後継者

コンプライアンス意識の低い先代とコンプライアンスに縛られる後継者

「あんたのいう事は、先代と違うじゃないか!」

私が仕事を始めたころ、お客さんによく言われた言葉です。
といっても、私は間違った事を言っているわけではありません。
ルールとして正しい事を言っています。

それでもお客さんは、私を責めるのです。
そのトラウマが、経営の独自性を失うきっかけになるかもしれません。


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親の会社を継ぐ技術

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世の中、ずいぶん変わってしまいました。
企業が隠しごとをできなくなっちゃったんですね。

しかし、一昔前は、個人情報保護法もなければ、
労働訴訟なんてあんまり耳にしたこともありません。

 

そんな時代に生きてきた、先代は、お客さんに忠実でした。
「こんなことできないかなぁ」
なんていお客さんにわれると、
「はいはい。やりますよー。」
なんて安請け合いします。

例えば、厳しい納期の対応であっても、社長が安請け合いするもんだから、
社員は必死に残業して対応します。

 

けど、今そんなことやったら、ブラック企業だなんて
掲示板に書き込まれますよね。

 

もちろん、先代に悪気があったわけではありません。
お客さんの個別の要望に応えることで、商売が成り立っていたんですから。
そこが、中小企業の良い部分でもあったわけです。

 

しかし、今や、そういうわけにはいきません。
先代が、コピー用紙がもったいないからと顧客情報の入ったミスプリントの裏をメモ用紙として使おうとしたら、
それを注意するのは、後継者しかいません。
あったんじゃないですか?そういうこと(笑)

 

お客さんにとっては過去やってもらったことは、今度はそれが標準になります。
「あんたのおやっさんは、この納期でやってくれた!」
と、後継者はののしられます。
しかし、ぐっとこらえて労働環境やコストへの配慮から、
「なんとか○日の納期でお願いします。」
と頭を下げるのも後継者です。

 

私自身は、保険の仕事でしたから、おおらかな時代の契約内容をチェックし、
正しい内容に訂正する仕事をずいぶんやりました。
ある商店街の保険の掛け金は、正しく計算すると今までの5倍になってしまうという事で、
商店街組合の会員さんお一人お一人に頭を下げに行ったこともありました。

 

そんな仕事へのトラウマという意味もあるし、
取引業者の多くが厳しい管理を求めることもあるので、
後継者は、ルールや規則に対して敏感になります。

 

そして、そんな嫌な仕事は二度としたくない、という思いから大企業の管理を学ぼうとします。
それは決して悪い事ではありません。
しかし、大企業は、ブランドを守り、多数の社員の統制をとるために、かなり厳しいルールの徹底を行います。
そういった内部管理部門を作り、コストをかけて人を配置します。

中小企業に、それができるか?といえば結構厳しい。
なにより、中小企業の良さの一つとして小回りが利く点があげられるはずなのに、
利点を捨て去ってしまっていいのでしょうか。

 

先代は、なんでも「はい、やりますよ。」という。
後継者は、「ルールなのでできません。」という。
お客さんにしてみれば、「じゃあ、あんたのところで頼む意味はない。」という。

ここのバランス、結構難しいところですよね。
もちろん、法令を守ることはとても大事なことです。
怠れば、会社を失うリスクさえはらんでいます。

しかし、法令に隷属するのではなく、
お客さんの要望と、法令の縛りの間の距離をどう近づけていくかを考える事こそが、
後継者の腕の見せどころじゃないかな、と私は思っています。

盲目的に、「大企業はこうやってるからウチもそうしよう。」ではなく、
一度立ち止まって、「法令を満たしつつ、お客さんの要望を満たせるとすれば、どんな方法があるだろうか?」
という検討をぜひしていただきたいと思います。

 

きっと、ほかのライバル会社も、多くは大企業に右にならえです。
逆に、大企業的マネジメントを目指していることを自慢げに話す経営者もいるでしょう。
そんなライバル会社と差をつけるには、
自分なりのスタンスを取っていくことにあるのではないでしょうか。

 

差別化とは「違いを作る事。」です。
違いは、他人の後をついていっては作る事は出来ない。
とっても重要なことだと私は考えています。


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