親子で経営していると、かなりの確率で親子の確執は起こります。
それが表面化している場合もあれば、後継者側で親に意見したり反抗したりすることを一生懸命押さえていたり、親の言いなりになっていることもあるでしょう。
逆に、親は親で言いたいことも口をつぐんでいるかもしれないし、厳しくいってしまったことに後悔していることもあるかもしれません。
はじめはそういった行き違いは、「考え方の違い」「経営方針の違い」と思いがちなのですが本当のところ、それは表面的な問題であり、本質的なところでは別の問題があると私は感じています。
そういった葛藤を乗り越えるのはある意味人生の中でいくつかある、卒業試験の一つではないか、と私は最近考えています。
この大きな卒業試験をクリアするには、どんな学びが必要なのでしょうか。
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Contents
親子の確執にある親の立場と子の立場
事業承継であらわになる親子関係の変化
中小企業の事業承継では、子が家業を継ぐというスタイルが比較的古くからよくあるパターンでした。最近は若干減ってきているとはいえ、未だ王道と言えるパターンでしょう。
ただ、会社の中で親子が一緒にいると、急速に親子は関係を変化させていきます。今までは、絶対的に上の立場であった親と、絶対的に従う立場であった子供が同じフィールドに立ちます。この時の、後継者である子のゴールは親の上にたつこと。つまり立場の逆転です。しかし、親は親で今までの立場を素直に明け渡すかと言えば、それはそれで拒絶反応があるものです。頭では、後進に道を譲るべきと思っていても、子どもの年齢と同じ期間自分が上だったわけですから、染みついた「上司グセ」はかなり意識しないと変わることはできません。すると本能的に、自分の立場を守ろうと、後継者に強く当たるという現象がよく見られます。
さて、子どもが小さなころは、親子は上下関係。実は案外、親は子の、子は親の本質的な性格を知らないことが多い。実際に、親の会社に入り、親と一緒に働くようになって、「うちのオヤジはこんな人だったのか」なんて感じる後継者はけっこう多いようです。子どもに見せる顔と、社会で見せる顔は、違うのです。
今まで知らなかった相互の人間性を知り、さらに立場の逆転という大きな人間関係の変化を起こす。こういった中で、本能的に自分のアイデンテティを守りたい親と、自分の本質を見極めたい子で衝突が起こるのは自然な流れなのかもしれません。
一般的にとりがちな親子の確執の解消方法
ではこの親子の確執。果たして、どのように解決しているのでしょうか。
私の知る限り最も多いのは、「親子関係に目をつぶる」というパターンです。具体的に言うと、後継者が会社を去ったり、親である先代を会社から追い出すというパターン。あるいは、親子で気が合わない、同じ方向に進めないと思いながら、その気持ちを隠して表面的に上司部下としてしれーっと会社の中で共存するというパターン。
つまり、本質的な人間関係に向き合うことをあきらめて、とりあえず自分にとっての障害を取り除くという方法で親子の確執を乗り越えるのではなく、避ける方法をとりがちです。
特に会社の事業承継においては、事業承継という以上は会社の存続・発展という目的がありますから、その目的を優先して親子関係については目をつぶるという形に落ち着くのが一般的だと思います。
私はこれが悪いこととは思いません。当事者同士がそれでいいなら、それもアリでしょう。
しかし一方で、親子の関係をしっかりと作っていくことは、人が生きていく中でそこそこ大事なことでもあるような気もします。会社は発展しましたが、親から勘当されましたとかってなんだか微妙な感じもあります。親に対して、あるいは子に対して、プンプン怒っているときは、相手を指際してざまーみろ、とか思うのかもしれません。けど、その怒りが収まると、やっぱりどことなく罪悪感が襲ってくるんじゃないかと思います。こういう人は、その痛みを感じたくないがゆえに、いつも怒り続けていたりすることもあります。
そして、起こり続けている人生、果たして幸せなんでしょうか。
私は人生の最大の目的は、幸せを感じながら生きることだと思っています。その幸せを感じることのない物質的な成功は、常に欠乏感に追いかけられるしんどい人生な気がするのですがいかがでしょうか。
ムカつく親は鏡に映った自分
「経営方針の違い」といった現実的な問題は言い訳
事業承継の現場において、親子の確執は「経営方針の違い」から始まると言われています。しかし私はそうは考えていません。それは後付けの言い訳です。はじめに、「認めてほしいのに認められない自分」という感情があります。だから、認められるため新しい方針を打ち出し、会社を変化させようとするのが後継者の行動パターンです。もちろん、新しい機軸を出すことは必要でもありますし、大事なことです。けどそれは言い訳。
新しい経営方針を受入れてほしいなら、まずは受け入れてもらえるような関係づくりが大事なのではないでしょうか。人間関係が壊れている相手に、自分の夢を語ったところで応援してくれる人などありません。だから案外、後継者に大事なのは親との人間関係をしっかりと構築することなのかもしれません。社会の中でもまれる親は、たいていの場合、言葉は悪いですが虚勢を張っています。しんどいのに、周囲にいい顔をしようとします。リラックスとは程遠い戦闘態勢を、外に対して張っています。うちにいるときとは違い、外に出れば後継者である子どもも、親にしてみれば虚勢を張る対象になります。だから、小さなころから知っている親とは少し違う顔をしています。その違った顔も含めて親を受け入れることから始める必要があるのではないかと思います。
親子の確執を解き、自分の思いどおりの経営を始めたいならまずは、「後継者にとっていろいろと面倒なことを言ったりやったりしてくるであろう親である先代を、嫌な部分も含めて受け入れる」ということをすればほとんどストレスなく会社での仕事ができるようになるはずです。
親の一番嫌いな部分を自分でもやっていた経験
家業を営む親はたいていガンコです。私たちのアドバイスを聞く姿勢はいっさいないし、言いだしたら聞かない。朝令暮改で言うこともころころ変わる。勝手に考えを変えたくせに、そこについていけないと私たちがイラつかれる。なんとワガママなんでしょう。私たちはムカついて話すわけです。
「ったくウチの親と来たら」と。
けどそんなことを話したのち、ある方に言われました。
「田村さんはけっこうガンコだからねぇ」
あれ?自分、親とおんなじじゃん、と。
考えてみれば、親との確執が起こる過程では、お互いが一歩も引かないという前提があります。
つまり、私が親を「ガンコ」と評する行動に対して、私も親からみると、一歩も引かないガンコな姿勢で受けていたわけです。
心理学ではよく、嫌いな相手や、人の気になる行動があるとき、それは何かしら自分の心の中の葛藤を表していると言われます。
きっと私も、ガンコな自分の生きにくさを無意識に感じていて、父のガンコさのなかに自分の嫌な部分を見ていたのかもしれません。
私はガンコな父が嫌いなのではなく、私のガンコな部分が大嫌いで、それを父に投影していたのです。
大事なことなので、もう一度言います。
私もあなたも、他人の中に見ている何か嫌なふるまいや性格は、自分が持っているものであり、嫌いな自分の一部分なのです。
親と向き合うことは自分と向き合うこと
これは私に実体験として感じたことなのですが、親子の確執をおこすということは、自分との確執をおこしているということ。
それを色濃く映すのが親。
親子で経営するというのは、自分の嫌な部分を四六時中目にして、そこから目をそらすことができないということです。
これはネガティブに考えるなら、とっても苦しいことです。
しかし、考え方を一つ変えると、人として一回りも二回りも大きく成長できるチャンスです。
大事なのは、「ああ、自分にはガンコさがあるんだな」「ああ、自分には自分本位な部分があるんだな」といったことに、まずは気づくということ。
そのうえで、ガンコな自分、自分本位な自分を、受け入れることができればOk。
そうすると、ガンコで自分本位な親も受け入れられます。その時に目にする親の姿は、今まで見ていた親とは全く違った「素」の親の姿じゃないかと思います。
子どもに対しては見せなかった弱さを持っているかもしれませんし、悩みや葛藤に苦しんでいるかもしれません。何かに負われているような焦燥感を持っているかもしれません。
親も絶対的な存在ではなく、いろんなことに悩み苦しみ、そこから抜け出そうともがく一人の人間なんだな、と思ったとき、親子の確執というのは消えてしまうのではないかと思います。
親子の確執解消は人生の卒業試験
親のふるまいが気にならなくなった時
色んな後継者の方から相談を受けた際、いきなりそういう話はできませんが、最後はこんな話に持って生きたいと常に思っています。
それは、親のふるまいで気になる部分は、親の問題ではなく後継者自身の問題である、ということです。
そしてその気になるふるまいは、たいてい、自分が自分を好きになれない部分を映す鏡である、という話を先にしました。
ということは、親が何をやっても気にならなくなれば、自分の事をしっかり受け入れられているということになります。
そもそも人は自分の事をあまりよくは思っていないことの方が多いようです。最近はやりの「自己肯定感が低い」というのはまさにそんな状況を示していると思います。
自己肯定感をあげる方法はいろいろあると思います。今の自分にOKを出すとか、鏡の自分に笑いかけ、ほめてあげるとか。
そういう方法もきっと効果はあるのでしょうが、ピンポイントで狙えるのがまさに「嫌いな人を嫌いでなくなる」とういう方法です。
親のあるふるまいにイラっと来た。
イラっと来るということは、自分も同じことをする傾向のある人で、自分で自分の事を否定的に見ている部分だから気になります。
これが、まずは自己診断。
で、その部分について、「ああ、自分ってガンコなところあるよなぁ」とフラットな感情で認めてあげます。
反省する必要もないし、修正する必要もありません。
自分はガンコ、以上!です。
これがありのままの自分を認めるということで、自己肯定感につながります。
「それじゃあガンコなところが治らないじゃないか」
と思われるかもしれませんが、ガンコが悪いというのがそもそも思い込みです。
ガンコでいいじゃないですか。
そうやって自分の頑固さを受け入れると、親の頑固さも受け入れられます。
こうやって一つ一つクリアしていくことで、次第に親子の確執は消えていきます。
人生のゴールはどこを目指しますか?
さて、ここまでのお話を読まれた方、長い文章をお読みいただきありがとうございます。
ここで一つの方向性を考えてみたいと思います。
会社の経営やらを優先して、今すぐ先代を追い出したい、あるいは自分が会社を辞めたいということを実行するというパターン。
これをやらかすと、自己肯定感は低いままです。
自分の鏡である親との関係と正対しないからです。
とはいえ、自己肯定感の高め方なんて親相手じゃなくても配偶者や子供との関係でいくらでもありますから、きっと別のどこかで問題を起こして向き合わざるを得なくなるでしょう。
それを選択するならそれもアリです。
逆に、ここでちゃんと親と向き合って、その確執を解いていくという選択がもう一つのパターン。
まあまあ大変だと思いますが、今目の前にそういう問題が起こってるということは、取り組むべきタイミングが来てるんじゃないかと思います。
ならばそこに向き合って、いい感じに慣れたらいいですね。
私の場合、親ともめたり、変にこじらせていた時期もありますが、最近はそこそこ(完ぺきとは言いませんが)穏やかな、そこそこリスペクトしている関係を持てていると思っています。
随分かかりました。
なにしろ、ずっと「親が悪い」と思い込んでましたから。しかし、上に説明したメカニズムがわかると、あとはけっこう簡単でした。
ぜひ、お試しください。
そういった、親子の確執問題にフォーカスしたものではありませんが、こう言ったメンタルに効くセミナー、今度やります。
よかったら見てみてください。
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