外側(行動)は内面(思考や感情)で作られている

なぜあの人は、あんな言い方をするのだろう?
なぜあの人は、そんな行動をとるのだろう?
特に、後継者から見た先代(親)の行動は不可解なものが多いのではないでしょうか。

たとえば、じっくりと方針を話し合い、ついさっき「わかった、お前の言う通りしよう」という結論が出たことがあったとします。
その3分後の、先代(親)の行動はなんと元通り、というか何の変化もありませんでした。
さすがに「なめとんか!」と私は激高しそうになりましたが、どうやらそうでもないようです。

私達は眼に見える行動を変えさせようと気をもみますが、実は行動より内面を変えることを意識する必要があります。

これは、先代である親との関係だけではなく、社員さんのマネジメントにも役立つ話じゃないかと思います。

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「言動」はその人の思考や感情からできている

Mike RenpeningによるPixabayからの画像

行動を強制しても変化は期待できない

あたりまえなんですが、心と身体はつながっています。だから例えば、ちょっと苦手な人と相対すると、無意識につま先が別のほうに向いていたり、親しい人と比べて余計に距離を取ったりする、というのは多くの人が知っていると思います。カフェや町中でカップルを見ていればよくわかるのですが、仲のいい二人は無意識に同じ行動をしていたりします。片方が、顔に手をやれば少しずれて、もう片方が顔に手をやったりします。このように、人の行動のほとんどは無意識に支配されています。

そういったことを知識では知っていても、長い間それがビジネスで活かされることはありませんでした。というより、昭和から平成にかけてのビジネスの世界は、社員というのは機械のパーツとしての前提があったのかもしれません。とにかく行動をどうすれば効率的に律することができるかを考えた結果、マニュアル化、ルール化、厳罰化、人事評価などの方法で人を服従させてきたと言えるかもしれません。

後継者が親の会社を継いだ時、会社を自由自在に操りたいがため、ルールを強化することがよくあります。その矛先は多くの場合、先代である親だったりすることもあるんじゃないでしょうか。自分勝手な動きをする親をルールで縛り、自分の管理監督下に置きたいという思いはある程度リーダーシップを発揮すべきタイミングに来た後継者には、良く芽生える感情です。しかし、一般の社員とは違い、先代である親は社内に怖いものなどありません。だから、一定程度、後継者の立場に配慮して、ルールに従おうという思いはあるのかもしれませんが、無意識におこる行動は抑えきれません。

たとえば、営業部門で、こんな議論があったとしましょう。
時代が変わって、新規開拓が難しくなったし、新入社員に新規開拓の「実績」を評価基準にすると社員をつぶしてしまいかねない。だから、まずは行動量を増やすためにも、実績より行動を重視する風土を作ろう、と考えたとします。こういった後継者からの提案に対し、先代である親は真っ向から反対することもあれば、「たしかにそうだな」と納得することもあるでしょう。仮に後者であったばあい、後継者としては心の中で万歳をしていると思います。やった、自分の意見が認められた、と。しかし、数日もしないうちに後継者は絶望の淵に立たされます。営業会議で、先代である親は行動量を増やして頑張っているにもかかわらず、成果の上がらない新人営業社員に「やる気が足らん!」とか言ってどやしつけているのです。それを見た後継者はきっとこう思うでしょう。裏切られた・・・と。

しかし、先代である親は、別に後継者に意地悪をしたわけでもなく、後継者との合意を破棄したつもりもないのです。ほとんど脊髄反射的に、気が付いたらそういう言葉が口から出ていた、というのが現実です。そして、無意識でやっている行動なので、本人も後継者との約束を反故にしたことにも気付いていないはずです。先代である親は、顔を真っ赤にして怒る後継者の感情がまったく理解できないのです。

朝令暮改な先代である親を動かす原動力

先代である親から見た後継者の怒りが不可解なのと同様、後継者から見た親の動向もなかなかに不可解です。
私の経験を少しお話しします。
私がまだ親の会社に入社して間もないころ、自動車事故にかんするお客様からのお電話に対応していました。私の父が創業した家業は保険屋さんだったので、わりと頻繁に自動車事故の連絡があります。
当時私は、事故がおこった時、お客様から何を聞いて、どうアドバイスすべきかをだれからも教わっていませんから、いつも父がやっている電話でのやり取りに聞き耳を立てていました。そういったことで学んだ方法を自分なりに解釈し、実際のお電話を受けた際に恐る恐る対応に活かしていたわけです。

電話をおいた後、先代である親からはダメ出しが出ます。
事故の現場からのお電話であることも多く、できる限り短い時間でヒアリングを済ませたほうがお客様のためである一方、確認すべきことはけっこうあります。だから、自分なりに第一報では必要最小限の情報を聞き、二回目の打ち合わせで後から確認すれば大丈夫、といった内容を確認するよう気を付けていたつもりです。しかし、親の見解はまったく違うわけです。何が違うかというと、ある時はその時点ですべてのことをヒアリングすべきと叱られるし、違う時は「そんなに長い間お客さんの時間を奪うな」というし・・・。同じような事案に対して、そのように対応を変える具体的理由がまったくわかりませんでした。

私もだんだん慣れていくにしたがって、親の言動に対する不信感を持つようになりました。最終的には、
①親は自分が何をどうやっても必ずダメ出しをするに違いない
②自分にはわからない微妙なニュアンスがあるのかもしれない
③実は自分のほうが親より正しいのかもしれない
という三つの考え方に至りました。

ただ、自分の場合ですがその場でこの三つのうちどれが正解かを導くのは難しかったと思います。
今振り返ってみたときに、今目の前の現場の仕事に対してこの三択のどれを取るべきかはそこそこ大事な問題だと思います。正解はないにせよ、それなりに考えて行く必要はあるでしょう。ただ、親との関係のことを考えるなら実はこの三択のどれかはどうでもいい話で、その奥にあるどんなプログラムが親を突き動かしているかを知ることが重要ではないかと思います。

相手の言動を制御するプログラムを覗いてみる

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

ヒントは「自分の価値を高めたい」という感情

日本全国、多くの経営者を「自己愛性パーソナリティ障害である」という心理学者がいます。そこまで極端な言い方が受け入れられるかは微妙かもしれませんが、こういうと「確かに!」と思われるかもしれません。それは経営者は多くの場合「自分の価値を高めたい」と考えていると思われます。もう少し突っ込んで言うと、「人に認められたい」という思いが強いのです。考えてみてください、経営者(特に創業経営者)は、自慢話が大好きだと思います。また、周囲から評価される「表彰」「症状」とか、大好きじゃないですか?人によっては、自分史を作りたがったりしますし、事務所をリニューアルしたら自慢したがりますし、あいさつなどを頼まれればやたらと長々と教訓めいた話をする。自分のことを話すのが大好きで、ステイタスを求めます。あたかも自分がやっていることが正しいんだということを周囲にアピールしたがったりします。
たぶん皆さんの親である先代に当てはまる特徴がいくつかあるんじゃないかと思います。

実は、経営であったり起業という普通ではなかなかできないことをやって残る原動力は、その「自分の価値を認められたい」という思いだと心理学ではよく言われます。この動力というのが計り知れないパワーを生み出すから、企業や経営なんてことがやってのけられるのです。こういった人は「止まる」ことができません。常に自分の価値を評価されるために、土日も関係なく、朝から晩まで休みなく働きます。むしろ、止まることで「価値がない」と思われる恐怖にさいなまれていることがあるんじゃないかと思います。

仮にそういった状況に当てはまるのが先代であれば、そういったプログラムが脳内にある事をイメージすると、すごく行動がわかりやすくなります。
たとえば、何をやってもダメ出しをされるというのは、可能性として考えられるのは自分がイメージしたやり方と違う行動を後継者がすると、「自分のやり方(自分の価値)を否定された」という回路が起動してすかさず怒り出すのです。こういう条件がそろったこういうシーンは自分ならAというやり方をとる、という先代のやり方から少しずれたら怒り出すわけです。そして先代経営者はそういった「個別対応」が得意だし大好きです。ここのお客様を喜ばすために一生懸命なので、ルール化とかマニュアル化には関心を持たない人が多いのです。その場その場の対応ですから、「朝令暮改」になって当然なのです。けど、行動の源泉の中心は「自分の価値をお客様をはじめとした周囲の人間に理解してほしい」という思いなので、後継者にとってわからないことで親がおこりだしたら、「ああ、きっとこういうことだな」と察しがつくんじゃないかと思います。面白いことに、わけもわからずおこられたらこっちもカチンときますが、こういう仕組みで起こりだしたんだとわかると、妙に余裕を持つことができます。

だから、親である先代との関係で息苦しくなっている人は、いちいち言うことが変わる先代の行動の源泉としてこんなものがあるんじゃないかという視点で見てみて、ああ、そういうことかとわかるだけで、けっこう楽になると思います。

後継者の持ちがちな不安も解消!?

さて、自分なりにやっていたら親から怒鳴られるとか、ダメ出しされる。親を見ていると、共通点の内容な「臨機応変」さに、後継者的にはまったく御先が真っ暗になるわけです。こういう時にこうして、ああいう時にはこうする、といった価値判断がなかなかわからないのです。実は私は、一つの仕事に対して、父である先代がどれくらいのバリエーションがあるかをノートにまとめていた時期がありました(笑)どういうシーンで、どういう顧客を対象にしたときに、どのスキルを使うかという組み合わせを解明したかったのですが、まったくもって不可解。直接親である先代に聞いたりもしましたが、「野性の勘」という言葉で終了です。

こうなると、そういった先代のやっていることはできるようにならなければならないという強迫観念と、けどその仕組みさえ分からないという焦りの中で押しつぶされ、不安しか感じられない時期がありました。けどふたを開ければシンプルなものです。つどつど、「どうすれば、顧客に自分の価値を(そこそこ)さりげなく伝えることができるか」ということを考えていたということです。もう少し突っ込んだ言い方をすれば、顧客を自分に依存させるにはどうすればいいか、ということをつきつめていくと、親である先代の行動パターンが見えるようになってきました。真似はできないけど、仕組みがわかると、安心できるから不思議です。

「行動」からは始まらない

Linus SchützによるPixabayからの画像

人を理解し動かすコツ

ここまで見てきた、わりと濃厚な先代経営者である親の生態、いかがでしょうか?もしここまで読んでくださった方は、「あるある」と首を振ってくださりながら読んでいただけたんじゃないかと思います。ここからは親子関係のみならず、すべての人間関係について考えて行きたいと思います。

親は私達にとっての上司ですが、私たち後継者にはそろそろ部下が出来たりするわけです。そして、部下を動かそうという時、私達は親との理解不能な関係のことはすっかり忘れて、部下の行動を強制しようとするのではないでしょうか。私語は禁止するとかしないとか、遅刻するのはいけないとか、会社の目指す方向はこうだとか、いろんなレイヤーで後継者のイメージを社内に定着すべく努力します。そしてそれはたいてい、「行動の矯正」なんですね。確かに行動というのは、目に見えるし分かりやすいので、入り口としては最適かもしれません。しかし、その人それぞれを動かすエンジンが何かを、その人の中にあるプログラムがどんなものなのかを知らなければ、人を動かすことというのは難しいんじゃないかと思います。

こういった社員さん一人一人を見ていくと、程度の差こそあれ先代がもっていた「自分の価値を認めさせたい」という動力を持っている人もたくさんいると思います。しかし中には少し違った動力を持つ人もいるかもしれません。ただ、その心のなかを知るためにはやっぱり、コミュニケーションが必要となります。それぞれの人たちの持つ価値観がどういったものであるかを知らなければ、たぶん人は動かない。もちろん仕事ですから「報酬との取引」で彼らは動くと思います。ただそれでは、強いチームはなかなか作ることができないことは簡単に想像できます。

仕事に人を当てはめるから、人を活かした仕事を作る

最近私が感じるのは、昭和や平成時代にはビジネスというのは基本的に、会社という機会のパーツとして人を雇うケースがほとんどだったと思います。のマニュアルと、実務研修制度を充実させて、本社なり上司なりの具体的な命令を淡々と進めることが組織の在り方だったように思います。Aさんがだめなら、Bさんを採用する。そんな、交換可能なパーツとして人を雇っていた企業は多いと思います。もちろん自分ではそんなことは言いませんけどね。すでにある仕事、仕組・システム、ビジネスモデルに、人を合わせる感じだったと思います。そこから人生の価値観は変わってきて、人は自分の可能性を追求したいと思う人が増えてきたように思います。その可能性を伸ばす場を提供するのが会社であったりすると、会社と社員はWinWinの関係が出来そうな気がします。たんに、時間や労働を報酬で売る関係ではなく、自己実現の場としての会社があるなら素敵だな、と思います。もしそこを目指すとすれば、それぞれの社員の個性を知る必要があります。そしてそれを伸ばす仕事を作っていく。そんなマネジメントがこれからの会社の在り方なのかもしれないな、と最近思うのです。テレワークが増えた昨今であれば、ますますそういった「会社には自分を成長させる何かがある」という期待感が必要なのではないかと思うのです。

後継者として、今の次代を担う人たちとしては、そんな視野を広げていけるとすごく素晴らしい未来がイメージできそうな気がします。

「親の言ってることがころころ変わって困る」ということを解明していくと、自分が親と同じことを社員にしないように気を付けるアラートになりそうで、
そこを意識すると、組織のつくり方というのが変わって、
会社の未来像も変わっていく。
なんとも青臭い話なのかもしれませんが、今の時代、青臭い話こそが案外実現可能性が高い気もするのですがいかがでしょうか。

 

今回のテーマと近いことをYouTubeで短く語っています。
もしよろしければご覧ください。

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