私自身、親の会社を継ぐという立場において、何が一番きつかったかというと、メンタルの部分。
肉体的な苦労はある程度覚悟してましたが、実際は心の部分がきつかったんです。
まずは、言葉が伝わらないかのような先代である親とのコミュニケーション。
頑張れば頑張るほどついてこない社員。
焦るほどに、空気がどんどん冷たくなる社内。
それでも自分はこれからこの会社を何十年も経営していかねばならない。
そんなプレッシャーの中で、心を病みそうになっていたんです。
私の著書です。
しかし、私たち後継者は、「現実を変えよう」として疲弊していきます。
親の行動や考えを変えようと必死になります。
社員の動きをコントロールしようと一生懸命です。
会社の空気を変えようと、いろんな企業の試みを車内に持ち込もうとしていきます。
けど、やればやるほど反応は冷ややか。
それもそのはずで、人なんてそんなに簡単に変えられるものではありません。
私たち後継者は、変えられないものを変えようと必死になっているのです。
それでも、次々と目の前に起こる自分にとって不都合な出来事。
なかなか放置するわけにもいきません。
だからついつい手を出してしまうから、泥沼になっていきます。
そんな後継者の方にお伝えしたいことがあります。
それは、こういうこと。
自分を困らせるひとって、自分に対しての問いを提供してくれる人。
こういった人がいることで、自分が「正しい」と思っていた思考を揺さぶってくれているんだ、ということを感じてみてほしいと思うのです。
ワガママに見える先代、
自分に与しない社員たち、
その他周囲の多くの「困ったこと」っていうのは、
「自分が正しいと思っていることへの問題提起」
であることが多いのです。
どうしても問題の渦中にいると見えないのですが、そこから何年もたって落ち着いて振り返ると、そんな事がわかってきます。
だから今、つらい状態にいてこれを読んでも、「なにをいってるんだ?」と思われるかもしれません。
しかし、何年か、何十年語ってふりかえると、「ああ、あの困った人がいたから、自分の思考が揺さぶられ、柔軟な考えを手に入れることができたんだな」と思うことがあるんじゃないかと思います。
今目の前に次々と現れるあなたの敵は、恐らく、あなたが成長するための今までとは違った物の見方を提供してくれる登場人物です。
彼らを変えるのではなく、彼らからのシグナルを受け取り、受け入れる方向で見てみると、今まで見ることのなかった世界が見えてくるのではないでしょうか。