親子間の確執の原因には、もう一つあった!

親子間継承で、「ケンカ」がない事は問題である、という事は以前お伝えしました。
しかし、一方でそのケンカが深刻化し、スムーズな継承を阻害することもあります。
実は、もう一つの「ケンカ」の理由が存在したのです。

私が推奨した、”必要な”「ケンカ」は、あくまで経営戦略に関する問題です。
今後、どのような戦略で、会社を存続、反映させるか、という事では当然のように意見がぶつかります。
なぜなら、生きてきた時代が違うからです。

象徴的な例を挙げてみましょう。
今、中国製品に対する不信感を多くの方が持っています。
食品の安全管理や、公害、いったい彼らは何を考えてるんだ!という怒りをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、程度の差こそあれ、日本も似たようなことをやっていました。
高度経済成長期における、社会を考えてみてください。
大気汚染、水質汚染、土壌汚染に、アスベストやダイオキシン。
ミルクへのヒ素混入や食品がらみの話もありました。

決して、中国だけの話ではなく、たまたまインフラのグローバル化が先に進んだタイミングで、経済発展が一気に進んだのが中国だった、という考え方はできないでしょうか。

何が言いたいかというと、高度経済成長期に会社を切り盛りしてきた社長は、売上が何より大事だとされてきた時代を生きてきた、という事です。
当時に、コンプライアンスなどという言葉は、一切耳にしない時代です。
お客様も当然、正しい手続きより、安く早く多くのサービスを受けられることが優先されました。
個人情報の保護など、売り手も買い手も全く意識しなかった時代を、まさにけん引してきたのが、先代社長です。

その時代の成功体験を持った社長は、時代が変わってもそこに即座に対応するのは困難です。
なぜなら、体に染み付いてしまっているからです。
それを、洗い流すのは至難の業。
しかし、一方で、後継者はすでに高度経済成長期が終わってから、物余りの中で育った世代。
ここで、相容れない感覚の問題が露呈します。

これが泥沼の親子の確執を生む一因となってきます。ここに、解決策はあるのでしょうか?

象徴的な現象

例えば、二世代の家族で食事をしたとします。
その料金はいったい誰が支払うのか考えてみてください。
親が経営者の場合、親が支払っていることが多いのではないでしょうか。
そして、その料金の本当の支払者は誰でしょう。
かなりの確率で、会社のカードや会社あての領収証をもらってはいないでしょうか。

今もなお、税理士がそのような事をするよう指導しているケースも少なくありませんし、それをとがめるつもりはありません。
親子が一体感を持って経営しているうちは、恐らくそれでうまくいくと思います。
他の社員がそのことを知れば、また違った思いもあるでしょうが、経営者ファミリーにとっては普通の事かもしれません。
この程度であれば小さい話です。

では、もう少しスケールを大きくして考えてみましょう。
先代が、自社ビルを建てたとします。
税理士の勧めもあり、会社にお金を貸し付けた形にして、先代は会社から返済金を毎月受け取ります。
こうすれば、返済金なので非課税で毎月先代の懐には決まった額が入ります。

景気の良かった時期の投資で、老後の収入を確保する。
良くできた戦略なのですが、これが代替わりしたときのことを考えてみましょう。
後継者にしてみれば、非常に経済情勢の厳しい時期に入ってきている。
しかし、先代には返済金を毎月返す。
自分は望みもしなかった自社ビルのために、稼いだお金がどんどん消えていく…。

先代にしてみれば、これはおそらく当然のことなのでしょう。
なにしろ、会社をこれまで作ってきたのは先代自身です。
だから、こんな形で、投資を回収するのは当然だ、と。

ここに相容れない行き違いが噴出していることは、火を見るより明らかです。
先代は、会社と自分は一体だと思っています
それは、過去も、これからも。
自分のタイミングで仕事をやめるつもりなのでしょう。

しかし、後継者はそのことをどう思っているでしょうか?

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 自分で作った会社は自分のものか?

創業社長は、自分のライフスタイルと会社をリンクさせています。
さらに、景気の良かった時代、節税の名のもとに個人的な消費を、会社あての領収証で処理する習慣を身に着けています。
個人で消費することを、「もったいない」とさえ言い切る方もいるくらいです。
それは、創業社長が、その会社のオーナー社長として君臨し続ける状況においては、決して間違いではないかもしれません。
しかし、後継者を据え、後継者にバトンタッチした瞬間からは、後継者の財布からお金をせびっているも同然の行為といえます。

少し、言葉が過ぎたかもしれません。

確かに、創業者は創業者の言い分があるかと思います。
自分が、血と汗と涙で、並々ならぬ苦労をして作り上げた会社だ、と。
しかし、それはあくまで過去の話です。
今、そして、これからは違います。

過去、創業社長は、会社から様々な恩恵を受けたのではないでしょうか。
高収入、生きがいなど。
あるいは、退職金も会社から受け取っているかもしれません。
そして、その会社の未来を、後継者に託す、と決めたのではないでしょうか。

 別の視点から、見てみましょう。
例えば、自分が乗っている車、もういらないからと息子にあげたとします。
当然息子さんは、車庫の確保、自動車税や車検費用などを負担していく事になりす。
しかししかし、上げたはずの車なのに、元の持ち主である父親が自分が必要なたびに
「あの車、使うからもってきて」
なんて言っていたらどうでしょう?

誰だってうんざりします。

「いい加減にしてくれ!使うんなら返すから、持って帰ってくれ!」
と怒鳴られるとは思いませんか?
管理は人任せにして、必要な時だけ利用する。
これと同じことを事業承継では行われていることが非常に多いのです。
責任は渡して、権利は握ったまま。
もし、そうだとすると、後継者としては不満がずいぶんと溜まっているのではないでしょうか。

 どこへ向かうのか?

されぞれの立場があり、それぞれの言い分があるわけですが、結局、話し合いでしか解決しない部分が非常に多いですね。
そこで、意識していただきたいのは、そもそも

●何のために事業承継をするのか?

という質問です。

 

以前も少し書いたかもしれませんが、事業承継の理由は様々です。
会社を存続させ、更なる発展を遂げるためという事もあれば、会社という器を利用して、個人としての利益を最大化するため、という理由もあるでしょう。

それを、いいか悪いかと評価することはここではしません。
恐らく、いずれも正解なんだと思います。
しかし、問題なのは、これらの「目的」が隠された状態でいる事なのです。
後継者は、会社を存続させることを目的と据えているかもしれませんし、創業者は自分の利益の最大化を目的としているかもしれません。
もちろん、その逆もあるでしょう。

この目的のずれが、自動車の貸し借りのような事態を生んでしまうのです。

例を挙げて説明しましょう。
表向き、もっともよく言われる事業承継の目的は、「これまで自社を育ててくれたお客様に、現在(もしくはより良い)サービスを変わらず提供し続けるために」企業を存続させること、としたとします。

であれば、まずは今ある技術の継承が必要となります。
創業社長が、「自分しかできない事」はないでしょうか?
これは、早い段階で、後継者に継承しなければなりません。

そして、顧客の継承
創業社長の事しか信用しない顧客はいないでしょうか?
もしそのような顧客があれば、出来る限り創業社長の手から離れて、会社としてそのお客様に対応できる状況が必要です。

すこし細かくなりますが、後継者が社員からの信頼を得る必要があります。
そのためには、創業社長は社内外での存在感を、徐々に弱めていく必要があります。
幾ら役職が、社長から会長になったとしても、創業社長の発する言葉は社員にとって重いものです。
社員に対して、混乱を招かせず、後継者の存在感をステージに上げるために、創業社長は社内での発言を控える必要があります。

また、創業社長が営業をされている場合は、その華々しい成果を後継者が出すように仕向けることも、時には必要でしょう。
自分が称賛されるための仕事をしていては、事業承継はうまくいきません。

そして、私財と会社のお金の混同がないようにする必要があります。
月例コンペなどに会社のお金で行かない。
遊びの要素の多い会合には、有給を取って自費で行く。
会社で登録していく自動車は、名義を自分に変え個人所有に変更する。
会社名義のクレジットカードは返納してください。

これまで、特別な存在だった創業社長は、普通の社員と同じ立場、もしくはそれよりも存在感の薄い状態にしなければなりません。
全ての、権利を後継者に段階的に渡すのです。
そことリンクして責任も渡します。
お金が自由になり、未来に投資できるようになります。
会社の組織運営が自由になり、様々な施策を打つようになります。
創業者の目が届かない状態になると、自身の個性を発揮し始めます。

ここでうまくいかないとすると、責任は後継者にあります。
権利も責任も、全て渡すことでそれが成立するのです。
権利も一部握ったまま、責任を渡しても、後継者に言い訳の機会を残すだけなんです。
早い段階で、全てを渡してください。

もちろん、後継者は転ぶこともあります。
しかし、自転車の運転と同様、体で感じなければ覚えられない事がたくさんあるのです。
まだまだひよっこな後継者も、全てをゆだねられて、支えのない状態になって初めて、真剣に考え始めるのです。

この「目的」にたいした一貫性が最も重要なのです。

逆に言えば、事業承継の目的にずれがあるから親子の確執が起きてしまうのです。

一度こじれた関係を修復するには・・・

とはいえ、この記事を目にされた方は、すでに確執が露呈している状態かもしれませんね。
そこを修復するには、どうしてもコミュニケーションが必要です。
ありがちな、「事業承継の目的」に対するずれは、前段でご説明しましたが、あくまで可能性として多いものをご案内しただけです。
御社には、別の事情がある事も少なくないでしょう。
そもそも、うっせきした「怒り」を開放する、というステップが必要となってきます。
これは当事者同士では、なかなか難しい。

そこで、第三者に間に入ってもらう必要が出てきます。
例えば、会社に長年かかわっていただいている、税理士やコンサルタント。
仲のいいお客様や、同業者。
様々な選択肢はあるかとは思いますが、重要なのはどちらの見方でもない、公平な行司を務められる人でなければなりません。

どうしても付き合いの長い、創業者サイドにつかれることもあり、そうなれば「親父の言いつけを守って、がんばれよ」という結論になってしまい、解決策としては今一つ。

もう一つ、この行司役はセラピスト的な能力があった方が良いのです。
なぜなら、先にも書いたとおり、今既に鬱積している怒りを開放しなければならないので、双方の言い分をただ傾聴していく必要が出てきます。
双方が、双方の怒りを開放して、初めて冷静な話し合いが可能となるからです。
これは非常に骨の折れる作業です。
よほど信頼できる人でなければ、お願いできる役目ではありませんので、常にそういった人がいないか、周囲を見回す必要がありそうです。

もし、どちらかの怒りが爆発したときには、ある意味チャンスかもしれません。
当事者同士であれ、その怒りをただ我慢して聞く。
すると、ひとしきり怒りをぶちまけた後、冷静な話し合いができる可能性があります。
我慢強く相手と向き合ってみてください。
きっと、よくなります。

 

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