後継者

後継者が「手っ取り早く儲けたい」と思う気持ちの背景にあるもの

私が親の会社を引き継いで常に考えていたこと。
それは、「いかに手っ取り早く儲けるか?」です。

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手っ取り早く儲ける方法はどこかにないか?
家業に勤めることになって、3年たつ頃にはそんなことばかり考えていました。
しかし、今から考えると、それができたとしても、きっと癒されることはなかったと思うのです。

「仕事」に費やす時間は人生の浪費?

身の上話

少し、私の身の上話にお付き合いいただければ、と思います。
私が親の会社に入社して3年くらいまでは、ただ目の前の仕事をおぼえることで精いっぱいでした。
どちらかというと、前向きに努力しているというよりは、思うようにうまくいかない仕事を前に、あきらめたくなる状態。
ある時その原因を考えてみました。
自分が得たい状況って、どういう状況だろう?と。

その時考えていたのは、セールスマンとしてトップになること。
ガンガン売りまくって、称賛を受け、金銭的に豊かになること。
これこそが私の望みでした。

とはいえ、仕事は思うようにいかず、息が詰まるような苦しさを感じていました。
だんだんと会社に行くのがおっくうになり、会社に寄り付きたくないとさえ思っていました。

楽をして儲けたい

自分の期待通りではないものの、仕事の技術はそれなりに時間がたてばうまくはなるものです。
癖のあるお客さんとのやり取りも慣れ、実務もたいていのことはできるようになりました。
それでもいつも不満です。
思ったような自分ではないような気がする。
そしてあいかわらず、仕事は面白くない。

この時に常に頭の中にあったのは、「いかに楽をして儲けるか」です。
父の興した家業はどちらかというと、堅実な仕事。
一気に売り上げが上がることもなければ、一気に下がることもあまりない。
それがまったくもって面白くない。

同時期に創業したお客さんは、こんなに会社を大きくしている。
ああ、製造業なら、ヒット商品1つ生み出せば一気に売り上げを上げられるのに。
ああ、こんな業種なら、営業なんてしんどいことしなくていいのに。
他人の庭の青さにばかり目をとられていました。

マジメに自分たちの仕事をより高いレベルでやろうという同業者の先輩に対し、私は異業種が何をやっているのかばかりを気にしていました。
あるとき、同業者の集まりで先輩からこういわれました。
「お前のお父さんは努力家だ。見習って頑張れよ」と。
私は即座に否定しました。
「私は頑張るつもりはありません。いつもいかに楽して儲けるかばかりを考えてます」
相手はポカーン(笑)
努力や奉仕が自分たちの仕事のあるべき姿、と考えている人が多い業界の中で、とんでもない暴言を吐いてしまいました。

私の目的は・・・?

このころの私にとって仕事とは何だろう、と問うたとききっとこう答えたでしょう。
「お金を得る手段」
仕事に何の価値も見出しておらず、ただ自分が生活し、豊かに暮らすためだけの手段。
自己実現のための手段。
仕事ってその程度のものでしかなかった。
だから、時間をかけず、苦労することなく、手っ取り早く儲けたかった。
仕事に費やす時間は、1秒と言えど私にとっては無駄な時間に感じていたのです。

認められたい心理

本当に欲しかったのは豊かさなのか?

そのころ、いかにしてリッチになるか。
そんなことばかり考えていました。
しかし、ある時ふと思ったのです。
豪邸を持つとか、高級外車を乗り回すとか、バカ高い時計や服を身に着けるとか、そういうことに何の意味があるのだろう?と。

よくよく考えてみると、私は思ったほどそういうものに関心がないことに気づきました。
そりゃあ、いい暮らしができればそれに越したことはありません。
けど、身に着ける物への関心は薄いし、クルマだってちょっといいものに乗ってもうれしいのははじめだけ。
けっこう無理して買ったもののほとんどは1年もたたず飽きてしまう。

なんか違うな、と思い始めたのです。
たぶん、年収が1億円になったとしても、なか卯のうどんはおいしいと思っていると思いますし、マクドナルドの列にも並ぶ。
変な子だった私は考えたわけです。
なぜ、そんなに儲けたいんだろう?と。

自分の価値=稼いだお金・・・?

そこで思い当たることは、親の会社を継いだ以上、親を超える能力を持ち、稼ぎを持ち、会社を大きくすることが大事である、と考えていた自分です。
同じことをやって、親に勝てなければ意味がない。
会社は大きくしなければ、自分は劣った人間だ。
まぁ、そんな思いにとらわれていたんじゃないかと思います。
他人、とりわけ親から認められたい、という思いが強かったんじゃないかと思います。

思い起こせば、子どものころ、たまたま親の車で私がかけた音楽に父が関心を示したとき、なんとなく誇らしげな気持ちになったこともありました。
そんな断片的なシーンをつなぎ合わせると見えてくることがあります。
子どもはいつになっても、親に認められたい
その親に認められるには、親子で経営する以上会社を大きくしなければならない。
それはすなわち、儲けることである。
けっか、私の年収は莫大な金額になるべきである。
大富豪になったら私は、親に認められるんじゃないか。
意識していたわけではありませんが、無意識のところでそんな風に感じ取っていたように思います。

当時の私はそういう過程をすっとばして(見ないようにして)、結論としての「儲ける」という思考になっていたんだと思います。
目的は「儲ける」ことですから、手段となる仕事は楽なほうがいい。
そもそも仕事に意味を見出していないので、仕事にかける時間は最短なほうがいい。

当時の私の考えはそんな感じだったんだと思います。

「ツラさ」の原因

目的は親に認められること。
これが仕事を通じてできればベストなのでしょうが、ベテラン経営者の親を超えるのはなかなか大変。
特に私の場合、入り口のところでつまずいた身ですから、もはやその可能性は限りなくゼロにちかい。
じゃあ、まともな努力をしても明るい未来は訪れそうにない。
で、目に見える「お金」を周りに溢れさせようとあたふたする。

自分が会社にいる理由の大部分は、そんなところですから、周囲からの称賛があったとしても心には入ってこない。
お客さんからの感謝、社員とのやり取り、他社からの称賛など、自分にとって良い情報もシャットアウトしてしまいます。
「自分は価値のない人間だ」という前提があるからです。
なにしろ、目の前の親に自分を認めさせることができないのだから。
周囲がいくら認めてくれても、何の意味もありません。

私の場合、おかげさまで同業者から講演依頼を頂くとか、割と有名な同業者団体の長を勤めさせていただくとか、外からはそれなりの評価を頂いきました。
しかし、常に自分の自己評価とあわない違和感がありました。
自分の評価を決めるのは、親からの承認です。
それが感じられないまま大人になり、大人になっても親の承認を求め続ける。
そんな構造が見えるのにはずいぶんと時間が必要でした。

私はお金が欲しいわけでも、ステイタスが欲しいわけでもない。
こういったものへの欲求はあくまで、代用品です。
欲しかったのは親から認められること。
これを言語化するのは、本人にとってはとてもつらくて恥ずかしいことです。
なぜなら、子供じみてて、みじめになるからです。
いい大人が、親に認められたいって、なんだか駄々っ子みたいではずかしいじゃないですか。

私が自分のそんな気持ちを直視できるようになったのは、私以外の後継者からの相談を通じてでした。

後継者の主張は駄々っ子にちかい

さまざまな後継者の相談を受けていると、時に感じることがあります。
「それって、駄々っ子そのものやん」
これはいや、あれはできない、で、どうすればいいだろうか。
結局、自分で決める以外は方法がないことが多い。
これを自分で気づく、簡単な方法があります。
自身の主張をとにかく書きなぐって、あとから冷静になって読み返してみることです。

そうするとけっこう恥ずかしくなってくる内容であることが多い。
もちろん、先代の個性だったり、先代自身の問題であることも多分にあります。
けどそれを受け流せないのは、後継者にも見えていない問題があることも多い。
親子の経営というのは、この双方の未熟さに対処していくことだと私は思っています。

後継者のツラさの正体

仕事が楽しくない原因

先代は、「経営者になるのだから土日なんて関係ない」というかもしれません。
後継者的には、「休みぐらいゆっくりさせろよ」と思っているかもしれません。
実は、仕事が楽しければ、土日関係なく働くことは決してストレスではありません。
むしろそれは喜ばしいこと。

けど、仕事が楽しくないと、そういうわけにはいかない。
そもそも仕事上の上司(先代)といつも一緒に居なければならないという後継者にとって、仕事が楽しくなければ毎日が地獄です。
その地獄からできるだけ距離を置きたいと思う。
だから、手っ取り早く儲けて、会社からは距離を置きたいと思う。
それができないなら、一刻も早く親の会社なんか辞めたいと思う。

その仕事が楽しくない原因は大抵こことつながっているようです。
このまま続けていても、親は認めてくれそうにないな、と。
ないがしろにされる自分がいて、仕事に集中することもできず、いやいや毎日を過ごしているのではないでしょうか。

また、良くある話は「〇年後には先代が引退するといっている。それに向けて準備をしている」という話。
しかし悲しいかな多くの場合、その「〇年後」がやってくるとこうなることが多い。
「引退すると言っていたのに、会社に居座っている。どうにかならないか?」
いやいや、こういうものなんですよ。
そこには先代の背景があって、一定の原則のもとで先代は動いているので、想定内の話です。

けど、そこで後継者がうろたえるのはなぜかもわかります。
代を譲られなかった=後継者が認められていない
というネガティブな思い込みがガツーンと後継者に襲い掛かるからです。
一応言っておきますと、先代はあなたが頼りないから譲らないんじゃありません。
代を譲ると自分の存在価値が揺らぐからです。

人生の浪費

さて、現状を見回してみたとき、仕事が楽しくないとか、つらいとか。
親と会社にいることが、のどに物が詰まった時のように苦しいとか。
そういう感情があるとき、頭に浮かぶとき、先代を追い出そうとしたり、自分が辞めようと思ったりする。
けどその踏ん切りもつかず、結局は、やっぱり頑張って耐えるしかないよね、と結論を出す。

じゃあ、先代が「もうやーんぺ」と辞めていくのは何年後だろう。
それが5年後であれ、20年後であれ、それを耐えて待ち続けるってのはなかなかにしんどいものです。
そこで焦り始める。
「ああ、オレももう40歳か」
「ついに50歳の声が聞こえ始めたよ」
「ええ、60歳!?一昔前なら完全な引退年齢じゃん」
一瞬にして未来の自分が脳内に映像化される。
ああ、60歳になっても、90歳近いオヤジの後を隠れるように歩いていくのか・・・?
ショボーンですね。

まあそこまでいかなくとも、生命エネルギー(笑)を日々消耗してるってもったいない。
それをやっぱり前向きに生かしたい。
私はそんな風に考えたのですが、皆さんはいかがですか?

目をそらしたいことに目を向けてみる

で、手っ取り早く自分の人生を取り戻す方法があるとすれば、まずは見たくない感情を陽の光にあててあげる。
具体的に言うと、「認められたい自分」の存在を認めることから始めるのがよさそうです。
そういわれると「自分に限ってそんなことはない」と言いたくなるかもしれない。
けど、そうやって過剰に反応する時点で、気になってるんです。
だから、そういう感情をまずは自分で知って、できれば言葉にできるといい。

そしてそういうどちらかというと後ろ向きな感情を前向きに転換したいところ。
そのためには、できれば心理的に安全な場所が必要になります。
表現は悪いですが”共犯者”の集まりみたいなものです。
同じ境遇にあり、同じ心の詰まりを持っていて、同じしんどさを感じている。

「親に自分を認めさせる」というのではありません。
認める認めないは相手の考えです。
あなたがどんなに素晴らしい働きをしていても、親が「認めない」と言えばそれで終わり。
さらに言うと、親は認めていないわけではないことも多い。
それをうまく表現できていないだけのことも多いのです。

私の作りたい”共犯者”集団

だから変えるのは相手ではなく、自分の思い込み。
親が認めてくれると感じられないなら、”共犯者”同士で認め合う。
なぜ共犯者かというと、はじめのうちはこういう話ってあまりしにくいんですよね。
後継者である自分が「ツライ」と表現する時点で、なんだか親を冒とくしているようにも思えてしまう。
そういう人、けっこう多いみたいです。
早い話が、親の庇護から飛び出すクーデターを起こすわけです。

そして一つの方向性を共有できないかな、と思っています。
それは、1000年続く企業を作ろう!ってこと。
まぁ別のものでもいいのですが、数値目標は人の行動を歪める(『ティール組織』(フレデリック・ラルー))ようですので、短期的な数値目標ではなくて長期的な夢として。
それが達成できたかどうかは生きてるうちにはわからないんですが、それはそれでいいじゃないですか。
1000年後の未来人が、「1000年企業の礎をつくったのが、2代目の〇〇社長だったのか」なんて言ってるところ想像してみると、にやにやしたくなりません?
そんな無茶苦茶なことをマジメに考えてみたら面白い。

その”共犯者”集団は、きっと地元にもあるし、同業者の集まりにもある。
けどそこが安心できる場でないとしたら、私が作る後継者倶楽部もちょっと覗いてみてください。

世の中を一緒に変えてみませんか?
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