臭いものにふたをしても上手く行かない理由

一時期、”ポジティブ・シンキング”なるものが流行ったことがありました。
ものごとのマイナス面を見ることなく、プラスの気持ちをもって生きていけばすべて上手く行く、という感じですね。
さて、私の知る中にも、それを実践されていた方がいらっしゃいました。
しかし彼は、会社を潰し、今では行方知れず。
果たして何が問題だったのでしょうか。

 

こんにちは。
中小企業二代目サポーター田村薫です。

冒頭に登場したポジティブ・シンキングにハマった知人、はた目に見てどこか不自然でした。
何かを払拭するかのように、とにかくポジティブな言葉を発するよう自分をコントロールしているのですが、その言葉はどこか上滑り。
彼は、何かを夢見て突き進んでいるのですが、話をしていて何かが欠けているようにも感じられます。

当時の私は、その違和感がどこから来るのか、今一つ理解できずにいました。
しかし、ある時、その事を理解する出来事に出くわします。

 

現在、私たちの会社は毎朝朝礼で”グッド&ニュー”という軽いワークを行っています。
これは、24時間以内に経験した良かったこと、新しい経験を1分程度で発表するという簡単なワークです。
どんな効果があるかというと、メンバー一人一人が、物事の「良い側面」を見る習慣づけをするというものです。
その結果、社員は前向きな姿勢をもち、チームとしての能力が向上するという触れ込みです。

はじめたのはもう10年以上前です。
軽い気持ちで始めたこのワークですが、はじめて数か月のうちに、信じられないことが起こり始めました。
今まで覆い隠されてきた会社への不満が一気に噴出し始めたのです。

 

本来、前向きになるはずのワークが、なぜ不満を噴出させたのか。
私なりに考えてみると、どうやら、臭いものにふたをして、耳障りの良い言葉を上から重ねたところで、物事は必ずしもいい方向には向かわないという事です。
どうやら、このグッド&ニューも、本来はそれを始める前に、心の奥底にためたマイナス感情を吐き出すステップが必要なようでした。

 

胸の底に沈めたはずのマイナス感情。
これは、上からどんなにポジティブな言葉を上塗りしても、いつか爆発してしまうようです。
逆に、覆い隠し、見て見ぬふりをすればするほど、熱したマグマのように沸々と湧き上がる感情は常にその人の意識の片隅に見え隠れするようにも思えます。
そして臨界点を超えると、そのマグマは爆発するのです。
今となっては確かめるすべもありませんが、冒頭の知人は、自分の心の奥底のマイナス感情への対処はしていなかったように思います。
心の奥底にあるマイナス感情と、口から出てくるポジティブな言葉のアンバランスが、私には彼の違和感として感じられたのではないかと今では思っています。

 

ところで、この話を親子の事業承継に当てはめてみると、わかることがあります。
親と子の関係において、できる事ならさわりたくない感情があります。
いわゆる親子の確執といわれるものです。
多くの場合、無用の衝突を避けようと、この感情を押し殺して、社内に同居しているわけです。
出来うるならば、嫌な思いをすることなく、スムーズに事業を継承したいと考えるが故に、この感情にふたをするために莫大なエネルギーを使われている事が少なからずあるのではないでしょうか。

その時は、それでも何とかやっていけるのかもしれませんが、その感情は何かのきっかけで一気に噴き出します。

本来であれば、そういった感情をためる前に、お互い思いを言葉にして吐き出すことが必要なのでしょう。
ただ、現実としては、そういう話をし始めると、感情的になりがちです。
そうなると更なるマイナス感情をためてしまいそうです。

そこで考えたいのが、「期待しないこと」です。
先代はこうあるべきだ、私が正しく先代が間違っているのだ。
不満の多くは、こういった思考からもたらされているのではないでしょうか。
事実として、どちらが正しいとか、どちらが間違っているとかはこの際おいておくのです。
そのうえで、相手が自分の思うように動いてくれないことが前提である、と考えてみてください。

そもそも不満というのは、自分がもっている期待値と、実際の現実とのギャップからもたらされるものです。
手っ取り早く、期待値を下げてしまえば、思い通りに事が動かなくてもイライラすることは少なくなります。
なにしろ、「上手く行かないのが当たり前」の状態で、「上手く行ったらラッキー」なわけですから。

 

この考え方は、先代と後継者の間だけでなく、経営者と社員という関係でも使えます。
「自分の考えるように社員が動いてくれない、ウキーっ!」
となっている経営者は少なからずいらっしゃいますが、そもそもそういうものだという前提で物事を組み立てると、結構うまくいくものです。
たとえば、経営品質賞を二度受賞した株式会社武蔵野の小山昇氏は、「社員はミスを隠すもの」という前提をベースとして社内の仕組を作られているようです。
その仕組みは、ミスを報告することで「課題発見への貢献」とし、社内のヒーローとして扱い、給与査定においても重視しているという事です。

恐らく後継者であるあなたは、先代がどう動くかは大方予想がつくのではないでしょうか。
であれば、その動きをある程度コントロールする所までは、あと一歩のところまで来ているのではないかと思うのです。

マイナス感情をためない工夫と同時に、過去のマイナス感情を放出する場として、4月ごろには後継者が集まることのできる機会を再び作りたいと目論んでおります(^^;

 

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