後継者が売り上げアップを検討するとき活用したい9つのフレーム

後継者が、責任ある立場に立った時、多くの場合求められるのは売り上げアップでしょう。
そのことを実現するために、まずやることは・・・
営業社員のおしりをたたくこと?

笑い話のようですが、実際にはそういった事が行われることが多いようです。
確かに、それで一時的に売り上げは上がるかもしれません。
しかし、その効果は長続きせず、場合によっては後継者の立場を危うくするかもしれません。

いろんな方法は考えられますが、当座のカンフル剤的なことだけでなく、将来にわたった戦略を同時に練っていくことが大事ではないかと思います。
「そうはいっても、どこから手を付けていいか・・・」
という思いがあるのではないでしょうか。それを解決するヒントを少し考えてみたいと思います。

今の延長か?新機軸か?

延長線上に答えはあるのか?

会社の売り上げを上げる。
こういった必要性があるとき、考えがちなのは営業社員の稼働を上げるという事。
単純化していえば、「たくさんの客先を回れ」というお話です。
実際問題として、人が買いする営業における効率は非常に悪い事が多いものです。
それを一生懸命上げていく努力ももちろん重要です。最も手っ取り早く売り上げにつなげる方法の一つですから。

しかし、それと同時に別の方法を考える必要があります。
例えば、保険の販売店の方々に、「新聞販売店がどうやれば売り上げが上がるか?」というワークをしてみたところ、「営業マンの尻を叩く」という回答をされた方は一人もいませんでした。
けど、実際に、本業において売り上げが足りないとき、やっぱりやることといえば、営業マンの尻を叩くわけです。

第三者的に見ると、効果が薄く見えることも、自分でやるときにはやらざるを得ない。
それは別のアイデアの着想がわかないことが原因なのかもしれません。

疲弊する社員

営業マンの尻を叩くことで一時的に営業成績が上がったとしましょう。
対前年比120%の成績です。
ひとまずは万々歳ですね。
それで、来年はどうするのでしょうか?
今年いっぱいいっぱい働いた。それで売り上げが伸びたけど、来年の目標はさらに今年の実績の120%を求められる。

一度、売れれば昨年と同じだけの取引が見込めるような商売であればよいのですが、そうでなければどこかで破たんしてしまいます。
だから、営業社員を増強しようとしたとします。しかし、固定費は着実に上がるものの、業績は上がるか下がるかはわからない。
なんともリスクの大きい割には、リターンは限定的であることが多いように思います。

ではどうすればよいか、ですがその着想の種になる9つのフレームをご紹介したいと思います。

ビジネス機会マップ

9つの機会

以下のチャートは、HarvardBusinessReviewに掲載されていたものです。
本来は、グローバル企業が新興国市場のBOP(低所得者層)に向けたビジネスの手法を検討するビジネス機会マップです。
が、実際のターゲットがどこにあるにせよ、この9つのフレームは応用可能と思いますので、国内事業においても発想の「種」として活用いただけるのではないかと思います。

9つのチャンス

『HarbardBusinessReview 2015年6月号 BOP市場を制するビジネス機会マップ』 エリック・シマニス ダンカン・デューク(ダイヤモンド社)

 

ここで、横の軸は「バリューチェーンの変更」の必要性です。
簡単に言うと、右に行くほど仕入れや製造、販売の流れの見直しが必要となる、つまり難易度が高くなると考えられます。
一方、縦軸は顧客の習熟度。簡単に言えば、お客様がその商品を知っているか否か、活用方法をイメージしやすいか否か、ととらえればほぼ間違いないでしょう。

そういう意味では、マトリクスの右上に行けば行くほど、おおきなイノベーションが必要となる可能性がありますし、左下の方が従来の社内体制で対応が可能といえます。

①ターゲットマーケティング

従来の商品製品のまま、従来の販売チャネルを維持したまま、ビジネスを拡大する方法の一つとして候補に挙げられる機会といえます。
例えば、利用いただければ価値を理解頂けるし、それは簡単に買う事ができる機会があるのに、その商品やサービスを知らないことによる機会損失を埋める考え方です。

簡単に言えば、アクセスする顧客を狭く設定して、私たちのメッセージを届きやすくする、という考え方です。
マーケティングにおいては常とう手段ですが、対象顧客を狭めることでメッセージは具体的になり、届きやすくなります。
例えば、缶コーヒーはたくさんありますが、「朝専用」としたことで爆発的に売れたケースなどがわかりやすい事例でしょう。

私のかかわる保険の販売店においては、「空き家の火災保険」というターゲットを定めたことで、集客が行いやすくなり、社内的な手続きに関するマニュアル化が一気に進んだ、というケースもあります。

②製品の再設計

ターゲットを明確にすると、そこに特有のニーズが見えやすくなります。先程の「朝専用缶コーヒー」においても、おそらく味であったり成分について朝飲むにふさわしい調整を行った事と思います。
顧客層を40歳代女性に定めたとすれば、その総特有のニーズがある可能性があります。また、B2Bのビジネスにおいても、売り上げ○億円以下の製造業といったターゲティングをすると、その規模特有のニーズがある可能性があります。
自分のメインとするターゲットのニーズをくみ取り、従来の商品やサービスを改善して更なる差別化を行う事が可能と考えられます。

③既存チャネルの拡大

従来からある販売チャネルとその仕組みを、拡大する方法。ここでいう既存チャネルというのは、自社がもつ販売ネットワークだけではなく、別の事業を営む企業とのアライアンスなども含まれます。
自社の商品やサービスを買ってくれるであろう層を顧客として持つ業者との提携により、ビジネスを加速させる方法を検討することも一考といえそうです。
HarbardBuisinessReview2015年6月号においては、生命保険会社とマイクロファイナンスとのパートナーシップの事例を紹介しています。
マイクロファイナンスの会社が金銭を貸し付けている女性顧客の夫に貯蓄性のある生命保険を売り込み、販売拡大に成功したとのことです。

④新規チャネルの構築

自社のターゲットとする顧客層にリーチ出来る業者や方法を検討し、新たな販売チャネルを構築するという方法。
フランチャイズなどの仕組が代表的なものと考えられそうです。

⑤新製品の開発

ターゲットとする顧客が「仕方なく」既存商品やサービスを利用しているケースは、まだまだ少なくないようです。
「こうなればいいのに」という思いを持っている顧客のニーズを形にした新たな商品開発は、大きなチャンスとなる可能性を秘めていると考えられます。

⑥競合他社の市場を奪取

仮に、大手企業の商品や製品が大きなシェアを占めている場合、中小企業がその機動力を生かしてきめ細かに顧客のニーズを把握し、そこへの改善提案を行う事も検討すべき事項の一つと考えられます。
その場合、既存の製品やサービスにし腰改良を加えるだけでいい場合も少なくありません。
値段競争に入ると、大手の土俵で勝負することになるので、大手が汲みきれない顧客のニーズに着目することが中小企業としての強みを発揮できるシーンとなる可能性がありそうです。

⑦未開発地域市場への拡大

もともとこのマトリクスは、途上国の貧困層を対象として作られたものなので、「未開発地域」という表現をとっていますが、日本国内においては自社商品やサービスが普及していない層や地域、市場といった読み替えが必要になります。

⑧新しいビジネスモデルの開発

「新しいビジネスモデル」というと難しく考えがちですが、例えば、例えば単発で売っていた商品を継続利用いただける方法を考えるとかいう事も含めて検討したいところです。
例えば、自動車修理工場であれば、2回点検などで入庫があれば平均走行距離がわかります。そうするとオイル交換のタイミングがわかるわけです。
土日に来店いただくのが従来の流れだったのを、平日に限り出張交換を受け付けるという方法があるかもしれません。
B2Bで消耗品の注文を待っていた業者は、消耗品管理を代行することができるかもしれません。
緩く考えてみるとこからのスタートがよさそうです。

⑨新規市場の創出

今、あなたの商品やサービスの利用をあきらめている層はいないでしょうか。また、今の主要の顧客以外にも、同じ商品を使って頂くと利便性を感じる顧客はいないでしょうか。
先日びっくりしたのは、あるペットショップに立ち寄ったところ、ペット用歯ブラシは人間用の歯ブラシメーカーではないブランド名のものが多いようです。見た目は人間用とほとんど変わらないのに、値段も3倍、5倍は当たり前でした。
実際は、全くの別物なのかもしれませんが、パッケージを変えるだけで新たな市場を作り出せることも少なからずあるのではないでしょうか。

「9つの機会」マトリクスの使い方

このマトリクス、正直なところ、明確に9つに分類できない戦略もおそらくあると思います。
一つの枠組みについて考えていると、ほかの分野にも波及するアイデアもあるでしょう。
しかし、それはそれでいいですし、あまりこだわりすぎる必要はありません。

中小企業の後継者が使う場合、あくまでこのマトリクスは、発想を刺激する程度で十分なのです。
何かできることがないだろうか。
そう頭を抱えたとき、それぞれのフレームを見ていき、可能性があるものを思いつけばそれでOKです。
問題解決のためのメニュー表とでも受け取っていただければよいでしょう。
きっと、ぼんやり眺めていると、ハッとするアイデアが湧いてくるのではないかと思います。

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  1. 2016年 10月 03日
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