親子経営の後継者と先代の対話はなぜケンカで終わるのか?

何かを変えたい後継者と、自分流を通したい先代。
とかく、親子経営では親子の争いが絶えません。
しかし、親子で話し合おうとすれば、結局ケンカになって物別れになる。
その争いの原因と、対処法について考えてみましょう。

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「説得」という対決

親子経営での親子の会話

少し振り返ってみてください。
最近交わした、親子の会話を。
思い出すのは、会社の今後のことかもしれませんし、
営業方針や、商品開発の方針かもしれません。
そういった個別具体的な部分を置いておいて、この一つに集中して考えてみてください。

その会話は、自分の考えを相手に説得しようとしていませんでしたか?

意外と意識していないことが多いのですが、説得という行為について考えてみましょう。
説得とは、自分の考えを相手に伝え、説き伏せることです。
もう少しはっきり言えば、相手に、「自分の考えに従え」と強制しようとする行為です。

「説得」は「服従」を求めている

この説得という行為、なんとなく民主的なイメージを持ちがちですがどうもそうとは言えないような気がします。
相手の考えを曲げて、自分に従えと言っているわけなのですが。
相手が素直に「なるほど、たしかにあなたの言うとおりだ」となれば問題はありません。
しかし実際は、そういかないから親子の確執に発展するわけです。

じゃあ、相手は、絶対に曲げることができない考えを持っているのでしょうか?
そうだと言えることもあるでしょうし、そうでもないこともあるのではないかと思うのです。
要は、親なり子の考え方が気に入らないというより、服従することを拒んでいる場合だってあるのではないでしょうか?

つまり、論理的な議論で始まったかもしれない話も、いずれエキサイトし始めると「小さな権力争い」が勃発している可能性があります。
先代と後継者の対話は、お互いが「自分の権力を保持する」ために行っている権力闘争となっている可能性があります。

親子経営における権力闘争の行き着く先

先代の主張、後継者の主張

こういった権力闘争において、親である先代としてはこんな思いがあるのかもしれません。
・自分は親である
・自分は子供より経験豊かである
・自分はまだまだできる
・子のために残した会社である

一方で後継者は心の奥底ではこんな風に考えているかもしれません。
・自分は親のために会社を継いでやったのだ
・自分は親より勉強している
・自分の力を試したい
・いつまでも子ども扱いしないでほしい

相いれないお互いの主張がもととなって、お互いが天下をとろうとする。
そうなると、目的は相手を打ち負かすことです。
相手の一番弱い部分を狙い、傷つけ、苦しめ、相手が譲るまで攻撃をやめることはできません。
このような闘争を続けるうちに、個別の考えの違いから、相手の人格否定に入っていくのでしょう。
もはや、理で分かり合えるはずもなく、情動の赴くままに相手を攻撃する。

それがエスカレートすると、先代は後継者をクビにするかもしれないし、
後継者は会社を飛び出してしまうかもしれません。

火に油を注ぐものの言い方

このような状態になってしまったとき、お互いがお互いの主張を通そうとするとまさに火に油を注ぐ状態になります。
たとえば、後継者がこういったとします。
「今の時代、会社の組織は今までのようではだめた。組織から変えていかなければならない」

これを対立軸にいる先代は、きっとこんなニュアンスで受け取るでしょう。
「あなたのやり方は古い。あなたのやり方を改めなければならない」

もはや、先代が受け取る言葉は自分への非難です。
一方、それにこたえて、先代は後継者であるあなたにこういったとしましょう。

「組織を変えて何になる。それよりまずは、お前がもっと強いリーダーシップを持つべきじゃないのか?」

後継者はそんな言葉を聞いてこう思うでしょう。
「俺のいうことをことごとく否定して、まったく聞こうとしないし、世の中が見えていない。先代は俺の邪魔ばっかりする」

後継者にとって、自身のリーダーシップに絶対の自信を持っているわけではないことが多い。
もはや、リーダーシップを持ち出した時点で、自分への批判にしか聞こえなくなってしまいます。
そうすると売り言葉に買い言葉。
問題はどんどんエスカレートしていきます。

問題を棚上げにして対話は終了

議論が紛糾すると、とりがちな行動は三つです。
怒りを爆発させるか、立ち去るか、自分を抑えて服従するか。
そうやって対話は終了です。

この中のどの選択肢を選んでも遺恨が残りますが、「服従する」というのが最も良くない、と臨床心理学者のトマス・ゴードン博士は言います。
これを繰り返すことで、受け身で、依存的で、自発性のない人間関係が創られていきます。
先代経営者が後継者を評して、「線が細い」と言っているとすれば、それは先代経営者がそういう環境を作っていることになります。
権力を伴う”指導”で後継者からヤル気を根こそぎ奪っていることになります。

とはいえ、会社で働いている以上は、後継者も大人でしょう。
大人である以上、自分自身の在り方を表現する方法を学ぶ必要性はあります。
何もかもを親のせいにはできない年齢であることは、大事なことだと言えるのではないでしょうか。

壊れかけた親子関係を修復するための第一歩

親子は本当に対話をしてきたのだろうか?

ここで振り返ってみてほしいのです。
親子関係では、少なくとも学生時代は親が支配的な立場をとることが多いと思います。
つまり、対話というより、親による子への圧力です。
親はそのつもりはなかったとしても、子から見ればたとえば「宿題やったの?」という言葉は、「やったかどうかを聞かれている」言葉ではなく、「早くやるように」強制されている意味合いを持つことが多いでしょう。
ベースにそういう人間関係があるわけです。

親はよほど意識しなければ、子どもが大人になってもその関係を継続します。
子どもである後継者にしては、そもそもその(親はそのつもりはなくとも)強制的な物言いで対話が成立しにくくなっていたのではないでしょうか?
親のいうことを、子が聞く、という人間関係が前提にあります。
これをいったんフラットにしなければ、親子の経営などできるものではありません。

そこで問題の切り分けが必要となってきます。

何を話すかと、どう聞くかの責任は別々である

たとえば、先ほどの宿題の例。
親は、「宿題はやったのか?」と聞きます。
この発言自体は、親の行動であり、親の責任です。

そして、この言葉をどう受け止めるか。
たとえば、単に宿題の進捗状況を聞かれただけととらえるか、
早くしなさいとせかされているととらえるかは、
子である後継者の責任です。

逆に、後継者である子が
「ほっといてよ」
と返したとすれば、その言葉に対する責任は後継者がもつ。
その言葉を聞いた親である先代が、
「心配してやってるのに」
という自分の気持ちをないがしろにされた、と感じるのは親の責任です。

わかりますか?

この問題を切り分けをせずに、「宿題をやったか?」と聞く親を干渉しすぎ!と怒るのは子供の勝手。
だから、干渉されたことで親に怒りをぶつけるのは筋違いなわけです。
「心配してやってる」親は、勝手に心配してるわけです。
ですから、その心配に報いる責任は、子どもにはないという考え方です。

意外とできていないコミュニケーション

対話の中で出てくる話を、自分の問題と相手の問題に分けてとらえられるようになると、比較的落ち着いて相手の話に耳を傾けることができるようになります。
その場合、気を付けたいのは、「相手の問題を自分の問題としないこと」です。
たとえば、親が心配して宿題しなさい、と言ったとするなら、心配するのは親の問題です。
そこに忖度して、親に心配かけないように宿題をする、ということであればこれは親の心配を自分が引き受けることになります。
結果として、親は後継者である子に依存します。
すこし厳しい言い方をすれば、そこまで配慮しようと”無理”をするから問題が余計にややこしくなるのです。
原則として、相手が勝手に気にかけていることは、相手が解決すべき問題です。

そういった形で、ある程度感情的にならない状況を作ったうえで初めて対話が可能となります。
そこで思い出していただきたいのは、相手の言いたいことを本当に聞いていただろうか?ということです。
自分の意見を通そうとするばかりに、相手の言葉をしっかりと受け止めていない、ということはないでしょうか?
相手が話しているあいだに、自分はどう反論するかを考えていたり、
相手が話をするのを遮って、自分の言葉を怒りを込めて発言していたりはしないでしょうか。

往々にして、親子経営での親子の対話は、ほとんどの場合が双方の一方通行です。
つまり、対話は、相手を打ち負かすことが目的になっていることが多いのです。
相手の言葉を受け止めることなくして、まともな話し合いなどできるはずもありません。
そして、起こるべくして親子の確執が起こるわけです。

しかし、「聞く」ということをはじめ、相手が「聞いてもらえている」という状況ができれば、お互いにわずかな余裕が出てきます。
今までは相手の上げ足をとるため、常にスキを見せまいとしていた態度が軟化し始めます。
その時に、お互いがぶつかる部分を、別の案に置き換えるなどすることで方向性が見える可能性が出てきたりするものです。

まとめ

親子経営における親子の会話は、多くの場合が相手を打ち負かし、相手の意見を自分の意見に塗り替えることが目的になりがちです。
結果として、双方が自分の意見(というよりメンツ)を守るため、かたくなになり、争いに至りがちです。
こういった根深い感情があるため、本稿では書いてませんが別の記事では、親子の直接対話を私はあまり積極的にはおすすめしていません。
しかし、状況によっては、また、最終段階においては、この直接対話が必要となる事があります。

その時のコツとしては、
・問題の所有者を切り分ける
・相手の話を聞く
・双方の意見とは違う案を創出する努力をする
といった事をお伝えしました。

あくまでコミュニケーションの入り口に過ぎませんが、これだけを気を付けるだけでもずいぶんと雰囲気が変わってくる可能性は高いと思われます。
ぜひお試しいただければと思います。

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