事業承継を冒険に変える、後継者の知恵

【3】事業承継 冒険化計画 ~装備の確認~

事業承継を冒険になぞらえて考えてみよう。
それが、このコラムのテーマです。
その狙いの一つは、あなたに”部外者”の目を持っていただくこと。

後継者は、とても精神的にきつい状況を経験します。
その渦中にあっては、吐きそうなくらいのストレスをお持ちでしょう。
しかし、リスクもなく、外野として、お気楽に事業承継を眺めてみる。
それが、本コラムの目指すところです。

「計画」してはいけない!?

冒険は計画通りいかない

前回は主人公であるあなたの、ステイタスチェックをしていただきました。
(詳しくは前回のコラムをご覧ください→【2】事業承継 冒険化計画 ~ステイタスをチェックしよう~

では、次にやることは計画を立てる・・・と行きたいところですが、ここではあえて計画しません。
なぜなら、冒険は計画通りにいかないのが普通だからです。
そもそも、計画を淡々とこなすなら、それは冒険とは言えないでしょう。
常に不安定な所を進んでいく。
常に危険と隣り合わせ。
これこそが冒険のだいご味でしょう。

そりゃあ、リアルな世界で危険と隣り合わせなんて、ぞっとしません。
けどしょせんお遊びです。
無責任に、危険を楽しんじゃいましょう。

 

とりあえず、冒険の目的を決めた。
そしてそこに使える自分の特性もなんとなくわかった。
次にやることは、あなたが使えるものは何か?
を考えてみましょう。
そう、ここでやることは、装備の確認です。

使えるリソースの確認

冒険の目的が決まり、ざっくりした探検地域がイメージできれば装備の予測はつきます。
探索すべき地が、ジャングルなのか、海底なのか。
地中なのか、ピラミッドなのか。
その探索する地をイメージした装備の確認をしてみます。

私たちの冒険は、あくまでへき地を旅することではありません。
事業承継という冒険です。
となると、
会社にはどんな不動産があるのか、
どんな機械設備があるのか、
どんな特性を持った仲間(社員)がいるのか、
どんな立地で、どんな強みを持った会社なのか、
まあ、いろんなチェックポイントはあります。

あなたが使えるリソース(資源)を一度リストアップしてみましょう。
ざっくり、
物的資源(社屋や店舗、機械設備など)
無形の資源(ノウハウや技術、社の文化など)
人的資源(社員、顧客、取引先との関係など)
といった分類でリストアップしていくといいかもしれません。

裏切者は誰だ!?

ここで一つ、考えておきたいことがあります。
たいてい、冒険物語というのは、身近に敵が潜んでいるもの。
あなたを妨害する人、あなたの成果を横取りする人、あなたの計画を乱す人、
そんな人がいるものです。
この人たちは、ちょっと別枠でリストアップしておきましょう。

しかし、彼らを排除するのは早計です。
よく思い出してみてください。
冒険物語の多くには、こういった”怪しい”人材が紛れ込んでいるものです。
しかし、彼らが最後まで”怪しい人”で終わるわけではないことも多いのです。
なんだか不穏な動きをしていたものの、最後のピンチであなたと別の視点で調査をしていたことがわかり、あなたを助けるかけがえのない力になることも多いのです。
はじめは敵に見えたアイツが、最後にはあなたの切り札になる。
結構ありがちじゃないですか?

実は、リアルな世界でも同様のことがよく起こります。
あなたにとって、その人は重要なキーマンになる可能性が高い。
だから、その人を理解すべく務めてください。

最大のツワモノ

もう一つ付け加えておきます。
あなたの会社の先代は、どこに分類しましたか?
戦力外?それとも怪しい人?
冒険に参加させるつもりはない、なんて人もいると思います。
けどね、ちょっと考えてみてください。

猛烈な推進力を持ち、
社内の人望があり、
実力もある。

こんな人を、冒険物語でシカトできますか?
とても貴重な戦力ですよ。
そして、頼られると嬉々として戦火に飛び込む。
こんな人材、めったにいません。

冒険の成功確率を高めるには、この最大の戦力ともいえる先代を排除するのではなく、使いこなすことが重要です。
え、そんなの無理?
まあ、しょせん、空想物語です。
「使いこなせるとしたら・・・」という前提で考えてみてください。
この勇者を使い倒すことができたら、かなり物語を有利に進められると思いませんか?

リアルな事業承継で考えてみると

計画はストレス

割とかしこまったコンサルタントはこういいます。
「事業承継計画をしっかり立てて、それに従って権限委譲を進めましょう」
ま、それができりゃあ、苦労しませんよね。
できる人はやればいいですが、うまくいかないことが多いのが同族会社の事業承継。
なにしろ、いつでも「ちゃぶ台返し」をしちゃうのが先代。
後継者だって、もう期待していないでしょ?

守れない計画は、ストレスでしかありません。
後継者は「このタイミングで、権限移譲がある」と期待し、それに備えても、ある日突然その計画は反故にされる。
理由は、後継者の未成熟。
まあやってられませんよね。
だから、ここでは、計画は重視しません。
ざっくりした方向感を持ち、そこに向けてできることをやる。
そういうスタンスです。
後継者がこれ以上ストレスの種を握ることをお勧めしていません。

あなたの会社が持っているもの

私たちは「足りないもの」に目を向けがちです。
うちの会社は●●がない。
うちの会社は××が足りない。
もっと会社は△△であるべき・・・

まあ、それも大事なのかもしれません。
しかし、現状で足りないものを数える前に、持っているものを最大限利用することを考えるべきではないでしょうか。
ないから付け加えるという考えも悪くはありませんが、今持っているもので何ができるかを考えるというのも一つの考え方です。

敵対するか、抱き込むか

そして、社内の不穏分子の処遇について。
こういう人たちを排除するとか、閑職に追い込むとか、そういう力でねじ伏せる方法ももちろんあるでしょう。
しかし、私の経験上、形を変えて同じような登場人物が出てくるのがよくあるパターン。
だから初めから排除することを考えず、まずは彼らを理解しようと努めることをお勧めします。

あなたの指示に従わないとすれば、彼らは何を求めているのか。
(なぜ従わないかではなく、どうすれば従うのかを考える)

多くの場合彼らはあなたと違った価値観を持っているように思います。
その価値観を理解し、自身の戦略策定の参考にすることは決して悪い話ではないと思います。
そういった人間と距離をとるのではなく、近づいていく。
そうすることで、場合によっては最後の最後、大きなピンチの時にあなたを助ける人になる可能性は少なくないと思います。

そして、先代。
このブログでは、「最大の敵」と表現したこともありますが、本来なら最大の自軍の戦力になるはずの人です。
その能力は申し分ない。
使える能力を社内で発揮してもらうように、うまくコントロールする。
やってほしいことをやってもらい、やってほしくないところから距離をとってもらう。
これができてしまえば、恐ろしいほど頼りになる戦力です。

立ってるものは親でも使え、なんて言葉がありますが、徹底的に使い倒しましょう(笑)

私たちがやる事業承継というのは、相当にパワーが必要な事業です。
そんな時に内部の人間と争って体力を浪費して成し遂げられるほどヤワな話ではありません。
がっつり働いてもらいましょうよ。
そうすれば、「敵」から「子分」に代わります(笑)
あなたの手の上で、先代を躍らせてみることを考えてみてください。

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