後継者が担うべきたった一つの役割

ある時、「事業承継の目的って何だろう?」と考える機会がありました。
私は親の会社を継ぐべく会社に入った跡継ぎでしたから、会社を守り、育てることが大事なことだと思っていました。
しかし、ある時期から、本当に大事なことは違うところにあるんじゃないか?と思い始めました。

少し大胆なたとえをしてみます。
自動車のある部品が古くなって、劣化してきたとします。
その修理には二つの方法があります。
1つは劣化した部品を修理し、使い続けるという方法。
比較的安価で、問題も起きにくく、しばらくは安泰ですが、そもそも劣化が始まっている部品です。
そう長く使うことはできないでしょう。

一方、その部品を取り換えてしまう、という方法があります。
少しコストは高くなりますし、その部品が全体になじむまでには少し違和感があるかもしれません。
それでも、長い目で見れば、その部品は長く活躍できるので、結果としては悪くない選択です。

自動車全体を社会と捉え、部品というものをあなたの親の会社と考えてみましょう。
はたして、修理して使い続けるのでしょうか?それとも取り換えてしまうのでしょうか?

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会社の寿命は「バカ息子」のせいではない!?

大企業でも寿命は30年

1980年代に、大規模な調査が行われました。
過去100年をさかのぼり、その100年間の日本のトップ100社の業績を分析したのです。
その結果わかったことは、これらの企業の平均寿命が約30年だという事です。

参考文献:『会社の寿命』

中小企業においてもおそらく、それに近い寿命がある、と私は思っています。
だいたい、30年~40年くらい。
30歳代で起業した中小企業は、創業社長が60歳代に差し掛かるところで、会社の業績が伸びにくくなることがけっこうあります。
そのせいか、中小企業の寿命というのは、経営者の体力の衰えなどと関連付けられて説明されることが多いと思います。
しかし、そうだとすると、大企業にも30年という寿命がある事がおかしい、という事になります。

本業率70%を超えると企業は死ぬ!?

本書においては、起業衰退のシグナルをかなり明確につかんでいます。
それは、本業が売り上げに占める割合が70%を超えると会社として存続が難しくなり始めるということ。
大企業ですから、様々なことを手掛けていると思うのですが、本業以外の活動をそれなりに活発にやっていない企業は、長くは続かないのだと言います。

これを中小企業に当てはめてみると、多くの企業は本業比率は70%を超えていると思います。
というより、本業以外には何も手掛けていないという企業のほうが多いと思います。
一方、私の知っている範囲で考えてみると、中小企業が本業以外に手を出し始めるとおかしくなる、という印象が少なからずあります

さて、社員数の多い大企業と、ギリギリでやっている中小企業では何か違う部分があるのでしょうか?

経営者の資質は会社の業績と連動しない!?

ここでもう一つ、衝撃的なお話をします。
心理学者でありながら、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士はこういいます。

相関係数が0.30だとすれば、優れたCEOの率いる会社が相手より良い業績を上げる確率は約60%になるーーーこれでは運頼みの場合より10%高いだけであり、ビジネス書に頻繁に見受けられるCEO英雄神話を裏付ける数字とはいいがたい

参考文献:『ファースト・アンド・スロー』

何を言っているかというと、経営者が会社の業績に及ぼす影響なんて実はたかが知れている、という事。
会社がうまくいくかどうかは、たまたまという偶然の要素が非常に色濃く(つまり五分五分=50%)、経営者の力量はそれに10%程度上乗せされる程度。
全く無力とは言わないものの、そんなにスゴイものではない、というのです。

この話、にわかには信じられない人も多いかもしれません。
実は私自身、なかなか受け入れがたくて、何度も自分のなかで反芻しました。
けど、なんとなく最近は「ああ、そうかもしれない」と思うようになってきました。

よくよく見ていると、有能と言われる経営者は、成功もしているけど数多くの失敗も積み重ねています。
たまたまうまくいったいくつかの例が取り上げられ、神格化されがちですが、その成功例がなければ「とんでもない奴」で終わる経営者も多かったように思います。

プロスポーツの監督がそうですね。
優勝した年は奉られますが、数年後はあまりいい成績を残せずクビになる、というサイクルを延々と繰り返しているように思います。
これも、監督が有能であることには違いないけど、実績に出てくるのは「偶然の要素がかなり大きい」という事ではないでしょうか。

会社がダメになるのは「バカ息子」のせいではない

ここまで見てきたことが仮に正しいとすれば、一つの結論に至ります。
中小企業の事業承継が失敗に終わったとしても、それは、後継者の責任ではない、とういうことです。
良くも悪くも経営者の影響力なんてたかが知れています。
高が知れていることを、あたかも後継者が無能であるとか、バカ息子であるとか、資質がないとか、そんな風に言われるのは心外です。

なのに、なぜ、会社を後継者が潰すかのような言説がまかり通るのでしょうか。
一つは、責任の転嫁先としては後継者が最適なのでしょう。
若くて未熟というのは事実ですし、ごく一部ですが本当のバカ息子もいます。
さらに、ねたまれやすい立場ですから、マスコミあたりは後継者を悪者にしておけば、それなりに庶民の共感を得ることができます。
後継者のせいにしておけば、世間的になんとなく納得感があるし、実際問題後継者は成長しなければいけないので、おさまりがいい。

もう一つ考えられるのは、この分野について、本気で解答を出すつもりの人が誰もいなかったのかもしれません。

しかも、後継者はそういった誤った認識に「NO」を言うより、自分が何とかなればいいと、責任を背負いがちです。
だから過去何十年(何百年?)にわたり、会社がダメになるのは後継者の資質の問題とされてきたのではないでしょうか?

これからはもっと、違う視点で事業承継を見ていくべきだと私は考えています。

後継者育成の罠

何の意味もない根性論と道徳教育

自分が事業を始めて、子どもに事業を継がせたいと考える親は、何とかして子供を後継者に育てたいと考えています。
そして、後継者が育たないのは、厳しさが足りないからかもしれない、と感じ始めるのかもしれません。
しかしそもそも、後継者のあるべき姿というのはどういうものでしょうか?
ここが実はぼんやりしているのです。

親にしてみれば、「自分のコピー」を作りたがる傾向があります。
自分の息子はやる気がない、と言いますが、ヤル気がないわけではなく親のようなやる気の表現方法を持っていないだけかもしれません。
そういう後継者らしさを尊重することなく、自分と同じようにふるまい、表現することを親は求めます。
なぜなら、親の辞書にはそういう行動パターンしかないからです。
だから自分の行動パターンという型枠に後継者をハメないときがすみません。

その結果、根性論を仕込もうとしてみたり、経営者足るもの人としてこうあらねばならぬ、的道徳教育を施したりします。
たしかに、経営者として人間的な成長は、私もとても大事な要素だと思います。
しかしそれは、「道徳的なふるまいを仕方なくする」ことで育まれるものでもないような気がしいます。

いえ、むしろ、後継者にとって道徳教育は害悪でしかない可能性もあります。
たとえば、アップルを育てた故スティーブ・ジョブズ氏は、道徳的なヒトだったのでしょうか?
私が知りえる限り、かなりエキセントリックな一面を持ち、人としての付き合い方は難しかった人物という評され方が多いようです。
そういった尖った部分を残さず調和を重視する教育を施すなら、後継者が経営者として大成するのは難しいでしょう。

そんな後継者教育の良し悪しはともかくとして、もう一度基本に立ち返ってみます。
「会社を存続させる力は後継者の良し悪しではない」という前段の仮説です。
後継者の力量以外に、果たして何が求められるのでしょうか。

会社に寿命が限られる本当の理由

法人化というのは、ある意味、永遠の命を得るべくして手にする魔法の杖。
個人事業から法人化を果たすにあたって、資本を集めたり人を集めると言った目的もあると思いますが、ある程度永続的な繁栄を願うという気持ちも若干はある事でしょう。
しかし、そんな会社も、寿命は30年。
人間より短いのです。

その理由はこれまで、経営者(後継者)の問題と考えてきましたが、「経営者の会社に及ぼす影響は限定的」と言われます。
ならば、何が重要な要素なのでしょうか。
こんな話があります。

企業業績の優劣は、経営者の優劣と同一視される傾向がある。確かに長期的に見れば、企業業績のほぼ九割九分は経営者の実力が決める。それについて、私は全く異論がない。しかし短期的に見れば、経営者の優秀さと、ビジネスの成功は必ずしも一致しない。運よくこれから成長する商品に出会えば、どんなにバカな経営者でも、爆発的に儲かってしまうのである。

参考文献:『60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法』

日本を代表する、マーケッターであり、経営コンサルタントである神田昌典氏はこう言っています。
大事なところをもう一度繰りかえします。

運よくこれから成長する商品に出会えば、どんなにバカな経営者でも、爆発的に儲かってしまうのである。

もしかしたらガッカリされる方もいらっしゃるかもしれませんが、経営者が誰とか、後継者が誰とかという問題も確かに大事ですが、それ以上に、商品について考えてみたらどうなるのか。
こういう視点を持つ人は意外といなかったのではないかと思います。

会社の寿命の本当の原因

もし、会社の寿命=商品の寿命と仮定してみたらいかがでしょうか。
なるほど・・・と思えることがいくつか頭の中に浮かびはしないでしょうか。

たとえば、組織として成熟している大企業の寿命が30年という現実。
さらに大企業が会社の寿命を終える要件として、「本業比率が70%以上である」という事が挙げられるという事。
これは組織や人の問題というより、商品の寿命がきていることをプンプンと感じさせます。
なぜ本業比率が高いかというと、次の時代に提案すべき商品と出会っていないことを表しているのではないでしょうか。

これを中小企業に代入すると、なかなか本業以外のビジネスに手を出す余裕を中小企業はもっていません。
むしろ、本業以外のことに手を出すなど、職業倫理に反するとまで言う人さえいます。
そんな劣勢な環境の中で、新しい商品を開発しようとか、広めようとするサラリーマンはそうそういません。
それを検討できるとすれば、現役の経営者か後継者くらいです。

今の本業の商品が圧倒的なパワーを持っているなら、後継者は別に無理することはありません。
流れに沿って仕事をしていればいいのです。
しかしそうでないなら、やることは一つ。
これから、10年、20年、30年、会社を潤してくれる商品、
あるいは、世に求められる商品を探し出し、開発し、世に出すことです。

ここで、従来言われてきた後継者育成法がありえないほど現実とかけ離れていることがわかるのではないでしょうか。
後継者を親の型枠にはめていては、後継者の役割を果たすことはできません。
後継者を古い道徳観や価値観に押し込めても、後継者の役割を果たすことができません。
これまでは、後継者を活かさない教育が行われていたのではないでしょうか。

会社ありきよりも志ありき

後継者の本当の役割

ここまで見てくると、なんとなく後継者の本当の役割が明確になってきたような気がします。
企業は、よりよい社会を作るために存在しています。
企業自身がそれを自覚していなくとも、そういう方向感でなければ顧客に認められない。
つまり、生きられないはずです。

社会全体のバランスを考えたとき、ある問題が解決されると、その問題解決策は必要なくなることもあります。
たとえば、ポラロイドカメラというものがありましたが、デジカメやスマホカメラがができた以上、ポラロイドカメラの役割はあまり重要でなくなりました。
世の中で必要とされるものは、日々変化するわけです。

さて、事業承継という言葉のイメージからすると、後継者の役割は「(古くから取り扱ってきた商品である)ポラロイドカメラをより安価に、より手軽に改良する」、というイメージが近いような気がします。
しかしそれではなかなか世の中には認められにくい。
ちょっとテイストを変えて、チェキのような立ち位置をとる商品も出ましたが、多くはデジカメやスマホカメラに移行されました。
実は富士フィルムは、かなり早い段階でデジカメを世に出しました。
自分達の商品(写真フィルム)の寿命を短くすることがわかって、あえてデジカメを発表しています。
だから富士フィルムはデジカメ時代にも随分と業績を伸ばしましたが、デジカメを開発していたにもかかわらずフィルムという自分の本業を圧迫することがわかっているので公に販売しなかったコダックはダメになったという話は様々なビジネス書で語られています。

こういった事例から考えると、後継者のやるべきことは新しい商品を世に問うこと。
会社を継ぐとか、そういうことは、その手段、とかんがえると個人的にはしっくりくるような気がします。
こんなことを言うと、反発を受けるかもしれませんが、会社ありきではなく、世の中にどんな影響を与えるかが大事なのではないかと思うのです。

会社を「継ぐ」のではなく志を

冒頭の「部品」の話を少し考えてみたいと思います。
社会の中で、私達の会社は、その一部を構成する部品と考えてみましょう。
老朽化した部品という名の会社がここにあります。

かつては、社会全体を支え、より良い時代を作るために頑張ってきた部品。
この部品の未来について考えてみましょう。
多くの人は、この部品を尊重し「今までがんばってきたのだから、これからもよろしく」とその部品をメンテナンスします。
これはこれで、すごくいいことだと思います。

古い部品を調整しながら、社会全体の中で活かしていく。

実は私はこのやり方を否定するつもりはなくって、そういう道を歩む後継者がいてOKだと思っています。
ただ、ちょっと劣化が来ているので、そこを自覚してその部品のポテンシャルを引き出せばいいと思います。
そういう事が得意な方は、そうすればいいと思います。

一方で、ごっそり新しい部品にしちゃえ、という後継者がいてもいいと思います。

自動車だって、一つの車をいろいろパーツを変えたりしてじっくり付き合う人と、
新しい車を次々と乗り換える人がいるんじゃないかと思います。
それとおんなじで、会社との向き合い方だって、個性が出てきます。

ただ大事なことは、会社を継ぐことが目的になると、すごく視野が狭くなってしまいます。
そして視野が狭くなると、選択肢が減るからしんどくなるんです。
だけど、会社を継ぐのは手段であって、その先に目的があるんですよ、という事になると打つ手は無限になります。
会社という器を使って、「商品」という自分の分身を使って、世の中をどう変えていくことができるのか。

きっと親もそんな思いだったんじゃないかと思います。
会社を育てる事よりむしろ、そういった器を使って、世の中にどんなインパクトを与えられるのか。
その志を継ぐことができれば、手段は何でもいいのだと思います。

今、後継者がやるべき事

2020年3月23日。
今、コロナウィルス騒動で、日本のみならず世界中が大混乱です。
驚くべきことに、このタイミングでリモートワークや、オンライン会議、オンライン講座やEラーニングが当たり前になりつつあります。
社員のお子さんの卒業式では、大人の事情っぽくやってた「来賓あいさつ」みたいなものがすべてカットされていたと聞きます。
今まで、過去の慣習としてあまり意味がないけど、辞められなかったことを、コロナを理由にばっさばっさとカットしている傾向があるように思います。
たぶん、数年かかる変化を、私達は数週間単位で経験しています。

こういう状況下では、これまで以上に商品・製品・サービス・ビジネスモデルの劣化は激しくなる可能性が高いと思います。
なにしろ、昨日まで当たり前だったことが、あたりまえでなくなるのですから。

このような時代の変化のタイミングの中で、後継者が最優先すべきなのはこの商品・製品・サービス・ビジネスモデルの劣化を常に監視し、これらを時代に合わせて調整する、あるいはまったく新しいものと取り換えることが大事です。

大企業では本業比率70%以上になると衰退の傾向が現われると前述しました。
これは、新しい事業への研究やテストがあまり行われていないことを表している、と私は考えています。
中小企業においては、多くの場合本業比率はほぼ100%。
つまり、この本業がダメになれば会社もアウト。
だから、誰もそのことを意識ていないタイミングから、次の商品とであい、育てておかなければなりません。

そのために大事なのは、社内での会議かもしれないし、外での情報収集かもしれません。
いずれにせよ、一人で考えているより、協力者を募るのが一番早いように思います。
もしそんなときに、活用できるなら、と後継者のためのオンラインサロンを作っています。
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