事業承継

後継者が先代をルールで縛ろうとしたら組織崩壊を招いた話

先代の偉大さに気付くと、
後継者はチームプレーを説き始めます。

けどね、今まで独裁支配だった会社ですから、
社員はみんな意見なんて出しません。
じっくり頑張って意見が出始めたころ、
事件が起こるのです。


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親の会社を継ぐ技術

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先代の重責を自分一人で担うのは難しい。
そう考え始めると、社員でのチームプレーを考えます。
そのためには、
独裁的、封建的だった社内を、ボトムアップの組織に変える必要がある、
私はそう考えたのです。

当時、会議というのは名ばかりで、
その場は先代の独演会。
この苦痛にしか思えない変えていこうと、先代の口を無理やり封じました。
頼むから黙っていてくれ、と(笑)

私自身も、出来る限り議長に徹し、
頭出し以外はほとんどしゃべらないように気を付けました。

しかし、会議室は、
「シーン・・・」
です。

一人ひとり指名してみたり、
質問内容を変えてみたり
工夫しますが、
小学校の反省会みたいな言葉しか出てきません。

そんなことを何度か繰り返すと、ポツリ、ポツリ、と
発言し始める社員が出てきました。
紆余曲折あって、業務の効率化のために、
「1年に1度も見返さない書類は法的な保管義務のある書類以外は、すべて処分」
という方針が決まります。

しかし、不幸な出来事は起こるものです。
よりによってそのタイミングで、5年に1度起きるか起きないかの問い合わせがお客さんから入りました。
そこへの回答にはその書類を見れば一瞬で済むのに、
その書類は廃棄した後。

廃棄書類は万一の事を考えてPDF化していたので、サーバー内で探すことはできるのですが、
たまたま先代が、休日出勤していた際の問い合わせだったため、
先代のITスキルではそのPDF書類を探すことができなかったという不幸。

明けて月曜日には、先代は書類がないことを不機嫌そうに漏らします。
事務社員は責任を感じてる様子なので、すかさず間に入ります。
「会長、あの時会議で決めたじゃないですか。」と。

しかし、社員たちは、たまったものではありません。
会議で決め、私の承認を得てやったことで責められる。
ならば、何も変えないのが一番。
意見を言っても無駄。
5年に1度起こるかの事態に備え、
毎日残業しながら、膨大な時間をかけて
私に内緒で書類整理を再開させました。

そしてまた、誰一人、会議で発言する人はいなくなったのです。

ボトムアップ作戦は失敗。

子供のころ、浜辺で一生懸命作った砂山を、
一瞬で崩されたかのような呆然自失感。
また一からやり直しか…。
いや、やり直したって、結局同じことが起こるだろう。
あの人がいる限り。

この時、社内の最大の敵は先代だと私は認識しました。

社内でも、プライベートでも親子関係は悪化。
私はまともに口さえきかなくなりました。
今から考えると、私が経験した親子の確執の発端の一つといえる事件かもしれません。

そして数年後、私はこの時の事務社員から一斉に出された辞表を受け取ることになります。

事務社員のいなくなった会社で呆然とするものの、
少し時間を空けて、何が起こっていたかを考える時間を持ちました。
この時、私は、先代をルールで縛ろうとしていました。
そしてあわよくば会社から追い出そうとしました。
しかし、今までは「俺が法律だ」という感覚で社内を統べていた人を
ルールで縛ろうという発想自体が無理があったのでしょう。

ここで、私は二つの学びを得ました。
創業者をルールで縛ろうとすることは、多くの場合無理があるという事。
それが例え、合理的な考察に基づくものであったとしても、です。
もう一つは、今回の記事では詳細には触れていませんが、
①封建的創業社長→②ボトムアップ組織というのは非常に難しいということ。
ここへの対応は、やはり①と②の間に、社内の影響力を後継者が強く発揮するステージが必要ではないか、
という事。

後継者は、後継者に適したリーダーシップが必要となるのです。

 


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