後継者

社員教育の裏と表 後継者が意図する社員教育は回り道になっていないか?

社員教育には、多くの人が頭を悩ませています。
経営者や後継者としては、”こうなってほしい”というゴールがなんとなくある。
どうやら、自分のコピーを作りたい、というのが多くの方がもたれているイメージだと感じます。
そのためには自分が知っている事をすべて、知っておいてほしい。
その思いが、社員の育成の回り道をしているかもしれない、とすれば考えを改める必要があるのかもしれません。


私の著書です。

関心を持っていただいた方は、画像をクリック。

親の会社を継ぐ技術

親の会社を継ぐ技術

 

 

 

 

 

 

■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。

後継者の場合、比較的早いタイミングで中堅社員を飛び越えて出世します。
そうすると、社歴が自分より長い社員を指導する立場になることもしばしばあります。
大抵の場合、先輩であり、部下である人間は、後継者から見るとちょっと残念な仕事ぶりであることが多い。
だから、彼らを教育しなければなりません。

しかし、教育というのは難しいものです。
多くの場合、イメージするのは自分のコピーを作る事です。
自分ができる事は、多少レベルが低くとも、同じようにできて、自分ができないことを少しはサポートしてくれると嬉しい。
とはいえ、自分の存在を脅かすほどに強いのは困る。
非常に難しいサジ加減が必要になってきます。

 

さて、私は社員教育には2つの種類があると思っています。
一つは、仕事における知識や技術を教育すること。
そして、もう一つは会社のミッションやビジョンにたいする考え方の教育。

多くの場合はこれをごっちゃ混ぜにしてしまうのでややこしくなるのですが、社員の育成を考える時この二つの流れを考える必要があります。
表向きは、仕事上の技術が必要だけど、それを裏で人を動かすのはミッションである、という関係なのでしょう。

 

では、表の教育をどう行うか。
これは、実は非常にシンプルだと思っています。
必要なことを、必要なタイミングで教えるという事です。

私の場合、かつて事務社員が一斉に退職し、事務社員ゼロという状態になったことがありました。
その時に、募集した新入社員は全く業界経験のない素人。
保険代理店をやっていますから、顧客は個人あり、法人あり、その他団体あり。
商品種類は100種類を超え、それぞれに必要書類の数量・種類は変わり、システム上も商品ごと全く違う。
商品内容には、聞いたことのない専門用語が並び、彼らにとって日本語には見えないようです。
だから、事務社員をそこそこ使える状態にするには、1年くらいはかけるのが一般的なパターンではないでしょうか。

しかし、当社の場合、その猶予はありませんでした。
さらに、保険の用語さえ理解できない社員をあえて雇ったため、用語を覚えなければシステム入力さえできないのです。
なにより、その事務に習熟した先輩はゼロ。
普段事務を触ることのなかった私が、彼女たちの先生です。

結果、どうなったか。
3か月で一人で留守番を任せられるようになりました。
しかも、辞めた事務社員ができなかったことさえその時点でできるようになっていました。

 

どんな魔法を使ったかといえば、非常にシンプルです。
お客さまからの問い合わせの多い順に業務を教えたのです。
なんだかんだ言って、お客さまからのお電話が入るのは8割が自動車保険に関してでした。
この問い合わせにさえ、回答できるようになれば留守番を任せることができます。
次に、当社において売り上げの大きい種類順に、事務処理を教えました。
たったこれだけの事です。

ある時、メーカー(保険会社)が、事務社員教育のサポートを、という事で人を半日派遣してくださいましたが、その時に教えて頂いたのは、当社において売り上げが10%に満たない商品の事務処理。
きっと、次にその商品の手続きの必要が出てきたとしたら、そこで学んだことのほとんどは忘れ去っているでしょう。

 

営業の教育でも、このようなアンマッチが多発しています。
生命保険を扱う会社では、大口契約を頂くためには、相続対策の話ができなくてはならない。
そうやって、相続税などの勉強をするわけです。
確かにプロとして大事なことだと思いますが、彼の担当顧客のうち、その知識が生かせる顧客は、果たしてどれだけいるのでしょうか。

不思議なことに、1年に1度や2度しか巡り合わない頻度の事に対応するために、莫大な時間を費やしているのです。
何でもかんでも一気にできるようになればいいですが、それは無理な注文です。
まずは、できる事を一つずつ増やしていく方が、学びやすい事は普通に考えてもわかるはずです。

それでもどうしても、何でもできるゼネラリストを育てたくなるのです。
それは、その1年に1度とか、5年に1度の事に社員が対応できなかった、そのことで自分が嫌な思いをした、そんな経験のほうが、できたことより強く印象に刻まれるからです。
ここを合理的に割り切ることで、実務上必要な知識の教育は随分楽になるはずです。
完璧な状態をゴールにするのではなく、日常のルーチンワークを問題なくこなすことをゴールに設定することをお勧めします。

 

一方、”裏”の教育は、断定的なことを言えるわけではありませんが、リーダーの振る舞いが最も重要な要素ではないかと思っています。
会社のミッション、ビジョンにそった行動を社員に伝えるには、そこを評価する土壌が必要です。
保険代理店の話ばかりで恐縮ですが、こういった企業多くは理念やミッションに「お客さまの安心安全な生活」にコミットすることを掲げている事が多い。
じゃあ、お客さまの安心安全のために、防災訓練を企画しました、としましょう。
それを繰り返していれば、給与は上がるでしょうか?
ちょっとしたねぎらいの言葉はあれど、そんな事に一生懸命になっていれば、
「そろそろ仕事しろよ。」
と言われかねないような気がします。

そこのギャップがある以上は、いつまでたってもミッションは浸透しないでしょう。
このミッションと会社の収益の関係をリンクさせることが、後継者の使命の一つといえるのかもしれません。

 

ところで、実は社員教育というのは、非常に難しい事の一つだと思っています。
敢えて難しい事にチャレンジするのも一考ですが、私はそういうタイプではありません。
これは私見ですが、社員を増やす前に、今の人員でできないか?ほかの方法がないか?を検討したうえで、社員を採用するというのがこれからの時代には適しているように思います。
なぜなら、これからますます企業の人員当たり、時間当たりの効率が求められると考えているからです。
先代は、人を増やしたがります。
私自身もまた、そこで先代とは何度かもめたこともありました。
それでも譲れないほど、大きな問題だと思っています。

 


私の著書です。

関心を持っていただいた方は、画像をクリック。

親の会社を継ぐ技術

親の会社を継ぐ技術

 

 

 

 

 

 

 

関連記事

  1. 後継者が自身の成長のためにできる最もシンプルな選択

  2. 組織にとって重要な「トリックスター」を抑えてはいけない!?

  3. 後継者が親である先代に早く会社から引退してほしい時にできる5つのこと

  4. 後継者は優しいだけより、たまには無茶を言ってみる?

  5. 数年でグローバル企業を作る起業家と後継者の間にあるもの

  6. 葛藤を感じたならそれが今の限界であることを知ろう

  7. 動くか、動かないか

  8. 後継者にとって必要なマインドセット(心の在り方)とは?

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。