創業者

事業承継の計画と中小企業内の規律 ~「社長が法律」のメリットとデメリット

事業承継を行うに際して、「事業承継計画が大事」というのは良くある話。
しかし、現実に目を落としてみると、果たしてそれは意味のあることか?と思うことがあります。
なぜなら、多くの中小企業において、社長は法律。
社長が完全にコミットできない計画には意味がありません。
そして現実においては、退職年齢を決めたところで、それを守る創業社長は決して多くないという事です。

計画はないならば期待はしませんが、計画があれば期待があります。
その計画通りに動かそうとするという期待です。
しかしその期待が裏切られることが多いので、みな苦しむのではないでしょうか。


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中小企業の中の規律

組織の違いによるマネジメントの違い

大企業の場合、組織はいくつものピラミッドが集まり、最終的には社長を頂点とするピラミッドに権力は集中します。
ただ、社長と言えども逆らえないものがあります。
それが株主。
また、取締役会など、決して独断と偏見で経営できる組織ではないことが多いと思われます。

大企業と言われるほどに組織が大きくなると、たとえ社長であったとしても、一人の判断で全体を動かすのはとてもリスクが大きい。
そして、組織が組織の体をなすために、とても強いエネルギーが必要で、それは社長一人のエネルギーで賄うことは難しい。
結果として、組織の人間同士のつながりとルールで組織が形成されていきます。

又暗黙の了解、忖度など、組織そのものが特有の意識を持ち始め、人ひとりの考えではどうにもならない形になっているケースが多いと考えられます。
一方で、中小企業の場合は、社長のカリスマと号令で組織が成り立っています。
それは、ルールより社長が上にいるという事。

シンプルにまとめると、大企業は社長と言えど、社内規範の中での活動となりますし、
中小企業は、社内規範を超えたところに社長がいる、という違いがあるのではないでしょうか。

組織の違いによるメリットとデメリット

大企業の場合、仮に社長の選択を誤っても、様々な安全弁があるため、いきなり無茶苦茶な組織になることは少ない。
社長と言えども、守るべきルールがたくさんあるからです。
一方、中小企業の場合は、それがありません。だから、重い通りに組織を動かします。
これは、大胆な決断がすぐにできるという利点があります。小回りが利くのです。
しかし、一方で、ワンマンであるが故、社長の好みで会社の運営が決定されます。

それは場合によっては社長の思い込みで行われる経営かも知れませんし、間違いも多いかもしれません。
逆に、尖った戦略として、世間の耳目を集めることがあるかもしれません。
いずれにせよ、良くも悪くも社長個人の個性が活かされるという事ですね。

事業承継計画と社長

規範を遵守する社長としない社長

さて、社内の規範・ルールというのはどうやって守られていくのでしょうか?
非常にざっくりまとめると、「周囲の眼」だけが、規範を守らせる強制力ではないでしょうか。
大企業の場合は、ルールを破ると、目撃者がたくさんいます。
それは社長の場合も同じで、部下、役員、そして記録に残れば株主や、社会全体にその振る舞いが公にされます。
あからさまなルール破りは、こういった社会の監視の中で行わざるを得ないため、大企業の社長がルール破りをするのはとてもハードルが高い。

しかし、中小企業の場合は一部の役員と社員。
ある意味、彼らに対しては社長は絶対的権力を持っていることも多い。
何しろ直接的な人事権を握っているのですから。
これらの威光を考えると、社長に意見できる人などそうそういません。
すると、規範・ルールは、中小企業の社長にとっては本当に小さなものになっています。

後継者の意識と先代の感覚のギャップ

一方で、後継者はどちらかというと、会社を大企業並みの内部統制が効いている状態にしたいと思う人が多い。
そもそも規範・ルールはリーダーが率先して守るべき、と考えている一面もあるでしょう。
つまり、後継者はこういった規範・ルールは社長であっても守るべきだと考えます。
だから、先代・社長にも当然守ってもらいたい。いえ、守るのが当たり前と思っています。

そして、社長にはそんな期待を抱いています。
だから余計に、その期待を裏切られた時のショックは大きい。
一番多いのは、先代社長が「ワシは65歳で引退する」なんて言うことを言っていて、65歳になったら生涯現役だ、なんて言い出したときには相当な怒りを感じるというパターン。
正確には、
65歳で引退するが、70歳まで頑張るになり、
70歳になると、まだまだ75歳まではやるになり、
75歳になると生涯現役、と言い出すのが基本パターンです笑

先代社長に規律を守らせたい?

一番難しいことをやろうとする後継者

実はワタシも同じような環境にありました。
そしてなんとか、先代が早く引退しないかと、色んなことを画策しました。
先代が辞めないなら、自分が辞めるしかないのか、なんて思ってとりあえず新しく会社を立ち上げました。
しかし、どんなに手を尽くしても、先代を動かすことは難しい。

ある後継者仲間は、ムリヤリ会社から先代を追い出したそうです。
何が起こったかというと、先代が認知症を発症し、携帯で毎日いろんなお客様のところや事務所に電話をかけまくるとか。
たまりかねて、施設に入れ、携帯電話を取り上げた何てエピソードもあります。

人の意識や行動を変えるというのは本当に難しいし、親子だけに強引すぎる手も何かと問題を引き起こしがちです。

後継者がしっかりすれば…

さて、実は、ルールで人を縛ろうとしても、100%完璧にそうなることはあり得ません。
ましてや、サラリーマンでは飽き足らなかったのが中小企業の社長です。
自由にやりたいから経営者をやっていたわけです。

そんな人をルールで縛ろうというのがかなり難しい話。
だから、いっそのことそういうことをあきらめてはどうかと思うのです。
確かに先代社長が勝手ばかりやってたら、色々困ることはあります。
けど、それで伸びてきた会社であることは事実。
だからそんな先代社長の勝手なふるまいもマルっと受入れられたら、けっこう強力なんじゃないかと思うのです。
社員からしても、そんな後継者の器の大きさをみていると、きっと後継者のカリスマを感じ始めるのではないかと思います。

ある環境を最大限に活用する。
それが後継者としてできる最もシンプルで有効な方法ではないでしょうか。

 


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