後継者

後継者・跡継ぎのやる気がなくなった時に考えたいこと

会社に入ったころ、後継者・跡継ぎの方は、たぶんすごく一生懸命だったと思います。
それがだんだんと前進する推進力が弱まり、果ては会社を辞めたいとかいうことになりがち。
そんな様子を見た先代である親は、報酬を増やすとか減らすとか、借金を追わせるとかして後継者・跡継ぎに鞭を入れようとするかもしれません。
しかしまあ、お金の問題じゃないんですね、たいていは。

じゃあ、どうすればいいのでしょうか。

本が出版されました!
関心を持っていただいた方は、画像をクリック。

——————————————

■後継者向けセミナー開催日程はこちら

 

 

■小冊子『なぜ親子経営では確執がおこるのか?~そのメカニズムを知り、後継者が”今”を打開するための5つのステップ[要約版]』無料ダウンロードはコチラ
■YouTubeチャンネルで動画配信も行っています!こちらをご覧ください。

後継者・跡継ぎはリアクションに飢えている

Thomas UlrichによるPixabayからの画像

みんな自分のことに関心を集めたがっている

Facebookを見ていると面白いことがわかります。たとえば、時々「あなたを戦国武将に例えると」とか「あなたの前世は〇〇」的な診断アプリがはやります。これはある調査によると、Facebookの年間のシェア数の大部分をこの手の診断アプリがらみが占めていた、ということが報告されています。

この根拠の薄そうな診断アプリをやってみて、それをSNSの友達に共有する心理というのはどういうことなのでしょう。シンプルに考えると、自分という人間はこんな評価をされたよ、ということを広めたい、という気持ちが強いのでしょう。多くの人は、自分のことに関心を持ってもらい、また何かしらのリアクションによって、そのことを確かめたいのではないでしょうか。

SNSに投稿し、「いいね!」という反応がうれしくなるから、また投稿する。この連鎖が人を引き付けて離さないのです。

この傾向はヴァーチャルの世界だけの話ではありません。人は皆、何かしらのリアクションを求めます。よく「ほめて育てる」なんていう話もありますが、ほめるというリアクションを求めて人は成長するということでしょう。

会社で感じにくい「ここで必要とされている」という感覚

後継者・跡継ぎが会社の中で孤独を感じることがよくあります。目に見える現象としては、後継者・跡継ぎが何か新しいことをやろうとしても、従業員は先代の顔色を窺って自分についてこない。そんなときに、「ああ、自分の居場所はここにはないのかな」「自分の理解者はここにはいないんだな」なんていう風に感じるのかもしれません。実際に私自身もそんな感覚に陥ったことがありました。だから会社に行きたくなくなったり、会社にいるだけで肩がこるような緊張状態に陥ってしまいます。

一昔前、「窓際族」という言葉がはやったことがありました。これは、大きな会社の中で出世街道からそれた人が、チームメンバーもいず、仕事もない、小さな部屋でデスク一つだけ与えられて、ただ時間をつぶすだけに会社に来るような立場に追いやられることを表していました。会社としては法律上、クビにはできないものの、あなたは不必要な人間ですよ、と知らしめるために人との分断を行い、やることを与えなかったといいます。そういう立場に陥った人は、次第にいたたまれなくなり会社を去っていく、という経緯をたどるのだそうです。

誰かがわざとやるわけではないにせよ、後継者の立場はそんな状態に近いものになってしまいがちです。

そのような孤独はどこからやってくるかというと、「受け入れられている」という実感を感じるシグナルが、親の会社では少なすぎる可能性があります。
なぜそんなことが起こるかというと、後継者・跡継ぎが親である先代と違う戦略を打ち出したとしたとき、従業員は後継者・跡継ぎの意見に仮に納得していたとしても、それをもろ手を挙げて称賛しにくい立場にあります。なにしろ、まだまだ先代の力が強く及んでいる状況下では、従業員は先代の顔を伺わざるを得ないのですから。

そして先代はといえば、後継者・跡継ぎに対してどこかで「子供」という軽い扱いをする一方で、深層心理的にはライバル視している一面もあるかもしれません。そうなると後継者・跡継ぎの頑張りを認めていても、素直にほめることは難しいかもしれません。

つまり、親の会社というリアル空間において「いいね!」の数は、残念ながらあまり手に入れることはできないのではないかと思うのです。リアクションが少なければ、辞めたくもなります。

なぜ後継者・跡継ぎはリアクションを求めるのか?

SNSなどの遊びの世界では、かまってもらえないからやーめた!で全然いいと思います。しかし、仕事、それも親の会社を継ぐ、という立場にあって、さすがに「かまってもらえないならやーめた」とは言いにくいですね。じゃあどうすればいいのか、ということです。

それは実は言葉にすれば非常にシンプルです。
「目的」を変えればいいのです。

たとえば、SNSにおいてですが、私は実は結構ビジネス使用に割り切っています。もちろん、投稿内容はプライベートな要素も入っていますが、そういったものも含めてビジネスに寄与する目的でやっています。たとえば、このブログや、YouTubeチャンネルを広く知っていただく手段としてやっているのがSNSです。だからいいね!がたくさんつけば、ビジネス上ありがたいという一面はありますが、別に一つもつかなくたっていいのです。それが、メルマガ登録や、ブログの閲覧につながってくれさえすればそれでいいのです。
だからいいね!の数をチェックすることはほとんどありません。

これとおんなじで、リアルな世界でも「リアクション」をとることを目的にしなければいいのです。
たとえば、近所の人にあいさつするとしましょう。相手からも挨拶を返してもらうことを期待してあいさつしたとき、相手が返してくれなかったらムッとすると思います。けど、相手があいさつを変え相が返すまいが、自分があいさつをする、ということを目的にすれば相手のリアクションがなくとも、すっきりさわやかなはずです。

逆になぜリアクションを求めるのかが明らかになってきます。
私たちは、人に認められるとか、ほめられるとか、そういった目的で日々の行動を決めてはいないでしょうか。もしそうだとすると、そりゃあリアクションがないときついですよね。何しろ目的が、「ほめられるため」「みとめられるため」なんですから。

後継者・跡継ぎとしての成長を促す一つの方法として、この他人に褒められることを目的とした行動を、自分が本当にやりたいことにフォーカスする、ということがあるのではないでしょうか。

後継者・跡継ぎの未来は空白になっていないか?

後継者・跡継ぎは本当はどこへ行きたいかわかっていない?

もし、ここまでの話でハツとされたとしたら、すでに頭の片隅にはこんな考えが芽生えているのではないでしょうか。今までの自分の選択は、常に認められるため、誰かから良いリアクションを得るためだったのではないか、と。

少し会社経営の話から離れた、こんなお話にお付き合いいただければと思います。
ある50歳代の男性がいました。彼の母は早くに亡くなっており、父は一人暮らし。
その父親も70歳後半に差し掛かり、さすがに独り暮らしで放っておくことが難しい状況になってきました。一つ候補に挙がったのは、軽費老人ホームに預けるという話です。
しかし父親本人は、それを嫌がるし、自分は単身赴任で親の近くにはおれないうえ、妻と父親は折り合いが悪く同居などはとても考えられません。じゃあ、どうする?となりました。

しかし、彼は堂々巡りで一向に物事を決めることができませんでした。なぜかというと、もともと彼は人にいい顔をしたがる性格で、妻にも、父親にもいい顔をしたい。そして世間体的にもできれば親をそんな施設には預けるというのは避けたい。
結果どうなったかというと、妹夫婦の強い説得で、父親をホームに入れることになりました。最後までその男性は「本人が望まないのにかわいそう」といっていましたが、妹が「じゃあ、どういう解決策があるのか?」と詰め寄っても何の案も出せません。結局、嫌な決断を妹がすることになり、彼は事なきを得ました。自分が悪者にならずに済んで、ホッとしていた事でしょう。
しかし、妹が泥をかぶらなければきっと今も、父親をひとり暮らしで置いておき、常に心配の日々が続いているにちがいありません。そして人生において、毎回この妹のように自分の代わりに泥をかぶるような決定・行動をしてくれる救世主が現われるとは限りません。

ちなみに、その数年後、体が弱くなってきた父親はこういいました。「あの時、無理やりホームに入れてくれて助かった。そうでなければ今頃一人でのたれ死んでいるかもしれない」

結果オーライということが言いたいわけではありません。この男性は、誰にでもいい顔をしようとして、誰の信頼も得られなかったということが言いたいのです。

気を付けたいのは、私たちがぐるぐると一つのことで悩んでいる時、自分の意思を明確にしていないことがほとんどです。実際のところ、「すべてにおいて都合のいい」選択肢などそうそうありません。そんなときには、自分の意志を持って、そこに進んだ時に起こるであろう問題を受け入れる覚悟で進まざるを得ないのです。
「認められる」ことを目的とした決断や行動は、ここに限界が生じます。どこかで必ず八方ふさがりになるのです。

後継者の「辞めたいけどやめられない」問題も同様で、誰かに批判されることさえ受け入れれば辞めることも、続けることも、即座に決められるはずです。なのに決められないのは、批判を受け入れる覚悟がなく、「認められながら楽な道」を探し続けるからぐるぐる同じところを回ってしまうのです。

批判されてもやってみたいこと

今まではどちらかといえば、精神的に楽なほうへと流されてきた、というと怒り出す人もいるかもしれません。人によっては、そういった自分への反発として、体を鍛えた人もいるかもしれません。(心の弱さをカバーするために身体を鍛える人はけっこう多いです)それでも、このブログにたどり着いた人は、すごく頑張っている人だと思うのです。

私が知っている人の中でも、
・親と衝突するのが嫌で、親の言いなりになっている人
・自分で考えて行動することができず、他人のフォロワーでい続ける人
・自分の弱さを直視することができず、居心地のいい場所を求めてふらふらし続ける人
など、現実逃避というか、自分逃避を行っている人が結構多いのです。

しかし、自分と向き合おうとしているからこそ、この記事をおそらく読んでくださっている方に関しては、かなり前進されているのではないかと思います。

そういった方が、意識してほしいのは、「たとえ周囲の人が批判するとしても、やってみたいこと」がないか?ということにフォーカスしてみてほしいと思います。別に仕事の分野でなくとも、全然いいと思います。その過程で、過去にやってみたかったけどできなかったこと、やってみたけどやめてしまったことなどを振り返るのもありだと思います。なぜこんなことを掘り起こすのかというと、人の顔色をうかがいながらやることを決めていたのが「他人軸」な生き方だとすれば、批判されてでもやってみたいことというのは「自分軸」なわけです。
今はそれを実行する必要はありませんが、まずはどんなことを考えていたのか、あるいは考えているのかを気付いてあげてください。

私たちは日々、「やってみたいな」という自分の思いに蓋をして、「やったら評価される」ことにすり替える癖をつけています。このすり替え歴ウン十年ですから、かなり巧妙です。ぜひ、今まで反応してこなかった自分の本音に、リアクションしてあげてください。

空白を埋めよう!

ここまで来たら、一つ、大事なことを考えておきましょう。私たちの未来、という空白を埋めることです。
冒頭のSNSの話をたとえに持ってくると、私たちは
①SNSに投稿する
②リアクションを得る
③うれしくなってまた投稿する
というサイクルを繰り返すのが一般的です。

これを言い換えると、
①行動
②目的達成
③行動の強化
ということと考えられそうです。

では、私たちの日々の営みの中で、何を目的に活動するかを意識する必要がありそうです。これは多くの場合、ビジネスにおいては数値目標ということになると思います。しかし、前半で見てきたとおり、人として数値目標の達成の先にある人からの評価をこれまでの原動力としてきたため、ここにビジネス上の数値目標を持ってきても、今まで以上にやる気がみなぎるかというと、それはないんじゃないかと思うのです。
他人に認められるというよりか、自分で「ああ、がんばったな」「ああ、成長したな」と思える目的あるいは目標の設定が必要となります。一つお勧めするのが、毎晩「今日一日でできたこと、進歩したこと」のリストを作ること。

具体的なやり方はこんな感じです。
前日の夜に、翌日、仕事であれプライベートであれ、何をするかを決めておきます。できれば、「盛り込みすぎ」ぐらいがいいと思います。目的は、1日の空白を作らないことです。人は何かを一生懸命やっていて、そこから次の別のことにタスクを切り替える境目で、さぼり癖が出がちです。もちろん、好きなゲームをやるとか、動画を楽しむ、という意図をもってやる分にはいいのですが、ただだらだらとテレビを見続けるとか、SNSをやるとか、いわゆる「暇つぶし」の時間を作らないようにします。時間が空けばやることをあらかじめ決めておくのです。

繰り返しますが、意図をもってさぼるのは全然オッケーです。意志なくだらだら過ごすことを防止するためです。

そして夜にはチェックします。この際に、反省会ではないので「できなかったこと」はスルーしてください。もともと盛り込みすぎの一日なので、すべてできないことが当たり前なのです。だからできないことではなく、できたことについての喜びを味わいます。特に今まで先延ばししてきたことや、精神的にきつかったタスク、今までやったことのなかったことを始めてやった、といったことに対しては特に、自分をほめて、その喜びをかみしめてください。

その気持ちを維持したまま、次の日の予定を組んでいきます。

これは、暇時間を追い出すことだけでなく、「他人の称賛を求める」行動パターンから、「自分の思いに基づく」行動パターンへの転換を促すはずです。

社会に求められる働き方

Free-PhotosによるPixabayからの画像

みんな誰かに認められたい

ところで、このような心理的な動きは、決して後継者・跡継ぎの中にだけあるわけではありません。程度の差こそあれ、多くの人が自分のやりたいことではなく、自分が批判されたいこと、誰かの期待に沿うことという行動規範を無意識のうちに持っています。なぜならば、それは生まれてから成人するまで、親子でのコミュニケーションの中でそのようなプログラムが作り上げられるからです。

自分のことを知るというのは、人を知るということにもつながります。とすれば、例えばメンバー1人1人の行動の「目的」が何かを知れば、後継者・跡継ぎは彼らの心を一気につかむことができるかもしれません。前半で出したたとえとして、後継者・跡継ぎのアイデアに対して、社員の人たちは先代の顔色をうかがうため、即座には反応しにくい、という話がありました。これは考えれば、「(先代に)叱られたくない」「孤立した立場になりたくない」というどちらかと言えば、ネガティブな感情から起こしている仕草と考えられそうです。これまでのマネジメントというのはだいたい、相手をこのような恐怖で縛り付けて、半ば強制的に仕事をさせる、といった印象のものが一般的でした。

しかし近年言われているマネジメントのトレンドとしては、「自主運営組織」というものが主流になりつつあります。(とはいえ実践できている組織は非常に少ないと思いますし、私の場合もいまいちです)そういった場合、外からの圧力で人を動かすというより、内面的な思いをくすぐる必要があります。そこでもう一度、
SNS投稿 → リアクションを得る → うれしくなって行動強化
というサイクルを考えてみます。

これを、
行動 → 目的達成 → 行動強化
とするには、「目的」を明確にする必要があります。

その「目的」が、会社のなかでは例えば経営理念、というようなものだと思います。これを社会の中で当てはめていくと、行動した結果が社会に認められる、という仕事であることが可能となれば、次の行動強化につながる可能性が高いのではないでしょうか。お金ももらえないのに、ボランティアで頑張る人たちはまさに、こういった社会に認められている感覚があるから一生懸命になれるのではないでしょうか。

そして、後継者・跡継ぎだって、世間から後押しされる仕事の方が断然やる気が出ませんか?
だから私たちは、仕事をそんな風にアレンジすることが目的になればある意味最高です。なにしろ、社会全体から称賛を受けたうえで、事業で稼げる。それがすごくいい落としどころだと思います。

親のビジネスも世のため人のためだった

日本の中小企業のほとんどのビジネスは、かなり賞味期限切れが近づいているものが多いです。かつては放っておいても売れたものが、価格競争で薄利多売ならまだしも、薄利であまり売れない、なんていう人も多いのではないでしょうか。それはおそらく、市場でのニーズがかつてほどない、ということなのだと思います。かつてはその商品や製品を広める事こそが、社会のためだったのが、今や会社の立ち位置は少し変わってきているかもしれません。(会社が変わったのではなく、社会が変わっただけなのですが)

そこで、後継者・跡継ぎの代においては、少なからずビジネスの調整が必要となってきます。その調整の際に大事にしたいのが、どう社会の役に立っているのか?ということ。かつては商品を広げることで社会の役に立っていたのが、今はその役割は社会の中で不要になっている。そんなフェーズにあるとしたら、自分たちはどんな価値を提供できるかを再考する時期に来ているのではないかと思うのです。
そこを考え始めたとき、行動・目的・行動強化は違うサイクルを描き出すことでしょう。

そんな会社に向けて走り出すとしたら、ちょっとはやる気が出てきたりはしないでしょうか。
健闘を祈ります。

 

 

 

後継者としての生き方に迷ったら、同じ境遇の仲間と意見交換しませんか。
よかったら、後継者専用オン来コミュニティにお越しくださいませ。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
後継者ONLINE倶楽部

 

本が出版されました!
関心を持っていただいた方は、画像をクリック。

——————————————

■後継者向けセミナー開催日程はこちら

 

 

関連記事

  1. ある二代目社長が起こした社内会議の大混乱(1)

  2. 後継者トレーニング(8)後継者は人が理屈で動かないことを知ろう!

  3. 後継者の置かれる立場は意外と特殊でもなかったりします

  4. 後継者が親の事業についての今後を考えるとき、大事にしたいひとつの発想

  5. 後継者の眼で見るビジネスの変遷と時代の流れ

  6. 後継者・二代目社長の学びを力に変えるコツ

  7. 「正攻法」がうまくいかない時代に後継者はどう会社を変革するか?

  8. 事業承継をうまく進めるコツは「譲る前提」で事業をかじ取りする事