後継者

親子経営がうまくいく方法

自分が考える道の先に必ずいる親。
親子経営における後継者・跡継ぎというのは、何をやっても親に否定されるとか、邪魔をされるとか、そんな経験をしているのかもしれません。そこに反抗をして、自分の想いを通そうとすればケンカになってしまう。
何か糸口はないのか、とあれこれ考えるけどやっぱりその先に立ちはだかるのは親。
個々から抜け出す道はないものか、と気をもんでおられる後継者・跡継ぎは多いのではないでしょうか。

時に、自分が会社を出るとか、親を会社から追い出すとか、そんな思いが頭をよぎることもありますが、できる事なら穏便に乗り越えたい。そんな後継者・跡継ぎにとって親子経営をうまくやっていく方法というのはないものでしょうか。

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理想的な親子での事業承継ってどんなものだろう?

andreas160578によるPixabayからの画像

ゴッド・ファーザーに学ぶ組織での親子

いきなりゴッド・ファーザーってなんやねん、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、私としてはすごく印象的なシーンが映画「ゴッド・ファーザー」でありましたので少しご紹介させていただきます。そのシーンは、マフィアのドンが年齢や体調のこともあり、引退を決意します。その時に、非常に跳ね回っていた息子(確か末っ子だったと思います)にファミリーの未来を託します。ドンは自分が引退したと同時に、もはや一切の組織運営から手を引きます。ただ、今までの義理人情のあったドンとは違い、冷酷な息子。組織の人間からドンに対して苦情が入ります。しかしドンはこういいます。「ワシは後継者である息子にすべてを託した。だからわしは、息子の意見に賛成だ」つまり、全面的に自分が選んだ後継者を支持する、と言い切るわけです。

その後も多くの人がドンに相談に訪れますが、その相談にはすべて「もう自分は引退したから息子に相談せよ」ということではねのけます。

これを見て、悩み多き現代の後継者・跡継ぎの方は、スバラシイ・・・と拍手するんじゃないでしょうか。きっと私達、後継者・跡継ぎはそんな対応を求めているのではないでしょうか。

明確なエンパワーメント

もし先ほどのゴッド・ファーザーの事業承継が、これをお読みの後継者・跡継ぎにとっての理想であるとすると、求めているのはエンパワーメント。つまり、先代は自分での発言権や決定権のすべてから手を引き、それを「自分ではなく後継者へ」という風にガイドしてほしい、ということになるかと思います。

多くの後継者・跡継ぎが納得のいかないことの多くは、跡継ぎとしての責任ばかり負わされて、権限を持たされていないということではないかと思うのです。さらにいうなら、代を譲ってからも上から目線を変えない親への感情的な反発もあるかもしれません。立場を譲るなら権限も譲ってくれよ。これが後継者・跡継ぎの心の叫びかもしれません。

従業員はリーダーの交代を受け入れられるのか?

先代のガイドがあったとしても・・・

たとえば、社員が先代である親に何か会社のことで相談に訪れました。先代は、「もう自分には権限も発言権もないから息子に相談するように」と言ったとします。その時に、果たしてその社員は後継者・跡継ぎに相談しに来るでしょうか。また、相談しに来たとしても、それをまともに受け入れるでしょうか。よく言われることですが、「何を言うかより、誰が言うか」という部分はけっこう影響があるんじゃないかと思います。これを心理学的に言うと「ハロー効果」といいます。ハローというのは「後光」のことです。

親である先代は、長年の経営者としての実績があり、それが人間的に深いものかどうかはともかくとして、何かしらの信頼関係が社員と結ばれている可能性があります。この信頼関係という言葉は純粋に人間として信頼できるという意味かもしれませんし、にんげんてきには信頼できないけど仕事をする上では確実な判断をしてきたという意味での信頼かもしれません。その性質は色々でしょうが、少なくとも、後継者・跡継ぎの方がもたない社員との見えない関係があるはずです。すると、その人が発する言葉には言葉の内容以上の何かが加わります。だから、信頼関係のある人が言う稚拙な発言も、信頼関係がない正しく見える発言より信頼される可能性が高く感じられることがよくあります。

道徳の教科書から引っ張ってきた言葉をつなぎ合わせただけのクサい演説も、何十年とリーダーとして会社を引っ張ってきた人が語ればそれは強い力を持ちます。それがハロー効果。

だから、親が口をつぐんだとしても、親が自分ではなく後継者に聞けと言ったとしても、後継者・跡継ぎが社員やその他のステークホルダーとの信頼関係を築いていなければ、まったく機能しなくなる可能性が高いと思われます。

逆に皆さん自身のことを考えてみてください。例えばですが、先代が急に「リリーフとして外部から社長を招聘した」なんて言う人を連れてきたとして、すぐにその人の配下で頑張ろうと思えるでしょうか。たぶんいろんな形で抵抗を示すのではないでしょうか。

後継者・跡継ぎは強制し始める

親が社長の座を退いても、延々と口も出しても出すというのは良くある話です。先の例のゴッド・ファーザーのように何か相談されたら「息子に聞け」なんて言う対応をしてくれるというかと言えば、それは難しいでしょう。なぜなら、そうやって自分が頼られるのがうれしいからです。代を譲ってなお、自分は社員に慕われ、社外の人たちにも大事にされている、という環境がとても居心地がいいのです。しかも、責任は子どもである後継者・跡継ぎに任せたので、これほどの項環境はないでしょう。いわば、孫は責任を持たなくていいから猫かわいがりするのとおんなじなのかもしれませんね。

その状況、逆に後継者・跡継ぎにしてみれば面白くない話です。だから、何とか自分の理想の形にしようと力みます。その結果何が起こるかというと、社内外に対して色んなことを強制し始めるということです。ゴッド・ファーザーの事例でもそれに近いことがおこりました。ドンは自分への相談を後継者である息子に流します。しかし、構成員は後継者に不満を持っています。後継者はそんな状況にイラつき、どんどん強硬策を出し始めます。たとえば、自分の能力を誇示するために、他の団体に対して抗争を仕掛けるような方向へ舵を切ります。親であるドンは平和主義だったけど、俺は違う、という具合に自分を大きく見せようと必死になります。そして悲しいことに、必死になればなるほど構成員の心は離れていきます。

私自身これに近いことを経験しました。社内外に対して自分の存在をアピールすべく、親である先代とのコミュニケーションを禁止するくらいの勢いで物を言いました。会議に先代は出させず、社外のイベントにも出させない。そして、引退したくせにまた会議にも出させてもらえていないのに「わが社の経営戦略は・・・」なんて話を外でするな、と随分詰め寄ったこともあったような気もします。

しかし、こういうことをやったところで、あんまりいいことはなかったです。強制すればするほど、反発心を育てます。社員とも完全に溝ができてしまい、もう負のループ。すべてがうまくいかなくなっていたっことを記憶しています。

「受け入れる」ことから始める

他人への要求での変化を求めない

さて、タイトルの「親子経営がうまくいく方法」に反して、親子経営がうまくいかなくなるストーリーをここまでなぞってきました。このまま終わるわけにもいかないので、うまくいく方法を考えてみましょう。ざっとこれまでのストーリーを俯瞰して、どんな気づきがあるか30秒で結構なので少し考えてみてください。

私なりの考えを言いますと、こういったストーリーを多くの後継者・跡継ぎがなぞっているとすると、「他人にお膳立てを求めすぎ」という結論が見えてこないでしょうか。そもそも、多くの人が先代を頼る中、先代が「自分じゃなく息子へ」というのは引退した人間としては望ましい対応かもしれませんが、それはあくまで先代の取る行動です。仮にこう言った理想的な行動を先代がとったとしても、ゴッド・ファーザーの息子のようにその役割を上手くこなせないこともあるわけです。逆に言うと、リーダーとして周囲に認められれば、自然と相談は後継者・跡継ぎのほうに来るものではないでしょうか。自分が信頼関係を作ることができてないのを、親のせいにしてはいないだろうか。そんな自問自答が必要な気がします。

私たち後継者・跡継ぎはついつい「外の世界を変えることで、現状を変えていこう」としがちです。しかし大事なのは、自分がどう考え、どうふるまうか、だと思うのです。いつまでたっても社員が親に相談に行くならば、後継者・跡継ぎはそんな社員からの信頼が足りないと考えられます。その信頼を得るにはどうすればいいかを考える必要があるのではないでしょうか。

現状を受け入れる

自分がまだまだ頼られていない、ということを含めて私たち後継者・跡継ぎは現状を受け入れる必要があります。これはたとえば、「親は自分に権限を譲ろうとせず、自分がいつまでもスターでいたがっている」というのも一つの現実じゃないでしょうか。これを無理やり変えようと思うと、余計な力がかかるばかりであまりいい結果は期待できないと思います。仮に思うようになったとしても、何かしらの遺恨を残す形になりがちです。彼らの心境は、彼ら自身が考えることです。私たち後継者・跡継ぎは、そういう親がいる、という”環境”を受け入れたうえで未来を考えて行くべきではないかと思うのです。これは例えば、地震や台風、コロナのような突発的な問題が思いがけず起こるのと同じです。あくまで経営環境の一つ。自分の思う通りに動かない人がいる、という現実の一つ。その「環境」であるとか「前提」を変えようとしてやきもきしがちなんですが、そういう状況ということが変えようのない現実と受け入れることができれば幾分楽になるのではないでしょうか。

動かすことができない岩を一生懸命動かそうとしてストレスをためるより、岩を上手く乗り越える、よける、岩がある事を利用する、という考えに転換すると問題が問題でなくなることもあるのではないでしょうか。

誰のための事業承継か?

親子でなければ、「そもそも先代はそういう人」という前提でスタートするはずです。しかし親子であるがゆえに、子どもである後継者・跡継ぎは、「親のためにやってやっている」という感覚が強いのだと思います。そうすると、「親が喜ぶと思って後継者・跡継ぎとして頑張っているのに、なぜ自分に対して協力的ではないのか」という部分で裏切られたかのような感覚に陥ってしまいます。そうすると、もはや前提からして負の部分のスタートになります。こういった親子の愛憎劇は例えば、スターウォーズに代表されるように世間的に広く認知される話です。舞台が宇宙か、会社か、という違いだけで本質はまったく同じです。ですからそんなストーリーと自分を重ね合わせて考えると、比較的客観的に物事を見ることができるかもしれません。

で、このセクションの命題である「誰のための事業承継か?」という問いに対して、皆さんならどうこたえられるでしょうか。やっぱり親のためですか?だとすると、しんどいのは仕方ないかもしれません。何しろ自分を犠牲にして、親に尽くそうというストーリーなのですから。私なら、自分のために、という軸を持ちたいと思っています。ここはそれぞれのお考え次第だと思いますから、お好みでお選びください。ただ、自分の人生の責任は自分でしか取れない、という原則だけはお忘れなきようお気を付けください。

親子経営がうまくいく方法

今回のブログの結論めいたお話をすると、親子で経営をしていてそれがうまくいく方法は、親も子も、独立した人間として自分の意志で行動することである、ということが言えるのではないでしょうか。もちろんそうすれば、その意向がぶつかるかもしれませんが、それを必ずしも一つに統一する必要はないのかもしれません。うちの会社には、こういう考えをしている人もいれば、こういう行動をしている人もいる。そういった多様性を重んじたうえで、最低限の方向感、これだけは絶対譲れないというベクトルだけは共有する。そんな形がベストじゃないかと思うのです。幸いなことに今や多くの企業で、ダイバーシティなどと言われて組織内の多様性の重要性が叫ばれています。

実はこの「多様性を認める」ためには、リーダーはその器を広げる必要があります。自分のやり方以外で、自分の求めている世界を作るという他人を信用しなければ、彼らの多様性を赦すことができないのです。後継者・跡継ぎはそういった「他人の意見や考えを受け入れつつその責任をもつ」という器を持てるよう自身の内的成長に勤める必要があるんじゃないかと思います。まあ、結構大変なんですが、これもやらされて、とか、誰かのために、だとやり切れませんが、自分の成長のためだったら結構やり切れちゃう気がするのですがいかがでしょうか。

自分の人生を生きるという大きな目標をずらすことがなければ、どんな道を通っても最後は行きたい場所に行けると信じてみてもいいのではないでしょうか。

 

  

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