
仕事は嫌になり、その場から立ち去りたくなる。

支配しようとすればするほど起こる事

印象深い話があります。
今はそこまでひどくないのかもしれないですが、昔、生命保険会社ではこんなことがあったそうです。
日本の生命保険会社は、戦後からセールステディということで、女性営業職員を大量に採用しました。
そして彼女たちは、生活を助けるために、生命保険をセールスして歩きました。

彼女たちは、営業ノルマが至上命題です。
営業所長は、長時間の朝礼で営業ノルマに達しないセールスレディをこき下ろします。
人格否定なんて普通のこと。
まともに人として扱われるためには、数字は必達です。

そこで彼女たちは、”自爆”契約をするわけです。
具体的には、他人の名前を借り、自分で掛け金を払い、契約を成立させる。
モラルもへったくれもありません。
自分が人間として認められるためには、そうでもしてつじつまを合わせないといけない。
そこでそういった、モラルとはずれたことをするわけです。

収入を得るために仕事をしてるのに、得た収入をノルマのつじつま合わせに使う。
合理的に見ておかしいのですが、そういう雰囲気が蔓延していた時期があったようです。
とにかく、ノルマを達成させられなかった苦痛から逃れたい一心だったのかもしれません。

これは生命保険会社に限ったことでもなく、例えば証券会社や銀行でもよくあったようです。
「契約してくれるまでは、帰りません」
といってそのお宅に居座った営業社員の話はなんどか聞いたことがあります。
帰らないというより、帰れないのです。
手ぶらで帰って、会社で上司に何を言われるかわからないのですから。

恐怖から逃れるために起こす行動

ミスの隠蔽

前述のようなことが起こるくらいですから、ミスの隠蔽は当然のように起こります。
これは私にも経験があります。
学生時代、ある工場でアルバイトをしていました。
コンベアに流れてくる部品に、別の部品に組み付けてラインに流す仕事です。
すると、組付けの際に、部品の一部が折れてしまうことがある。
はじめのうちは、ちゃんと申告するのですが、やたらとめちゃくちゃに怒られる。
じゃあ、言わないほうがいいじゃん、とコッソリ流してしまいました。

それが見つからないことがわかると、あとは深刻なんてしません。
あの製品、その後どうなったんでしょうね・・・(もう時効のはずです・・・汗)

ま、私の恥さらしはともかくとして、たぶん、同じことをやった人は一人や二人ではないでしょう。

必要なことを言わない

これはある医療チームで起こった話。
簡単な手術のはずだったのが、麻酔の際に事前検査でもわからなかったアレルギーが患者に出た。
気管が腫れ上がって気道をふさいでいたので、意志は必死に挿管をこころみるがうまくいかない。
本来ならここで期間を切開するのが一般的な流れらしいのですが、医師はそこまで頭が回らなかった。
なにしろ、簡単に終わる手術と思い込んでいたから。
しかしある看護師はそのことに気づき、気管切開キットを準備して後ろで立っていました。
しかし、医師は彼女に気づくことなく、患者は重篤な後遺症を残すことになったらしい。
気管切開キットを持って佇む看護師。
彼女は、医療チームのトップである医師に助言など行える立場でなかったので、口に出せなかったといいます。
「切開が必要なのでは?」という一言が。

ここまでの話でなくとも、企業の中でも近い話はよくあります。
なんで先に言ってくれないの!?
と上司が言うと、社員は黙り込んでしまう。
必要以上のことを言って、叱られるのが怖いのです。

自発的な行動が亡くなる

先の看護師ほどのひっ迫した状態でさえ、患者を救うヒントを口に出せない空気がある。
そこまでの重大事でなければ、なおさらです。
何しろ、叱られない最善の方法は、言われたことだけを確実にやること。
気をまわして何かをしても、上司が気に入らなければ叱られる。
ならばやらないほうがマシ。
そんな風に思考回路が作られていく。

効率化の弊害

マニュアル化、ルール化

マニュアル化し、ルール化すると効率は上がります。
そしてそれから逸脱しないよう教育する。
よく「軍隊式マネジメント」といいますが、これは厳しいだけでなく、例外を作らない超効率そしきです。

冒頭の話に戻ると、この状態を作り上げると「めっちゃ働くで」という状態になるかもしれません。
しかし、これまで見てきたとおり、モラルの低下や、自主性の低下はかなりの頻度で起こりがちです。
この病巣が根深くなってくると、「これぐらいもらって当然」「ばれなきゃいいんだ」という思い込みができて、お金がらみの不祥事が出始めたりもします。

最近企業の不祥事をよく耳にするような気がしますが、もしそうだとすれば、こういったこれまでの組織の在り方の問題なのかもしれません。

こういうマネジメントが悪いと決めつけるわけではありませんが、創造性が必要な今のタイミングだと、少し不似合いになってきているのかもしれません。

それでもやってしまうのは・・・

仮にこういったことを、なるほど、そうかも、と感じたとします。
それでもいざ現場に立つと、やってしまうのはやっぱり鬼のマネジメント。
それはなぜかというと、まず、お手本がそれしかない、ということです。
そして次に、他のやり方を知らない、ということです。

だから、そのことに疑問を感じることはなく「自分がやっていることは正しいはずなのになぜ?」となり、
「採用する社員が悪いんだ」ということになる。
そこをぐるぐる回っていると、たぶん組織は一向に良くなりません。

私の場合、たまたま複数の社員に一斉に退職願を突き付けられ、そのショックで気づくことができました。
しかしそういった事件が起こらないまま、会社がつぶれてしまうことだってあるわけです。

もしかしたら今のやり方ではダメなのかもしれないと思える事件が起きるのを待つか、違うやり方があることを知るために視野を広げるか。
後継者にとっては、選択の必要性を感じることもあるかもしれません。
いずれにせよ、視野を広げることは様々なところで後継者にとっては重要なことです。
ぜひ、どうすれば広い視点でものを見られるか?を自問自答してみてください。
今やるべきことが少しずつ見えてくるかもしれません。

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