親と子の事業承継では、なぜ議論が上滑りするのか?

ある創業経営者にお目にかかったとき、その創業社長はこんなことをおっしゃいました。
「いやぁ、この3年くらいは会社の方針でずいぶんともめました。」
詳しく伺うと、やはり市場の変化のとらえ方が双方まったく違うのです。
そのギャップを埋めていくためには何が必要なのでしょうか。





こんにちは。
中小企業二代目サポーター田村薫です。
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ある商品をご案内するために、企業を訪問したのですが、雑談の中でこんな話が出てきました。
数年前、代表を長男に譲ったものの、会社の方針でそうとうやりあったそうです。

 

創業経営者は、今までのスタイルを貫き、ある程度人を雇い入れ、少しずつでも大きくしていきたい、と考えていました。
後継者である長男は、その業界の未来には悲観的で、むしろ人を減らすべきだと主張しています。
今ある資産を売却し、キャッシュに変えていくような動きをするそうです。
現に、社員は殆ど新規採用はしていないようです。

創業経営者の心境としては、自分が一軒一軒開拓したお客様ですからそのお付き合いを絶やすことは忍びない。
そのお客さんを守っていこうという気概が後継者にない事を憂いていました。
話はどんどんと、後継者への不満話に入っていきます。

「私の感覚としては、息子が他にやることがなくて困っていたから、行くところがないなら自分の会社で働くか?と、息子を助けるつもりで声をかけたんです。しかし、息子はそうは思っていないようで、親のために働いてやってる、という感覚が強いようです。」
そこでは、後継者の方とは直接お話はしていないので、それが事実かどうかはわかりません。

そのことはさておき、市場の読みは先代よりむしろ、後継者のほうが現実的なように思います。
今扱う商品の利幅は、どんどん低くなってきている中で、むやみに人を増やすのは、かなり危険です。
それを感じ取っている後継者は、資産の売却による収入で不動産賃貸などの不労所得を狙っているようです。

 

この二人の価値観は相いれないものなのでしょう。
恐らく、目に見える「行動」だけをなぞっているだけでは、双方の価値観が一本化されることはなさそうです。
そこに、どんな目的があるか。
そういった話がないので、表面上を話が滑っていくだけのように感じられました。

そもそも、会社にはどんな役割があるのでしょうか。
いろいろとお話を伺う中で、先代は自分の作ってきたものを守りたい、という思いを持っている印象を持ちました。
後継者は、その行動から考えると、自分の生活や未来を守りたい、と考えているように推察します。
そうかんがえると、結局、なにかから自分の価値観を守る、という意志が行動に現れているように思います。

つまり、自分のために会社をこうしたい、とお互いが主張しあっているのです。
そういう話をしている以上、恐らくお互いの考えが統一されることは、永遠にありません。
やっている事は、自分が何かしらのメリットを得るための言動なのですから。
わかりやすい言い方をすれば、
「オレは自分の主張を通す。だから、お前は我慢しろ。」
という事を形を変えて主張しているだけなのです。

それが無意識の中で感じ取れるから、親子は関係を悪化させていくのではないでしょうか。

 

事業承継のタイミングに限らず、会社のビジョン・ミッションを明確にしよう、とはよくいわれます。
ミッションや経営理念といわれるものは、自分たちの私利私欲の外に、会社の目的を定めるという重要な機能があるのだと思います。
しかし実際は、そのミッションとは別のところで親子が議論してしまう。
下手をすれば、ミッションを自分の主張を通す道具に使う事さえ散見されます。

これが、家族経営が会社を私物化しているといわれる一般的理解の根底にあるのではないかと思います。

企業が存在する目的は、創業者一族を反映させるものではないはずです。
それは、創業者であれ後継者であれ同様で、世の中があなたたちを富ませたいと思ってあなたの商品を買うわけではないのは明白です。
社会から必要とされる企業であるためにどうあるべきかを考えたとき、その目的を追求するために、わざわざ親子喧嘩をしてまで事業承継を行うわけです。
社会から必要とされない企業においては、その価値さえないのは普通に考えて理解できる話です。

ならば、会社がどうあるべきかは、もう少し広い視点でとらえるべきではないでしょうか。
闘うべき相手は、親でもなく、子でもなく、ましてや競合他社でもない。
会社が何のために存在しているかを考える機会をもたない、視点の低さなのかもしれません。

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