後継者が同業他社から学ぶことで負う5つのリスク

業界内での横のつながりが存在する業種も少なからずあるようです。
交流のある同業他社がいたりすると、そこの優れた部分を参考にすることもあるでしょう。
それ自体は悪い事ではないのですが、気を付けなければならない点もあることを留意する必要があります。

今回は、その留意点について考えてみたいと思います。

同業他社のマネをする。
そうすると、同じ仕事をしている別の企業ですから、すぐに使えるノウハウがあるようにも思えます。
私自身も、若いころは様々な同業他社を参考にするために、オフィスに訪問させていただくことがありました。
しかし、あるタイミングからそれを原則として行わないように意識しています。
そこには私なりの理由があります。

その理由を、まとめると以下の通り、5つのリスクがあるからと考えています。

(1)自分の力にならない(常に後追いになる)

同業他社の事例は、確かにすぐに使えて成果も上がりやすい可能性があります。簡単に言えば、頭を使わずともマネができてしまう事になります。
その時はそれでよいのかもしれませんが、それを改善するアイデアも出せなかったり、次に出てくる問題に対処するという事を考えるより、どこかの事例を探し求めるクセがついてしまいがちです。
学生の勉強などでも、問題を解く努力をせず解答を書き写しても自分の実力にはなりにくいのと同様、経営に関する力を養う問題対応能力をいつまでたってもつけられない可能性があります。

(2)部分最適に終わってしまう可能性が高い

同業他社とはいえ、創業当時の想い、顧客の構成、商品の構成、社員の個性、経営者の個性など、バックグラウンドはかなり違う事が多いと思われます。また、一つの問題は他の問題と連動していることも多く、こういった問題の連鎖を考慮した施策を他社から丸々まねできる可能性は決して高いとは思えません。ひどい場合には、表面的なことだけを取り入れて、本質的な部分を見逃しているケースも散見されるようです。そういった事を考えると、同業とはいえ他社の事例が本当にあてはまるケースというのは、現場のごく小さな作業に集約されることが多いのではないでしょうか。

(3)同業他社のマネでは未来の話がない

多くの場合、同業他社の事例を参考にするとすれば、それは「現在上手く行っている方法」であることが多いと思われます。ここには、未来にわたって成果を出すための戦略については、欠如していることが多いと考えられます。現在の作業の最適化に参考となる事例についてはいくつか見つけることができるかもしれませんが、それに満足していると未来の事がおざなりになる可能性があります。

(4)差別化をしにくい

経営学者である楠木健教授は、差別化とは「他社との違いを作る事」と明確に言い切っておられます。そう考えると、他社と歩調を合わせることになりがちな同業他社事例を参考にする、という行為は差別化して自社の特徴を作る事と真逆の行為になりかねません。イノベーションといわれる経営改革の中でも、何気なくやっている作業を根本から変更することで、ビジネスの仕組みを大きく変える事例も少なからずあります。となると、同業界の中での常識的な流れを見直すことこそが、差別化の第一歩と考えられます。そういった考え方から見ると、同業他社のマネをすることは、他社の追随という位置から抜け出せない可能性が高いと思われます。

(5)社内で問題解決を行う流れを作りにくい

自社内の課題を自社内で解決する事が、本来の組織の在り方だと思います。同業他社の事例は、それを一足飛びに解決する可能性を持っている反面、組織として問題解決に当たる流れを作るステップ、つまり学習する機会を喪失している可能性があります。

 

いかがでしょうか?

念のため強調しておきますが、私は同業他社の事例を一切参考にしてはいけない、と言っているわけではありません。
必要に応じて、他社の経験を取り入れる事は、経営を加速するうえで必要なこともあるのは私自身も認識しています。
気を付けたいのは、
何の考えもなく、同業他社のモノマネをすることについてのリスクを認識しておくべきではないか
という問題提起をしているつもりです。

 

では、どうすればいいか?という問題ですが、一つは真似をするという前提であれば、
異業種のマネをする
という事を提案したいと思います。
なぜならば、異業種の場合、自社に取り入れるには応用しなければいけないからです。
その際に、なぜ参考とする異業種企業がそれをやっているのかに思いをはせ、その裏の目的や構造を考えざるを得ないのです。

さらには、異業種では当たり前なのに、同業者ではできていない事や、視点を見つけることができます。
そのことは、自分の会社の未来につながるものも多く、今から将来に向かった自社の変革のヒントがたくさんあります。
そんな目で異業種の動向を見てみると、とても興味深い教科書になりえるのではないかと思います。

 

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