後継者はけっこうなプレッシャーの中で仕事を覚えます。
すると、目的意識の希薄な人と比べると、あっという間に仕事の精度は高まります。
結果おこるのは、
「自分がやったほうが早い」
「自分でなければならない」
「社員を自分レベルにしたい」
という自分と社員の比較。
社員の育成目標として、自分を一つの基準にしてしまうのです。
これには良しあしがあります。
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後継者というのは、仕事で一番になれ、と言われます。
いわれなくとも、それが普通だと考えます。
だから、非常に意識高く、仕事に対して貪欲です。
その結果、経験の長い社員を追い越してしまうことがある。
だんだんと、孤高の人になって、こんな言葉をつぶやくようになります。
「自分でやったほうが早い」
じつは、創業社長にはこのタイプが多い。
自分自身の仕事のやり方がもっともよくて、違うやり方はNG。
お客さんに対するちょっとした言い回しから、書類の作り方、
作業のやり方から、業者との立ち居振る舞いまで。
一挙手一投足にわたって、ダメ出しをしたがる傾向があります。
ええい、かせ。
自分がやったほうが早い。
そんな風に育てられた(?)後継者も多いかもしれません。
確かに、創業社長も後継者も、意識が高く、仕事ができる人が多い。
それについてくることができない社員をどうしたものかと頭を抱える。
「ああ、自分のコピーがいればいいのに」
そんな風に思う人も多いかもしれませんね。
まあ、個人でやる仕事ならそれがあるべき姿でしょう。
自分がやったほうが早いし正確。
だから自分でやる。
非常にシンプルです。
しかし、人を雇っている以上は、そうも言ってられません。
この場合、一度振り返ってみたいのは、他人の誤りを受け入れられるか否かです。
何が何でも自分の言う通りやらなければ許せない。
ほかのやり方もあるはずなのに、それはまかりならん、と。
そうすると、社内の人たちはどんどん萎縮して、型にはまった仕事しかできなくなってしまいそうです。
実はそれは誤りといっても、あなたの価値観からの誤りであって、本当の誤りではないかもしれません。
ところである時、私はある方にこんな風に言われたことがあります。
「あなた、他人を馬鹿だと思ってない?」
自分が何もかも知っているけど、他人は知らない。
自分が正しいけど、他人は足りない。
一瞬反論しかけましたが、妻のある言葉を思い出しました。
「あなたは、いつだって上から目線」
私はそんなつもりはないのです。
しかし、心の奥底で、正しいのは自分であって、他人は間違い。
その背景には、自分はこんなに勉強している、
自分はこんなに頑張っている、
こんなに経験がある、
そんな自負があるのでしょう。
だから、他人の意見は聞く価値も感じられない。
自分のやり方に従えばいいのだ。
そんな風に無意識に思っていたのかもしれません。
さて、他人の誤りを受け入れられない人。
実は、私と同じ思いを持っていないでしょうか?
経験の浅い彼らが私の言う方法以上にいい方法を思いつくわけがない。
自分よりうまくできるわけがない。
だから、自分のコピーが欲しい。
そう思うのではないでしょうか。
それはもしかしたら事実かもしれません。
しかし、そこで問題が二つ出てきます。
一つは、その部下は成長しないということ。
永遠にあなたの管理(監視?)の下でしか仕事ができない状態。
できたとしても、常にそのクオリティにあなたはイラつくでしょう。
もう一つは、あなたの会社もあなたの能力以上には発展しないということ。
じゃあ、どうすればいいのでしょう。
私に厳しい指摘をくださったメンターの方はこうおっしゃいました。
「人の可能性を信じなさい」
まるで、機動戦士ガンダムのシャアみたいな言葉ですね。
ああ、人の持つ可能性、才能、天才性を開花させる。
このことに集中したらいいのかな。
そんな風に思いました。
その時から、自分の思い通りに動かない人間のことが嫌じゃなくなりました。
イライラすることもほとんどありません。
(まだ完全とは言えませんが・・・汗)
誤りと思える社員の行動が、実は次につながる大きなヒントになるかもしれない。
稚拙と思える社員の意見が、やり続けた結果大きな変化を会社にもたらすかもしれない。
今は小さく見える社員が、そんな経験の中から大きく成長していくかもしれない。
実は、他人の過ちを受け入れられないことは、こういった可能性にふたをしていたんだな。
そんな風に感じました。
そのことで最も恩恵を受けるのは自分です。
器が大きくなるのですから。
人として一段階、階段を上ることになるようです。
そんな折、こんな文章に出会いました。
初めてリーダーになった人へ。
リーダーになる前、成功とは、自分自身を成長させることだった。
あなたが達成したこと。
あなたの業績。リーダーになると、成功とは「他人を成長させること」になる。
あなたの下で働く人たちをそれまで以上に賢く、大きく、大胆にさせることだ。
個人としてあなたのすべきことは、チームを育てサポートし、彼らの自信をつけさせること。
それ以外は何もない。リーダーの成功はあなたが毎日何をするかではなく、あなたのチームが輝かしい業績を上げるかどうかで決まってくる。
ジャック・ウェルチわが経営(ジャック・ウェルチ)
きしくも、1000年続く会社を作るコツを、船井幸雄先生はこういっています。
「良い人を作ること」
そして、世界最古といわれる企業、金剛組もまた、
「自分で考えることができる人を育てる」
ことをとても大事にしているようです。
あなたのコピーを作れば、短期的には会社は効率的に動くかもしれません。
しかし、長期的な発展を考えるなら、非効率でも人を育てる必要がありそうです。
その時に大事なのは、リーダーが自分の器を広げるよう意識すること。
創業社長が、先代が、やりきれなかったこと。
それは、人の可能性を開花させることだったのかもしれません。
日々の経営に追われて、効率だけを求めざるを得なかったこれまで。
しかし、ある程度会社が形になった今、それをできるのは、あなた以外にはいないのではないでしょうか。
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