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同族経営が優れている3つのポイント

同族経営の会社が、何らかの不祥事を起こすと、マスコミはこぞって同族経営である事が原因だと騒ぎます。
不祥事の場合だけでなく、同族経営というとどこか近代経営とは対極のもののように語られることが多いように思います。
家族のなれ合いと、経営者ファミリーの傲慢。
マネジメントの不在。

彼らの言い分を真に受けてしまうと、とんでもない存在に思えてしまいます。
しかし、PWC調査によると、業歴100年を超える、創業者一族が経営にかかわる企業数は、
欧州6,000社
米国800社に対し、
日本は、20,000~30,000社
存在するといわれています。

果たして、放漫経営の企業が世界的に見て、これだけ長寿であり得るでしょうか?

それだけではありません。

2010年2月に発表されたレポートがあります。
経済産業省が三菱総研に委託した「平成21年度地域経済活性化対策調査(地域経済活性化要因実態等(地域経済におけるファミリービジネスに関する調査等事業))報告書によりますと、ファミリー企業と、非ファミリー企業を比較したとき、ファミリー企業の方が業績が良い、という報告を行っています。

米国における調査では、景気後退期をはさむ時期の動向において、
ファミリー企業は利益の減少は多かったものの、売り上げを伸ばし、雇用も伸ばしているといいます。
一般企業が、リストラを断行するようななかにあって、ファミリー企業は傾向として雇用を伸ばす。
このことは、社会にとってとても重要な位置を、ファミリー企業が占めていると考える事はできないでしょうか?

しかし、一般的に言われるように、ファミリー企業ならではのリスクもあります。
これもまた、目を背けることのできない問題です。
そのリスクを回避する、重要な位置にあるのが後継者である、と私は考えています。

同族経営3つのメリット

さて、ファミリー企業というのは、冒頭にある通り、弊害ばかりなのでしょうか?
とすれば、実績を残すことは難しいでしょう。
当然、ファミリー企業であるがゆえの、強みがあるはずです。
その内容について、具体的に見てみましょう。

  1. 意思決定が速い
    意思決定が一点に集中しているために、経営者単独、もしくは近しい役員で意思決定を行う事ができます。
    また、オーナーと経営者が一致するため、株主の顔色をうかがう必要がありません。
  2. 目指す方向に一貫性がある
    一般的に大きな組織で意思決定をする際に、上司の顔色を窺ったり、株主の心象を伺ったり、様々なバイアスかかるが可能性があります。
    同種の稟議も、上司が変われば結果が変わるといったことは日常的に起こり得ます。
    様々な人間や株主が決定にかかわることで、経営陣の本質的な価値観は薄まりブレが出てきます。
    しかし、決定に関する力が一極に集中することで、全社員はその決定機関だけを意識すればよい事になります。
    つまり、オーナー経営者です。
  3. 長期的視点に立った経営が可能株主は、1年単位での結果を求めます。
    長期的な視野の中で、様々な仕組みづくりや戦略を理解してくれる株主ならばよいのですが、
    上場企業の場合は決算ごとの数字がすべて。
    このことは、経営陣に拙速な結果を求め、経営陣は幹部に号令をかけ、管理職、一般社員へと結果としての数字を短期的に求められます。
    一方、ファミリー企業においては、最終的な成功をイメージすることが可能です。
    3年かかる事も、5年かかる事も、10年かかる事も、一貫性を持って取り組むことができます。
    長期安定政権であるが故のメリットでしょう。これらを総合して考えると、株主としてのメリットと、経営者としての振る舞いが一致することによる、経営目的の明確化が可能となります。

いわば、瞬間的な売り上げを追求するわけではなく、継続的な成長を視野とした経営方針を打ち出すことができます。
経営者は、経営者として、またオーナーとして、未来に責任を持たねばならないのが同族経営と言えそうです。

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 メリットの影にあるリスク

ファミリー企業において、「長期独裁政権」は、上記のようなメリットをもたらす半面、リスクでもあり得ます。
コンプライアンスの問題などは、自浄作用が働きにくい傾向があるのは確かに事実です。
とはいえ、様々な不祥事で、企業の寿命が途絶えてしまう事になれば、経営者としての目的も、オーナーとしての目的も果たすことはできません。

暴走に歯止めが効きにくい形態であってなお、長寿企業が多いという現実を考えてみると、相応のバランスを取りながら経営をされていることが多いのでしょう。

そこは、例えば家訓に近いものがあったり、「三方よしの精神」という事が連綿と受け継がれていたり、ある意味、近代経営におけるのグローバリズムのバイアスを受けず、純日本的な経営に徹している事が要件としてあるのかもしれません。
その背景には、地域との密接なつながりなどが一つの抑止力となっている可能性もありそうです。
老舗企業においては、地域社会とのつながりとは切っても切れない関係を持っていることも少なくなく、そういった身近なところの関係が、数字オンリーの経営とは一線を画する経営の軸を作りだしている可能性もありそうです。

光あるところには、影ができるという事はありますが、その影をうまくコントロールしてきた企業が長い業歴を誇っているのかもしれません。

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   次の30年を担う世代

100年企業とは言わないまでも、現在、事業継承について関心を持つ企業であれば、業歴は、短くても20年~30年くらいにはなるでしょう。
高収益、高寿命の老舗企業の最大の危機の一つが、事業承継のタイミングです。
この歴史を後に続けるか否かは、この世代交代にかかっているといっても過言ではありません。
そんなことから、老舗企業の後継者は海外留学をしてMBAを取得してくる、といったケースも少なからずあるようです。

かつては、MBAと老舗企業の経営スタイルのギャップは、非常に大きかったのではないか、と想像します。
しかし、近年は、MBAの項目の一つに、ファミリービジネス論が加わりつつあると聞きます。
世の中、インターネットで世界の垣根が低くなる一方で、国内が、中央集権から地方分権に変わるという話も出てきています。

そんな中、ファミリー企業という今まで企業形態としては、あまり本流視されてこなかったスタイルが、注目を浴び始めている、という状況は非常に興味深いものに思います。
このような立ち位置で、事業にかかわれることは、面白味のあるものではないか、という感想を持っていますが、皆様はいかがでしょうか。

 

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