後継者

平面視点に高さを加えると生まれるもの~後継者が会社の将来を考える際にお勧めの立体思考

前回の記事、起業家が欲しくても得られない、後継者が持つ利点では、新たなカーブを作ろう、とご提案しました。
とはいえ、そんなことすぐに思いつくわけもありません。
はい、おっしゃる通りです(笑)

さすがに、「誰でもできる企業革新法」なんていうものは私の知る限りありません。
しかし、ちょっとした視点の変化で、今まで見えなかったものが視えてくることはよくある話です。
今回は、今までのビジネスを礎に、どのように新たなビジネスの種を見つけていくかという視点についてお伝えします。


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親の会社を継ぐ技術

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平面で展開する会社改革

視点を変えずに事業を変える

事業の改善・改革を考える時、すぐに頭に浮かびそうなのが、商品やサービスに大きな変更を加えることなく、

  • 売り方を変える
  • 売る相手を変える
  • 売る場所を変える

といった方法です。

恐らく、短期的に効果が出やすいこともあるのと、やり方を工夫することでコストを抑えながら試行錯誤ができるので、比較的手軽に手が付けやすい部分ではないでしょうか。

そのほかにも、

  • 商品ラインナップを増やす
  • 値段を変える
  • 利便性を高める
  • 専門性を高める

といった考え方がありそうです。

ライバルを研究する意味

さらに、よくあるのが同業他社を研究するパターンです。
手っ取り早く応用できそうな事例が見つかりそうなので、好まれる方も多いようです。
例えば、競合社が新たに○○を商品として扱い始めたからうちも、
競合社が××なサービスをスタートさせたからうちも。

後れを取らないためにも、決しておろそかにできない部分かもしれません。
但し、気を付けなければならないのは、外から見えることは重要でない事が多いともいえます。
今となっては笑い話ですが、かつてヤマト運輸が「クロネコ」をキャラクターにして快進撃をしていたころ、運送業界では「動物戦争」と言われたくらい多くの運送会社がキャラクターに動物を採用しました。
ここでは詳しく書きませんが、その実態は皆さんの想像通りキャラクターが動物か否かはあまり関係なかった、というのが一般的な評価です。

危険なのは、多くの業界において業界全体が沈んでいる中、ロールモデルを業界に持つのは業界とともに心中する可能性もないとは言えない、という部分にもありそうです。

二次元戦略

こういった考え方を、私は勝手に二次元戦略と呼んでいます。
二次元といえば、「面」です。
平面上での戦略という意味でこう呼んでいます。

視点としては、今ある商品やサービスの延長線上に解を求めるイメージです。
既存商品をいかにに広めるか?
既存商品の中でいかに差別化を行うか?

この方法は、市場が拡大しているときにはかなり効果を発揮してきたようです。
問題は、市場が縮小しているケースです。
こういった平面的な戦略は、どちらかといえば
市場でのシェアをライバルから奪う事が主眼となることが多く、新たな市場を生み出す可能性が低い
と考えられますから、短期的な効果と割り切っておいたほうが無難ではないかと思います。

平面

視点に高さを加えるとどうなるか

三次元で考えてみる

平面で考えても、妙案が出ない。
そういう時に試していただきたいのは、視点を上げてみる、という事です。
抽象度を上げると言い換えてもいいかもしれません。

第一階層

少しわかりにくいと思いますので、具体的な例を挙げて説明します。

私は長く「保険販売」の仕事に携わってきました。
この業界ではこれまでこのような工夫や変化がありました。

  •  単品販売からコンサルティング販売へ(逆に通信販売という手段も試されました)
  • 訪問販売だけでなく店舗販売が行われるようになりました。
  • 多品種の保険商品を扱う業者が増えました。
  • 専門性の高さをアピールする業者も多くあります。
  • 夜間や祝日に電話が通じるようにしているところもあります。

これらは、体感したお客様にとっては「なるほど、良くなったな。」と思えるものかもしれませんし、商品の多様化だったり、利便性の向上でこれまで保険に見向きもしなかった人を振り向かせるきっかけは提供しているかもしれません。
しかし、新たな市場を創造するといいきるほどの効果は、あまり多くはなさそうです。

これを仮に「第一階層」と呼びます。
ここまでは二次元戦略という事になります。

第二階層

さて、ここで高さを加えた視点で考えてみましょう。
ここでは、自社がどんな価値提供を行っていたかに着目します。

すこし、今扱う商品・サービスからは離れて考えるのがコツです。
例えば、保険販売をしている私の会社のケースですが、父の代に創業したわけですが、その時の状況を私が父にインタビューしてみたことがあります。
そもそも、私の父は保険の販売の中でも、自動車保険や火災保険に代表される損害保険という種類の保険の扱いからスタートしました。
お客様の多くは法人です。
そこで、何を提供していたかと紐解くと、保険に関する情報の整理を請け負うような形の事をやっていました。
つまり、総務の代行業といっていいかもしれません。

もちろん、そんなに立派なビジネスモデルを作っていたわけではありませんが、総務担当者の負担になる仕事のうち保険にかかわる部分を引き受け、その利便性にお客様が喜んでいただき、お付き合いただいたという背景があるようです。

そこを発展させて考えると、例えば保険という商品を扱うという前提だったとしても、
「ターゲットとなる中小企業の総務のサポートのために、複数保険会社の保険比較のレポートを有償で出す」
「総務が困りそうな労務・法務・税務などをパッケージ化したサービスを検討する」
「総務が数値で表せる成果を出せるような、コスト削減メニューを持つ」
といった展開が考えられそうです。

コツは、今持っている商品・サービスをいったん忘れて、お客様に喜んでお金を払っていただける商品・サービスは何か、
今お客様が本当に困っていることは何かを考えてみることです。
ともすれば、長年扱ってきた商品・サービスに強いこだわりを持つ人が多いようですが、そこに縛られると新たなアイデアはなかなか見えなくなります。
さらに、まずは現実可能性は脇に置いておいて、思いつくアイデアをどんどん出してみると、何か引っかかるものがあるのではないかと思います。

第三階層

さらに階層を一つ上げて考えてみたいのは、こういう事です。
そもそもあなたは何のために事業をするのか?
という事です。
事業を通じてどんな未来を作りたいか?
と言い換えてもいいかもしれません。

企業というものは、世の中に何かしらの価値が認められているからこそ存在しえるものです。
しかし、世の中の価値は変わりつつあります。
モノの消費から、コトの消費に変わっている、という話はいろんなところで耳にしますが、モノを作って売るだけではもはやその価値を求められにくくなりました。
むしろ、そのモノを通じて、世の中にどのような影響を与えたいか?というイメージを持っておきたいものです。例えば、私が父から引き継いだ保険の販売会社では、こう考えました。

保険がまだまだ普及していなかった時代は、その普及を通じて事故や災害で困る人を減らしたい、と考えて活動してきました。しかし、今、保険の普及度はかなり高まっています。
一方で、お客様の真の願いを考えたとき、事故で苦しい立場になって提供されるサポートよりむしろ、事故を起こさないこと、病気にならない事が本来的な望みではないだろうか、と考え始めました。
そういったサポートをお届けするうえで、それでも避けきれない事故や病気に関しては保険がありますよ、という最後の砦として保険商品を位置付けよう。
医者が本来望むべくは、病気がこの世からなくなり、医師という仕事がこの世からなくなること。
私たち保険屋もまた、同じところを目指さなくてはならないのではないか。

いかがですか?
大それた発言ですね(笑)

けど、それでいいのだと思います。
夢物語でOKだと思うのです。
しかし、そこがおぼろげながらでも見えなければ、視点はぐらついてしまいます。
こういった大きなミッションから、現実の活動の選択を行うようになると、随分と行動が変わってくるものです。

レイヤー

視点が変わると行動が変わる

 今は「仮」でいい

視点を変えてみようと思ってもうまくいかない。
そういったことは、多々あると思います。
長年、頭の中を占領してきた視点や思考を、ある日一気に変えるというのは難しいものです。
どんなに稚拙なものでもいいので、まずは第二階層、第三階層として、自分は、自社は、どういう解決策を提示するのだろうか。
そういったことを自分に問いかけることが重要です。

そこでいい思い付きがなければ、「仮」のイメージを持ってみてください。
「これじゃないよなー。」と思うようなものでも、一つ設定しておけばそこが基準になり、次第に本当の想いとのギャップがどこにあるかが明確になりやすくなります。

そうやって「仮」のミッションとの疑問点が出てきたとき、都度都度変更していけばいいのです。
初めから完璧を目指す必要はありません。
何かのタイミングで、「これかも」というものが出てくると思います。

具体的なプラン

こういった思考をし始めると、今まで見えなかったものがみえるようになってきます。
しかし、どんな業界も、多かれ少なかれ業界のしきたりというものがあります。
専門性の高い業界は特にその傾向が強いのですが、お客様の要望より、専門家としてのこういった意見が正しい、という風潮であったり、業界のルールありきでお客様に不便を強いていたり。

こういったケースでは、お客様の利便性よりむしろ、業界全体がお上のほうを向いて仕事をしているケースが少なからずあります。
業界内から、その業界を革新するようなアイデアが出にくいのもまさにここで、その思い込みを排除するのに高さ(抽象度)をあげた思考はかなり役に立つと思います。
しかし、これを一気に変えようとすると、様々なハレーションが起こります。
ですから、物事は慎重に行わなければなりませんが、考え方としてユーザー・ファーストの意向を常に意識する必要があるでしょう。
そのユーザーの不便と、業界のルールの隙間にビジネスチャンスは結構あるものです。

この思考に伴うリスク

同業者仲間からは浮いてしまう

こういった思考をすると、ほぼ間違いなく、同業者の仲間からは浮いた存在になります。
社内の人間もまた、首をかしげてしまうかもしれません。
ですから、相応の覚悟が必要です。

社内外で口にするのは、少し注意が必要ですので、段階を追って考えていくといいでしょう。

しかし、一方で、ほとんどの業種業界で、その垣根は溶けだしている現実を皆さんは目の当たりにしているのではないでしょうか?
私の良く知る保険業界もまた、様々な業界からの参入者が出てきて、混とんとしている状態です。
逆に言えば、従来の思考(第一階層のみの思考)では、今後の先行きはあまり明るいとは言えないのではないか、と私は考えています。

それが見えるのは、後継者だからこそ、といえるのではないかと私は考えています。

こういった「孤立」のみならず、それぞれの業界の既得権益を持つ者からの反発も予想されます。
業界内の事情はそれぞれでしょうから、その辺の事情を勘案しながら表現方法を検討していく必要はあります。

自社が提供している価値がない

他所で作った商品を、単に売っているだけ。
そんな業態の場合、第二階層での「どんな価値提供をしているか?」という質問への回答は寂しいものになるかもしれません。
もしそこに、販売会社としての価値提供ができていないとすれば、がっかりしてしまうかもしれません。

一例をあげると、何の特徴もない街の小さな書店。
雑誌はコンビニで買えるし、そこそこの本なら大規模書店かAmazonで。
そういった顧客の流れのなか、次々と個人経営の書店はつぶれていきました。

しかし、今面白い書店も随分できてきているようです。
「ツウなラインナップの書店」「泊まれる書店」「店主による選書」などの価値を際立たせて、来店数が減らない書店はまだまだあるようです。
これはまさに、第二階層の部分を純化したケースといえるでしょう。

今思いつくものがないとすれば、そこを強化すればいいのです。
なにか、エッジを効かせる部分がないか、考えてみてもいいですし、今から作ってもいいのではないかと思います。
他と同じではない何か。
その種を探してみてください。

後はやるだけ

こういった層別思考を取り入れたとき、ふっと頭に浮かんだものを「いやいや、こんな事ではないだろう」と否定しないよう、上手く引っ張り出してみてください。
その思い付きがそのまま実現するかどうかはわかりませんが、小さく始める工夫はできるかもしれません。
それがどんなに突飛なことでも、まずは世に問わなければ価値はわかりません。
商品やサービスを選ぶのは私たちではなく、お客様です。
小さなトライアルをやっていく中で、きっと何か大きな戦略が浮かび上がる事でしょう。
試行錯誤を恐れることなく、実践してみてください。
成功をお祈り申し上げます。

 


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