後継者

事業承継で親の会社を継ぐ際、後継者はどんな修行をすればいい?

事業承継で親の会社を継ぐ。
そんな事を決めた後継者としては、それなりに成功させたいという思いは強いはずです。
というか、事業承継を成功させられなければ、もう終わりぐらいの感覚を持たれている人も多いと思います。
だとすれば、事業承継を成功させるために、後継者である私たちはどんな修行をし、どんな学びが必要なのでしょうか。

一般的には、知識やスキルにかんする学びが強調されがちです。
しかし、それは本当でしょうか。
逆に、事業承継がうまくいかないケースを見ていくと、理由は別の場所にあるような気がするのです。

この後、具体的に見てまいります。


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事業承継で学んだ方がいいとされることは本当なのか?

一般的に言われている事業承継で後継者が学ぶべき事

まずは、多くの書籍やWEBサイト、先輩たちのアドバイスを紐解くと、事業承継で後継者が学んだ方がいい事として…

  • 業界の地図
  • 業界の今後
  • 自分達の仕事に関する専門技術や知識
  • 自分達の会社の事
  • お客様の事
  • 営業やマーケティングについて
  • 税務・会計・資金繰り

といったところが思い浮かぶのではないでしょうか。

事業承継を行う後継者にとって、業界も、商品も、そこにまつわる知識だけでなく、顧客や営業、お金周りの部分など、学ぶべきことはたくさんあります。
しかもしそれらは、覚えればいいというより、小さな知識やスキルの積み重ね。
従って、コツコツと積み上げるしかない。
そう考えると、事業承継の後継者を務めるというのは、気が遠くなるような話です。

学んだからといって事業承継がうまくいくとは限らない!?

さて、先輩諸氏の多くはこういった学びが足りないことに不安を感じておられました。
しかし、業界のことがイマイチわからなくて……という話は、後継者として10年も会社の一線に立つと誰よりもわかるようになります。
自分達の仕事に関する専門技術や知識、会社のこと、お客様のこと、なんていうのは5年やっていれば自然と頭に入ってきます。
もちろん、職人技的な部分は5年では難しいかもしれませんが、大事なのは日々の実践でしょう。
営業やマーケティング、お金周りのことだって、やり始めると思った以上に早く覚えられるものです。

これらの事をある程度マスターした後継者が、逆に事業承継に失敗するケースって意外にあります。
ここで言う失敗というのは、外から見たときの印象です。
何が起こるかというと、先代を追い出してしまうとか、
後継者自身が会社を去るとか、
社員がクーデターを起こして会社が分裂するとか、
大量退職が起こるとかというのが圧倒的に多い気がします。

会社が倒産するというケースもないわけではありませんが、そこに至るにはそれなりに時間がかかるものです。
案外、後継者が心配することは起こらないのかもしれません。

StockSnapによるPixabayからの画像

事業承継が失敗する本当の理由

事業承継をする後継者の最大の課題は○○関係

事業承継において、非常に大きな問題として会社にもたげること。
それは、人間関係に起因する問題です。
先における、「先代との不和」「従業員との人間関係」といった「人」が問題なのです。
これはいくら、商品知識を蓄えても、お金周りの問題を解決しても、上手くいかない話です。

そして、人間関係というものは、何かを知っているからといって上手くいくものではありません。
自分が少しずつでも変わらなければ改善されることはないのです。

事業承継の最大の難しさは、自分自身の変化の必要性を突きつけられるということなのです。

この事に向き合えるか、向き合ないかが、事業承継を乗り切るとても大きなハードルなのではないでしょうか。

個人プレーからチームプレーへ

なぜ、事業承継ではそのような、人間関係の問題が出るのでしょうか。
私は、事業承継というものが、個人プレーからチームプレーに変わる分岐点になるからではないかと思うのです。
学生時代は、あくまで評価は自分一人の頑張りに対してです。
そして、社会に出ると、チームプレーを求められるシーンももちろんありますが、なんだかんだ言って評定は自分個人に対して行われます。
つまり、自分が結果を出せばそれでよかった。

しかし、事業承継の後継者という立場に立った瞬間、一人の評価では済まない話になってきます。
事業承継は、受け継いだ会社の発展で自分が評価をされるようになります。
そしてそのためには、会社に関わる人とのチームが重要になります。
仮に社員のいない一人親方の会社でも、少なくとも先代との共同作業は発生します。

実は、事業承継のムスカ視差は、個人からチームに変わるということにあるのではないでしょうか。

事業承継の成功のために後継者がやるべき事

動かないものは動かさない

事業承継において、後継者は会社を発展させようと頑張ります。
それは素晴らしい事なのですが、それを「自分の信じた方法でやろうとする」ことが、だいたいの問題の種になるのです。
自分は後継者だし、それだけ責任を負っている、という気持ちはよくわかります。
逆に後継者という、わりときつい立場にいるんだから、自分の思う通りに動いてくれてもいいじゃないか、という気持ちもわかります。
けど、北風と太陽ではありませんが、旅人のマントを脱がせようと風がいくら吹いても、旅人は頑なにマントを握りしめます。
それと同様、後継者が自分の想いで人を動かそうとすればするほど、相手は心を固く閉ざしていきます。

じゃあどうすればいいかというと、太陽のように自分で脱ぎたくなるように温めればいいのです。
これを人間関係に適用するなら、まずは相手の胸襟を開かせる必要があります。
そのための最もシンプルな方法は相手の言葉に耳を傾けるということです。

事業承継のコツは人の言うことを聞くこと

ここで結論めいた話をすると、事業承継をうまく進めるコツを一つ上げるとするなら、
「他人の言うことに、真剣に耳を傾ける」
ということです。

事業承継では、先代の言うこと、社員の言うこと、お客さんの言うこと…
みんなの言葉に、真剣に耳を傾け、いきなり拒否するのではなく、
一度は、「そうかもしれない」という前提で受け入れ、尊重するということ。

決して言いなりになれ、というわけではありません。
ただ、聞いて、受け入れて、相手の言葉が正しいかもしれないという前提で検討するのです。
これは何を行っているかというと、相手を受入れるということをやっています。
そのうえで、自分が絶対正しいという頑固な思い込みを緩める作業です。

はじめのうちは、他人の言葉にうなずくことなんてできないかもしれません。
しかし、受け入れる努力をしているうちにだんだんと、自分のこだわりがバカバカしくなったりするシーンも出てきます。
少し極端な言い方をすれば、「どうでもいいか」なんて風に思うことができることも増えてきます。
そうすると、人を受け入れやすくなり、現実を受け入れやすくなり、いわゆる人の器が大きくなってきます。

繰り返します。
後継者が事業承継で行うべき最も大事なことは、
「他人の言うことに、真剣に耳を傾ける」
ということです。

 


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