創業者

子息・子女を後継者に勧める5つの理由

事業承継において、創業社長の頭を悩ますのが、だれを後継者とするか?という事でしょう。
状況によっては、厳しい決断が必要となる事もあろうかと思います。
また、事業規模によって選択肢は様々です。
状況によっても検討すべき項目は多岐にわたるでしょう。

しかし、あえて申し上げますと、従業員数30名程度までの企業であれば、子息・子女を後継者にすることをお勧めします。
ここでは、その理由についてご案内したいと思います。


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理由その1 YESマンが会社を衰退させる

別の記事「なぜ?を知れば対処法がわかる~子息が家業を継がない訳~にも書きましたが、今はまさに時代の変わり目です。
かつて、さしたる差別化ができていなかったとしても、前向きに努力をすれば企業は成長できました。
残念ながら、今は多くの業界で市場は縮小傾向です。
となると、企業は大幅なビジネスモデルの転換を迫られている、という事になります。
今までの延長線上では、企業の発展はなかなか難しい。

今までの改善では追い付かない動きが、社会では起こっています。

 

さて、その道一筋40年という人がいたとします。
この方は、職人気質で、自分の得意分野では他の追随を許さぬ技術を持っているとしましょう。
この方が、「世の中が変わったから、経営スタイルを変えなくてはならない」という気付きを得た時、どのような変化ができるでしょうか?
一般的には、これまでの「こだわり」が邪魔をして、なかなか新しい発想を持つことができないことが多いと思います。

 

そんな時に、社内に、創業社長の抵抗勢力が必要となります。
創業社長の反対意見を押し切って、物事を前に進める推進力が必要なのです。

こういった状況の中で、創業社長に対して正面切って意見を言える社員さんがいれば、その方を後継者として抜擢するのも良いでしょう。
しかし、そのような方の多くは、創業当初からともに会社を作ってきた番頭さんである事が多いのではないでしょうか。
つまり、年齢的に、社長と近い年齢である事が多いのです。

このようなことを考えると、健全な「けんか」ができる子息・子女というのは、後継者として最適な存在と考えられはしないでしょうか?

 

理由その2 資産を誰に?

中小企業の場合、オーナーと経営者が一体になっていることが多いでしょう。
すると、創業社長は、自社株であったり、事業用の不動産であったり、事業に関する多くのものを所有していることが多いのではないでしょうか。
さらには、個人保証の借り入れなどもあるでしょう。

これを、一般社員に譲り渡すとすれば、かなり長期間にわたる計画が必要となってきます。
この状態で社員を後継者とするときに、社員は、数々の保証の名義を変更する書類に実印を押さなくてはなりません。
これは、決して簡単な作業ではありません。

会社が上向きの時はまだいいでしょう。
しかし、売り上げが減少しているタイミングで、全てを背負い込む社員がいるかどうかは難しい問題です。

 

理由その3 コアな価値観の継承

時代の変化にあって、会社の変革が必要だというお話をしました。
しかし、一方で、継承すべき価値観もまた、会社に内在していると考えられます。
それは、創業にあたっての創業者の想いのようなものと言えるかもしれません。

 

例えば、弊社は保険代理店です。
楽器メーカーの総務係長だった父は、保険販売員として独立を果たしました。
父は、保険が売りたくて売りたくて仕方がなかったのでしょうか?

いえ、そうではありません。
本人自身も忘れていたことがあります。

父に、「なぜこの仕事を選んだのか?」と聞いても、

●生活のために何でもできるものをやるしかなかった

●子供がいる中で、努力次第で収入をあげられる仕事である必要があった

●一国一城の主となりたかった

といった自己実現的回答しか得られませんでした。

 

この世代の人は、こういった受けごたえが多いと思います。
ただ、私の方で、過去の生い立ちや、サラリーマン時代の話を総合的に考えることで「総務の一部代行サービス」が父の商品だったように思います。

 

具体的にお話しますと、総務係長時代、会社の車両管理の仕事をしていました。
当時の保険会社は、自動車保険の示談代行などは行わなかった時代です。
総務という、種々雑多な業務の中で、突然起こる自動車事故への対応というのは相当の負担だったようです。
しかも、保険会社に、保険内容の一覧を依頼しても思うように返事がない。
こういった状況を一部代行することで、お客様に喜んでいただけるのでは?というのが、どうやら創業当初のコアな価値観だったように思えます。

本人は、残念ながら日々の数字に追われる中で、次第にそういったことを忘れていたようです。

こういったことをよみがえらせる過程というのは、子息・子女をおいて、踏めないことが多いのではないでしょうか。

 

理由その4 自覚と覚悟

いまや、子息子女による事業承継は、割合としては減ってきているようです。
とはいえ、子息・子女が親の会社に入社するという事は、自身の感覚としても、周囲の目としても
「当然、将来の後継者候補である」
という見方をされるでしょう。

つまり、新入社員の状態で、すでにその会社の経営者となることを意識せざるを得ないのです。

これは、かなり大きなアドバンテージです。

会社を見る目は、個人的な問題よりむしろ、会社全体の最適化を意識しています。
確かに能力の問題はあるのかもしれませんが、それを補って余りあるもの、それが自覚と覚悟です。

正に退路を断たれた状態で、入社する社員がどこにいるでしょうか。

「いやいや、本当に嫌なら辞めることもできる」
とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。

 

しかし、それは、普通のサラリーマンが会社を辞める事とは桁違いのハードルの高さです。
なにしろ、公の関係だけではなく、プライベートでも切れない関係がそこにあります。
親戚縁者の目もあります。
そもそも、やめようものなら親子の縁さえも切れるリスクが後継者の方にはのしかかっています。

それだけの覚悟を持った社員は、なかなかいないのではないでしょうか。

理由その5  責任

世界最古の企業と言われる金剛組は、創業から1400年もの歴史を刻んでいます。
この企業のある代の方は、祖先の墓の前で自ら命を絶ったこともあるそうです。
なぜならば、それだけの重みある歴史を、自分の代で途絶えさせるかもしれない危機に、会社をさらしてしまったからです。
さすがにそこまでの重みある責任を負うことはきつい話ではあります。
しかし、そこまでいかなくとも、それなりの責任感を持つのは二代目、三代目という状況においてはやはり世襲後継者だからこそと言えるのではないでしょうか。

件の金剛組は、血縁における世襲を認めているわけではありませんが、歴史を積み重ねる中において子息・子女はその始まりには非常に大きな役割を果たすはずです。
逃げ道のない世襲後継者だからこそ、責任を持つことができると考える事もできそうです。

 

まとめ


親族間継承における後継者は、予想を超える重荷を肩に背負っています。
それだけに、後継者にとっても、創業者にとっても、大きな負担になることは間違いありません。
その覚悟は必要です。

 

さらに言わせていただくと、30年、40年前の事業承継とは性質を異にしています。
当時は、過去の延長線上で事業を継続すればよかったのです。
しかし、今はそういうわけにはいかないことが多いように思います。

後継者は、創業者のコアな価値観を保持しつつ、会社を変革させていかなければならないのです。
その障害は決して少なくありません。
そのもっとも大きな壁が、創業者との考え方の違いでしょう。

ここについては、機を改めて詳述しますが、まさに第二創業といえるタイミングに接しているのではないかと思います。

だから、後継者は悩みます。
しかし、それでいいのです。悩みつつも、前に向かって踏み出す一歩をお手伝いできれば幸いです。

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  1. 2014年 4月 22日