後継者

家業での親子の確執~確執の3形態

家業を継ぐ跡継ぎは、かなり高い確率で親子の確執に頭を悩ませるようです。
第三者は「話には聞くけど・・・」というレベルの認識。
だから、そのことを相談できる場所はないことが多い。
そこには解決策がないような気がするからです。

しかし、大なり小なり親子の確執はどこにでもあります。
実は親子経営に限ったことではないのです。
ただ、家業があり親子で経営をしていると、親子が距離をとることができないから表面化しやすいのです。

さらにこういった「お家騒動」は、外部に漏らすことがタブーなイメージがあります。
つまり、外部には一切話しません。
その結果、こんな親子の確執を経験しているのは自分だけかも?
誰にも相談できないんじゃないか?
そんな風に思い込んでいるのではないでしょうか。

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親子経営における確執の3つの形態

第一形態 『過干渉』

さて、親子で経営を行う際の、親子の確執と言っても様々な形態や進度があります。
もっともライトなのが、親による過干渉です。

簡単に言うと、一挙手一投足に対し、親が口を出す、というもの。
整理整頓をせよとか、身だしなみとか、生活習慣とか、仕事の進め方とか。
簡単に言えば、口うるさい上司といった風情ですが、後継者である子としては辟易とします。
なぜなら、それは子どものころから続くことだからです。

ひどい場合だと、ほんのわずかなことでもダメ出しされて、だんだんと窮屈になってきます。
だんだんと干渉されるのが鬱陶しくなり、仕事を隠すようになります。
仕事を隠すためには、親がいない場所がいいので、会社に寄り付かなくなったり、営業と称して事務所をあけがちになったりします。

場合によっては、JCなどの地域の経営者団体の活動に熱心になる方も出てくるかもしれません。
するとそちらの方が居心地がいいので、団体に入りびたりになることも。
度が過ぎると、他の社員との距離も開き、だんだんと会社にいづらくなってくることがあります。

こういった状況がエスカレートすると、親は何も言っていないのに
「どうせ親にケチをつけられるから」
と決めつけて何もできなくなってきます。
何かやろうと前向きなアイデアが頭に浮かぶと即座に、頭の中で「どうせ文句を言われる」と自己否定。
だんだんと行動ができなくなってしまいます。

親の目がなければのびのび仕事ができるのに・・・
親の会社でなければもう少し自分らしさが出せるのに・・・
そんな考えが頭をよぎりがちです。

第二形態 『介入』

後継者が後継者なりに仕事をしていると、
「それではダメだ」
と後継者の仕事を奪っていくケース。

どうせこれ以上やっても成果が上がらないとか、ヤル気がないとか、
後継者の責任でその仕事がうまくいかないという前提で、親が仕事を奪います。

後継者的には「じっくり時間をかけてやっていこう」と思ったことも、即座に成果を求められたりして、結果中止に追い込まれることも。

場合によっては、社員を巻き込んだイベントや取り組みへの中止命令や、
突然の計画変更の指示などもあります。

こうなると後継者としては、完全にやる気を失ってしまいがちです。

第三形態 『排除』

親が後継者を排除しようとする行為は、意外と多く見受けられます。
たとえば、後継者が出版された本でも、「ある日突然親からクビを言い渡された」という話はよくあります。
他にも、他の社員の前で後継者を罵倒し、その評価を貶めようとする行為もしばしばあるようですし、暴力で子を黙らせようというケースもあります。

跡継ぎである子の立場からすれば、跡継ぎを求めるから親の会社に入ったのに、いきなりクビにされるとか、人前で恥をかかされるとか、とんでもない話。
というよりも、わけがわからない、というのが正直な気持ちでしょう。

信じられないかもしれませんが、かなり多くの方が同じような状況に頭を悩ませています。

跡継ぎとしての生き方

親の跡を継ぐという事

親の会社の跡継ぎというのは、単なる「職業選択」でしょうか?
私はそうではないと思っています。
普通であれば、子は成長すれば生計を別にし、独立し、距離は(物理的な意味でも精神的な意味でも)離れて暮らします。

しかし、親の会社を継ぐという事は、家庭の生計はわかれているとはいえ、その収入の出どころは同じ会社。
常に顔を合わせ、毎日互いの存在を意識せざるを得ない距離感にいるわけです。

これはもはや単なる職業選択というより、生き方と言ったほうが適切かもしれません。
そういった選択を、意識していたにせよ、意識しなかったにせよ、私たち後継者はしてきて、今があります。
仮に親に無理強いされて継ぐことになったにせよ、それを振り切って逃げることは可能だったはずです。
それをしなかった以上は、結局は自分で親の会社を継ぐことに決めたから現状があります。

まずそこは、しっかりと意識しておいたほうがいいと思います。
誰かのせいにしても何も解決しません。
今そういうシチュエーションい自分がいることは、どういう経緯であれ自分が選んだ、という自覚をまずは持つ必要があると思います。

服従させたいという親の気持ち

さて、このような理不尽とも思える親のふるまいを、どう捉えればいいのでしょうか。
恐らく、親もなぜ自分がそんな振る舞いをするのか、理由はわかっていないと思います。
さらに言うなら、自分が後継者から見て、理解不能な行動をとっていることを自覚さえしていないことも多いのではないでしょうか。
そもそも親の立場からすれば、子どもは親のいう事を聞く存在であって、それは子どもが5歳のころも、成人してからも変わりません。
もはや癖のようなもので、気が付けばこのようなふるまいをしていた、というのが親にありがちなパターンです。

そして、まだ第一形態の「過干渉」までなら、後継者自身の心の持ちようで何とかなりそうな話ですが、第二形態以降は物理的な影響を伴ってやってきます。
後継者としては何とかそういった行動を防止せねば、となるわけですが、それが親を囲いの中に入れようとする行為に現れてきます。
具体的には、会議に親を出席させないとか、親を会社から追い出そうとかする行為です。

一方親はそういった気配に感づくとより強く、会社にい留まろうとします。
こちらが押せば相手も押し、こちらが引けば相手も引く。
埒が明かなくなって、親子は確執を通り超え、断絶というより、あからさまな戦争状態に入ります。

『居場所』の奪い合いが親子の確執の本質

この戦争状態は、何を奪い合うのでしょうか。
それは、ズバリ、自分の居場所です。

たとえば、第一形態において後継者は先代の干渉を受けます。
それはすなわち、後継者が「自分で考え、行動すること」を遮る行為で、
自分流ではなくて親のコピーになれ、という先代のメッセージです。

なぜそういうふるまいになるのかと言えば、親にとって理解不能なことを後継者が始めることが不安なのです。
会社を先代の知らない世界に連れて行ってしまうと、先代としては自分の居場所を失います。
だから先代が居心地のいい会社であり続けるよう、会社や後継者をコントロールしようとします。

一方後継者は、親の言いなりになっていれば、ある意味楽ではあるのですが自分の居場所はいつまでたってもできません。
このままでは社員は、自分を素通りして、先代の指示しか聞かない状態です。
もし、親がこのまま後継者が80歳になっても生きて会社の責任を持ってくれるならいいのでしょうが、先代は基本、先に会社を辞します。
そのあとのことを考えれば、後継者としては会社の中に、ちゃんと自分の居場所(自分が価値を認められる場所)を確保したいものです。
親に認められなくとも、せめて社員や、取引先には、自分の能力を認めてもらいたい、と考えるものです。
すると、親のやり方ではなく、自分のやり方でやる必要があります。
そこでぶつかり始めます。

それがエスカレートしてくるのが、第二形態の介入だったり、第三形態の排除だったりするわけです。

 

話し合いの前に武装解除

確執を持った親子が話し合いで物事を解決できる可能性は低い

一旦確執を持った親子は、話し合いではなかなか物事は解決できません。
表向き、意見が調整できたように見えても、自分たちが気づかない「領土争い」の問題は解決していないからです。
お互い自分の生きる場所を求めたけっか、「会社の方針」という形で自分に有利な話を勧めようとするのです。
大事なのは方針そのものではなく、自分が尊重される場所にいられるかどうかです。

真正面からそのテーマで話し合いができれば、話は別なのですが。

では、先代と後継者それぞれが「生存領域を確保したい」と正面から話し合いができるでしょうか?
たぶん難しいですね。
そうなると、議論はたいてい空回りします。

後継者は経営の近代化をしたいのではなく、自分が生きる場所を作りたい。
先代は後継者の話に乗らないのではなく、自分が置いていかれない場所を核をしておきたい。

じゃあ、その「裏の目的」をまずは担保すればいい。
それがシンプルな解決策なのではないでしょうか。

「あなたの強みを思う存分発揮してください!」

このブログの記事はほとんどが後継者に向けたものです。
しかし、どうやら先代である親御さんが読まれているケースもあるようです。
どちらの方が読んでいても、この一つのことを大事にしてみてください。

それは、「相手がその強みを思う存分発揮できる場所を、完全に任せてしまう」という事です。
そうすればその人は、思いっきり夢中にその分野について頑張ってくれるはずです。
任せるという事は、口出ししない、という事です。
そうすることでその人は自信を持ち、責任感を持って、その分野については徹底的にやりこむはずです。

たとえば、後継者が親を排除したいと思っていたとしましょう。
しかし、そうすればするほど親が抵抗する。
ならばまずは、親の得意分野を活かせる仕事に集中して当たってもらいます。
むしろそのほかの業務は「親の得意ジャンルを活かす邪魔になる」ということで隔離してください。
逆の場合もしかりです。

そうやって、「私はあなたを大事に思うし、不可欠なのです」ということで、相手はきっとこう思います。
「ここなら、自分の場所があるな」と。
そうすれば無理してそこを守ろうという労力を使うことが亡くなります。
結果として、双方が譲り合うことができるようになります。

親子の確執問題は日常的に起きている

こういう話は初めて耳にされるのではないでしょうか。
それは恐らく、そういう話を人にしないから、情報も集まらないからです。
そりゃあ、家の問題を外に出したくないとか、
経営におけるネガティブな話題を人に話したくないとか、
親や子供への配慮とか、
色々理由があって、こういう話は人前ではしないものです。

しかし、そういう人が集まると、どこもかしこも、程度の差こそあれ似たような経験をしているものです。
そういった人と経験を分かち合い、前向きな行動を行う勇気を得ることも、実は結構重要なことだと思っています。

そういった人たちのために、セミナーをやったりコミュニティを運営したりしています。
良ければ、お気軽にお問い合わせください。

Steve RaubenstineによるPixabayからの画像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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