後継者

コンプライアンスと先代社長・高齢社長と後継者

唱和の時代は、いろんなものが緩やかだったかと思います。
ゴミ捨ては特に分別とかいいませんし、個人情報の扱いだってけっこう雑でした。
公害問題とか、品質管理とか、いろんなものが緩やかだし、社員との関係だって今ならパワハラなことが、当時はむしろ愛のムチなんて言われていたところもあるでしょう。
お客様の手間を省略するために自署欄をこちらで書いてしまったり、色んな姓の認め印のコレクションを持っている会社もありました。

当時は、経済が伸びていたので、その伸びに置いて行かれないようとにかく売上を上げ、仕事の量を増やすことが大命題だったと思います。
顧客保護的なものは、実は多くの中小企業の場合は一定程度の配慮はしていたものの、やはり法的な規制が緩い分、やりすぎな業者も出てきたりもしました。
社内ではその根性が褒められるくらいの時代で、私自身もその一端を垣間見ています。
そんな時代に生きてきた先代社長、今や恒例となった社長と時代の要望がかみ合わなくなっているのがここ20年くらいの話ではないかと思います。

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実は私自身、保険という規制の厳しい産業の中にあって、それが非常に緩やかだった時代と、厳しくなった今の両方を知る存在の1人です。
かつては、電話でお客様の意思確認をして、手元に持っている認め印を申込書に押印するなんて言うことは普通のことでした。
それが違法という認識さえ持たなかったように思います。
しかしそれがだんだんと厳しくなってきました。
そして今までは、保険のセールスというと「お客様に手間をかけない」ためにできるだけ短い時間で要点だけを説明し、さっさと辞去するというのが気の利いた保険セールスパースンのたしなみでした。
しかし今や、重要事項説明をし、意向確認をし、申し込みに関する詳細を確認して、やっと契約です。
はじめのころは確かに面倒くさかったことを覚えています。

ただ、まだ私の年代(現在52歳、当時30歳代)であれば、頭を切り替えることは比較的容易です。
そういう時代なんだな、と思いつつ、状況に溶け込んでいくのですが、やはり父の世代はそういうわけにはいきません。
父である創業社長、高齢社長は、昭和の時代に大半の時を過ごしていますし、そのお客様も同じ時代を生きた人たちです。
わざわざ「重要事項」なんてものを説明しようものなら、お客様の方から「水臭いなぁ、いまさら」なんて言われて話を遮られます。
じゃあ、お客様は保険という商品が使えないシーンですぐに納得するか?というとそうでもなくって、保険が出ないなら「あんたに任せたのに」なんて言う風に攻められる。
先代である創業社長の時代はそれを前提でビジネスをやってきていますが、お客様もそういう世代もいれば、新しい世代の人もいる。
そういった中で一律に対応することは、ある意味将来いつ爆発するともしれない地雷を埋めて回るようなものです。

そんな事もあって、私は先代に営業現場を任せることにすごく不安を感じました。
一方で、先代の圧倒的なセールス力は会社にとってなくてはならないもの。
まったくのジレンマの中で難しい問題に頭を抱えていました。

 

先代世代は今一つピンとこないと思いますが、このコンプライアンス問題は、下手をすれば一発で会社が傾いてしまうほどのインパクトのある問題に発展しがちです。。
だから後継者は、将来の問題を抱えないためにも先代社長に行動を改めてほしい。
けど、そうはしてくれない。

その時、先代社長本人に、いろいろ注意もしましたが、気を付けたのは深入りしない事。
一つの問題があって、そのことをくどくど長時間にわたって責めても恐らく行動は変わりません。
だから言うことは言いますが、あっさりと引き下がります。
その代わり、頻度を上げます。
気が付いたらとにかくつどつどいう。
くどくどではなく、都度都度。

そして社内にコンプライアンス意識を高めるような研修を行ったり、やはりいつも言い聞かせたりで、社内の風土をコンプライアンスが無視できない雰囲気にしていきました。
そうすると先代も、一人そこに逆らう行動というのも結構エネルギーを使うものです。
だんだんと雰囲気に流されていくようになってきました。
大事なのは、コンプライアンス違反をゆるさない雰囲気づくりで、後継者一人がコンプラというのでなく、社員全員の常識を塗り替えていくことから始めてはいかがでしょうか。
もちろん、大きなリスクなので焦る気持ちはわかります。
しかし、私たちが焦ったところで、何も変わりません。
結局、ある程度の対策はとるものの、最悪のことに対する覚悟を決めて対処することで、腹の座った対応ができるのではないでしょうか。

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