後継者がはじめに行う一歩

「本当に自分の道を歩んでいるのだろうか?」
私が様々な後継者の方のお話を伺う中で、感じる事です。
ひとごとではなく、自分自身もまた、そんな悩みを長年感じていました。
なぜなら、後継者が語る言葉の多くは、先代のコピーである事も少なくありません。

その事自体は、問題ではありません。
本当に、後継者が自分の生きる道を、先代の道をトレースする事だと、
心から信じているのであればそれは素晴らしい事だと思います。
しかし、今、もし何かしらの閉塞感があるとすれば、
それは本当に自分の道なのだろうか?
という問いかけを自分に行ってみる必要があるかもしれません。

自分の中に取り込んだ先代の人格

人はみな多重人格

人間の行動の源として、重要な役割を果たしているのが、「不快」を避ける機能。
これは、太古の時代から、危険を避ける本能として、人の脳に刻まれているといわれているそうです。
人の行動は、無意識に不快を避ける行動を行うといいます。

例えば、子供の頃、いたずらをして親に叱られた経験は誰しも持っていると思います。
そうして、嫌な思いをする。
今度は、その嫌な思いを二度としないよう、親の人格を心の中に取り込みます。
すると、心の中の親の人格が、あなたが何か目新しいことをするときに、声をかけてきます。
「そんなことしてないで、もっと普通のコトしなさい。」
そうやって、人はどんどん自分の自由を、自分で狭めていきます。

始めのうちは、「親に叱られるからやめておこう」という心の声が、だんだんと、
「こういう事はやるべきではない」という自分の声に変わってきます。
本当はやりたいのに、このように書き換えられた自分が心に居座り、自分をコントロールし始めます。

始めは、親。そして、成長とともに、学校の先生であったり、友人との関係、社会とのかかわり・・・
そうやって、どんどん自分の可能性を閉じていき、世間で言われる「いい人」を演じ始めます。

もし、
●新しい事をやろうとすると、批判が怖くて一歩踏み出せなくなってしまう
●世間からの評価を気にしすぎて、大胆な行動ができない
●「常識」を重視しすぎてしまう
●人に迷惑をかけたくない、という思いが強すぎて窮屈

といった経験がある方は、自由を求めている自分を閉じ込めている可能性があるかもしれません。

子供としての関係とビジネス上の関係

普通、親との関係性は、子供が独立して家庭を持った時点で、その影響は若干でも薄まります。
親が子供に対して行う躾は、あくまで何もわからない子供が、社会に適合するためのものです。
ある程度、社会の中でもまれて、大人になった時点では、本来自分自身の価値観で社会の中での立ち位置を考えるべきでしょう。
その頃には、普通であれば親の影響力は少しずつ薄まり、現在進行形の社会や勤め先での価値観の中でバランスをとるようになり始めます。
しかし、親子での事業承継の場合は、親の影響を常に強化されうけ続ける状況が続きます。
この事は、良い事もあれば、悪いこともある。
後者の場合に、後継者が深い悩みを抱える状況が発生する事になるのでしょう。

価値観の分離

親離れ子離れという当たり前の儀式

一般的な方の場合、結婚・別居を通じて、親と子の関係性が変化します。
これはいってみれば、親離れ子離れの儀式と言えるかもしれません。
一方で、親子でビジネスを営む場合、住む場所は変わるわけですが、一日の大半を過ごす勤め先が同じではその関係性は、なかなか変化ができません。
親はいつまでも教育者の立場で、子供は生徒の立場で・・・といった関係性が永遠に続く可能性があります。
その関係が緩むのは、親の体調不良などといった事がきっかけとなる事が多いようですが、それを待っているほど時間を浪費することが出来ないのが現実でしょう。

2つの後継者タイプ

そのような状況において、私の知る限り後継者の考えは2つに分かれるようです。
一つ目は、創業者は絶対の存在であり、いつも正しい。だから、先代の考えの元に動くのが最善である、
というタイプです。
実は、全体からすると、こういったタイプが非常に多いようです。
こういったタイプの方は、今の自分の立場に何の疑問も抱かないようで、メリットとしては親子の確執は起こりません。
先代は絶対的権力者であり、その決定に対しては基本的に意見をさしはさまないので、先代と後継者の関係は非常にスムースです。
しかし、デメリットとしては、先代はそんな後継者に対して、物足りなさを感じている事が多いようです。
コイツに任せて大丈夫だろうか?と自問自答している創業者の話をよく聞きます。
そして二つ目は、自分なりの経営を模索しようと、自我の眼ざめのある後継者。
この場合、最も大きなデメリットは、必ずと言っていいほど先代との衝突が発生します。
その衝突から、時として意固地になってしまう傾向があるので注意が必要です。
とはいえ、これは自分らしい経営をしようという思いの表れであり、ある意味親離れの兆候と言えるでしょう。
決して悪い傾向ではない、と私は考えています。

そうはいってもツライ

「いい傾向」と言われたところで、渦中にいる人からすれば胃が縮むような思いです。
なんとか、この状況から脱したい・・・と思うのは当然です。
先代の価値観と、後継者の価値観はますます分離していきます。それも当然で、実は、世の中は今、大きく変わっています。

3_yu_02b内閣府の平成22年世論調査によると、昭和55年(1980年)あたりから、人は物的な豊かさより、心の豊かさを求める傾向があり得ないくらい高くなっています。

 

 

 

 

 

つまり、今までのビジネスは、普通に考えて成立しにくくなってきているという事です。
過去の経験値からくる思考を持った先代と、未来を見据えた後継者の意見が対立するのは、当たり前のことなのです。
この価値観を統合していく役目を後継者はになっている、と言えますが、ここではそこについては深くは触れません。

はじめの一歩とは?

人は変えられない

多くの場合、人は、周囲の状況を変えられない事に、苛立ちを感じたりします。
特に後継者の場合、最もコントロールしにくい人物として先代がいるわけですから、そのストレスたるや、大変なものです。
先代一人の問題であればまだしも、社内に影響力を持っていることが少なからずあるので、社内にも良からぬ影響が出ます。

一つ大胆な提案をしますと、そもそも、先代は事業承継の味方でもなく、会社改革の味方でもない、と思ってください。
誤解を恐れず言えば、後継者の会社改革計画においては最大の敵、ラスボスです。
なぜなら、人は、人を変えることはできません。
ましてや、ラスボスは、ちょっとやそっとのことでは懐柔する事の出来ない、最大の壁です。

しかし、あなたのプロジェクトなり、スタイルが、社内で当たり前になれば、先代も知らず知らずのうちに変わっていくかもしれません。
少し楽天的に見えるかもしれませんが、まずは、協力者はいない、という前提で行う方がストレスは少なくなるのではないでしょうか?
悪意を持って接する必要はありませんが、敵の中枢を破壊するストーリーをあなたの中で描くだけで、随分と楽になると思います。

集中する

基本、協力は得られない。そういう前提で、突破口を探していきましょう。
始めの段階では、複雑な要素をあれこれ考えて思い悩むより、小さな試みを少しずつ世に問うていく。
もちろん、失敗も沢山するでしょう。しかし、それはあなたがバージョンアップしていく過程です。
とにかく大量の行動が重要です。
考えても状況は変わりませんが、行動は状況を動かします。
後継者である自分にとって、何がやりたいのかを書き出して、出来るものから行動していきましょう。

人の事に意識を囚われず、自分の行動にのみフォーカスしてみましょう。

「どうせそんな事をやっても・・・」という心の声が聞こえた時には、それが誰の声か特定し、あなた自身の声でなければ全否定しましょう。
あなたが決めて、動き始めると、必ず協力者が現れます。

結果の保証はない

散々たきつけておいて、結果はちゃんと出るんですか?
そんな質問が出そうですね。残念ながら、結果の保証は私にはできません。
あくまで自己責任です。
ただ、良きにつけ、悪しきにつけ、行動する事で変化が起こる事だけは保証できます。

苦しい、閉塞感がある、というのは今までのやり方では上手くいかないタイミングと言えます。
だから、それを取り除くには、やり方を変える必要があります。
細かい事を考えず、どんどんチャレンジしてみてください。
(リスクを取る事は大事ですが、挽回不能なリスクを冒す時だけは慎重に)

 

 

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