後継者

事業承継で親が社長を譲らない時に後継者にできること

多くの同族企業の事業承継で、かなりの確率で耳にする後継者の言葉が、「親が社長の立場を譲ってくれない」というものです。
確かにその傾向は非常に高いと思うのですが、後継者の立場としてできることはそんなに多くはありません。では、どう考えていけばいいのでしょうか。果たして、素直に代を譲ってくれるような方法というのはあるのでしょうか。

 

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なぜ親はいつまでも後継者に譲らないのか?

「後継者はまだまだ」というのは先代の強がり!?

親子の経営において、親が社長をやり続ける理由は、多くの場合「後継者が未熟であるから」という風に認識されています。或いはそれは事実なこともあるかもしれませんが、実はもっと大きな動機が他にあります。それはシンプルな話で、親である先代は自分が会社の代表を降りるのが嫌なのです。

いやいや、口では「早く、肩の荷を下ろしたい」と言っているじゃないか、と思われるかもしれませんが人間の言葉というのは信頼ならないものです。むしろ、言葉より行動を重んじるべきで、「代表を譲らない」という行動こそが親である先代の本心であることが多いと思います。じゃあなぜ、早く辞めたいというような言葉を口にするかというと、その方が自分的に見て「世間受けする」と信じているからです。自分で育て上げた会社をすっぱり時代に譲って、セカンドライフを楽しむ自分という印象を外にアピールしたい、という本心がそこに隠れている可能性が高いと思います。

じゃあなぜ辞めたくないかというと、一つは社会的地位や報酬を失うこと、二つ目に会社を辞めて時間を手にしてもやる事がないこと、三つ目はひとりぼっちになるかもしれないという不安です。世の中では後継者が会社を継ぐ覚悟が必要という話はよくされてますが、先代が会社や立場を手放す覚悟について話す人はほとんどいません。今の仕事や人間関係、そして地位を失う恐怖に打ち勝たなければ、たとえそれが子どもであっても代表の立場を譲りたくはないのです。そんな不安を素直に表現できればいいのですが、残念ながら会社の代表は強くあるべきということで強がりばかりを言っています。結果として、「後継者がまだまだで」という強がりな発言につながるのです。

会社を譲らなくとも先代は困らない

一般的には、一定程度社長が高齢化すれば、会社の代替わりがあるべきという話はあります。しかし、それを強制する法律もなければ圧力もありません。なにしろ、中小企業のオーナー社長は会社の中では帝王ですから、だれも意見できる人はいません。そんな存在感の大きな社長だからこそ、体調を崩す前、体力が衰えている前に、引き継ぎを行って引退することが形としては美しいわけです。しかし残念ながら人は健康な時には病気をするとか、体力が衰えるイメージがリアルにはわきません。今時、60歳代は皆さん元気です。70歳代になれば体調を崩すかと言えば、いくつかの病気を経験される方はいますが、社長さんは皆さんかなり元気です。70歳代も後半になってだんだんと体力の訪れを感じ始めます。ここで病気などが見つかると、「そろそろ潮時かな」なんて話も持ち上がるのですが、元気になると「生涯現役」なんて言い始めたりします。後継者は、「〇歳になったら代を譲るから心の準備をしておけ」なんて言われてカウントダウンをしていたりするのですが、いざその時になると「そんなこといったっけ?」みたいになるケースもよくあります。

それが80歳位になってくるともはや開き直りの世界で、「やっぱり生涯現役を貫く」なんて言い始めるのがよくあるパターンです。

結局、辞めなくとも誰かに強くとがめられることもなく、何ら罰則もない。ならば無理して辞めなくてもいいじゃないか、という気持ちも出てきたりして、気が付けば後継者はもう40歳代も半ばを過ぎていた、なんてことになり、後継者はかなりモチベーションを落としていることもよくあるようです。

無責任に生涯現役を礼賛する第三者

そして、先代が「やっぱり生涯現役」なんて言うと、第三者は手を叩きます。おー、頑張れ頑張れ!と。後継者にしてみれば、勘弁してくれよ、って感じのこともありましょうが、彼らには罪はありません。
そのようなエールは、親である先代には「やっぱり自分の考えは正しかった」という具合に自分の続投の後押しと感じられるでしょうから、辞めようか、どうしようかと揺れていた心は、続けようという方向に傾くこともあるでしょう。だんだんと年を追うごとに、同世代の友人たちが亡くなることもあり、自分の未来に残された時間を実感していたりもしていると思います。そんなに長くはない人生、好きなことをやって何が悪い、という思いも強くなってくるのかもしれません。

そんな思いもわからないではないと感じます。40歳代、50歳代にとっての1年、一月、1日というのは、80歳代のそれとは感覚的には大きく違うように思います。

社長をおりない親にどう対処するか

話し合う

社長の座を譲ってくれない親にたいして、どうすれば譲ってもらえるかというと実はできることはあまり多くはありません。一つは話し合うということ。これが正当に見えますが、結果はたいていケンカして終了という感じではないでしょうか。なかなか冷静になれないことが多いようです。先代としては実は自分が社長を降りない理由を自分では具体的に認識してないことが多いと思います。だから、出てくる言葉としては「お前がもっとしっかりすればいつでも変わってやる」的なものが多いかもしれません。そういわれて、後継者はカチンと来て言い返す。そんなやりとりになる可能性が高いと思われます。

また、本人にその気がない場合、後継者は先代を説得する、という形になります。説得するというのは、極端な表現をすると「相手の考え方を変えさせよう」という行為です。これは逆に反発を生み出すことも少なからずあるかもしれません。

追い出す

そこで考えがちなのは、何とか親を追い出せないか?というアイデアです。実際に割と強引に親を会社から追い出したケースは少なからずあります。この場合、親が一時的に反発しても、次第に納得してくれれば結果としては円満なのかもしれませんが、親が最後まで納得せず追い出された、という疎外感を感じ続けていると後継者的には結構つらいと思います。自分は親から仕事を奪ったという罪悪感にさいなまれ、けっこうこれが尾を引くこともあります。こういった未処理の感情をいだきつづけるというのは結構きついものですから、気をつけたいところです。

また、先代を追い出そう!と思って思いとどまるとき、後継者はその時の不安というか自信のなさを痛感することもあるかもしれません。思い切って親を追い出すことができないのは、自分の弱さだと感じてしまうことはけっこうあるように思います。その場合は、親子双方でお互いに依存しているのかもしれません。

自分が会社を飛び出す

これも比較的よくある話です。トヨタ自動車を引き継いだあの豊田章男氏でさえ、3回本気でやめようと思ったというくらいです。誰もがそんな思いが頭によぎることもあるでしょう。もう会社を継ぐのをあきらめて外に出る、という時に後継者には劣等感が付きまといます。親の期待に沿えなかった自分を責めてしまう可能性がとても高いと思います。しかし、そもそも自分の人生です。他人のために生きるのを辞めたことを素直に祝えばいいと思います。ただ、その決断ができないケースもあって、その場合は自分が独り立ちできない事への恐れを持っていることを自覚することもあるのではないかと思います。

今の環境の中で現実とうまく付き合っていく

最後に、「なにもしない」ということもあると思います。親を追い出すでも、自分が出ていくでもない。たぶんこの文章を読んでいる方は子の選択肢を取られる方が圧倒的に多いと思います。親を追い出すなり自分が出ていく成り、話し合いなりをする人は、自分で決めて自分で行動をすることが多いと思います。どの選択もできないから悩んでいるんだ、という方が大半なのだと思います。悩むのもいいのですが、私からのアドバイスとしては、もうここまで来たのなら今の現実を受け入れて、その前提でうまくやっていく覚悟を決めてもいいんじゃないですか?と言いたいです。

何を選んでもいい

正解はない

ここにあげたどの方針をとっても、正解でも間違いでもないです。最終的に評価を下すのは、自分自身です。
私は事業承継というのは、私たち後継者の人生の目的ではないと思っています。
私たちの人生の目的は幸せな人生を送る事であって、親の事業を継ぐということはそのための手段の一つです。
結婚するとか、子供を産むとか、どんな趣味を持って、どんな友人と付き合って、どんな日々を送るかというものの一つが会社を継ぐということです。そのすべては幸せのために存在すべきだと思います。

今わたしたちが考えるべきことは、どんな選択肢を撮ろうとも、最終的にそれを幸せと感じられる状態に持っていけばいいのです。それは力業を使えという意味ではなくて、同じ事件が起きても私たちはそれを幸せと捉えることもできれば、不幸と捉えることもできます。親の会社を継ぐ後継者という生まれも不幸と感じることもできるし、ラッキーと感じることもできます。大事なことは、目の前で起こること、自分の取った選択を、幸せだと感じることができる自身の人間性を育てることが、事業承継という中に含まれている裏ミッションだと思っています。

表面的にはとてもつらいこともたくさんあると思いますが、その裏にある幸せをかみしめられるようになれば、きっと何が起こっても怖くない状態に到達できるんじゃないかと思います。
どうぞ、どんな選択をしてくださっても結構ですから、その選んだ道の中にある幸せを感じ取って前に進んでください。
自分の人生ですから、自分で楽しみ方を見つけてください。

 

本稿に近い内容の動画です。良かったら合わせてご覧ください。

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