非常識な後継者50の心得

非常識な後継者50の心得(8)後継者は周囲を動かすのではなく動きたくなる環境をつくろう!

リーダーである後継者。
後継者=リーダーとして、私たちはどう人を動かしていけばいいのでしょうか。
私が犯した失敗は、社員より自分が強くなり、社員を「圧」で動かすということが目指すべき方向と考えたこと。
ある時はルールや報酬で縛り、ある時は声を荒げ、ある時は動かぬ社員を排除しようとする。
一時的には思い通りになることもまれにありますが、たいていは長くは続かず崩れていきます。

まさに砂上の楼閣で、その場しのぎのマネジメント。
たとえば、3年ごとに転勤する大企業の社員なら問題が噴出する前に異動でしょうが、生涯にわたって会社に関わる後継者には不適切ではないでしょうか。
だから回り道に見えるかもしれませんが、違ったマネジメントスタイルが必要なのです。

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ある後継者の「夢」

後継者の思いどおりの会社が作りたい!?

私は中小企業の後継者を集めたセミナーをする際、よく参加者に刷る質問があります。
それは、「あなたの生涯の夢は何ですか?」というもの。
こういったことを考えたことのある人はすごく少ないようで、皆さん頭を抱えて考えます。
出た結果は、「会社をこんな風にしたい」「新規事業に着手したい」という物から、「セミリタイアして、悠々自適な暮らし」を夢見る人もいれば、まったく思い浮かばないという人もいます。
すごく興味深かったのは、ある後継者が「自分で思いどおり会社を動かせる状態」が自分の将来最大の夢、とおっしゃった方がいたこと。

色々話を伺うと、会社の中では自分の提案は採用されず、店内のディスプレイを少し工夫すると次の日にはそれを元に戻されている。
何だか会社の中全員が敵で、自分一人で会社を良くしたいと孤軍奮闘しているかのように感じられ、ひきこもり状態になっておられた方がいらっしゃいました。

何一つ社内で自由にならない飼い殺し状態ですから、その気持ちもわからないでもありません。
ただ、程度の差こそあれ、多くの後継者が彼の思いに同意するのではないでしょうか。
自分の思ったことを思いっきりやってみたい!と思う人は多いと思います。
しかしそれをゆるさない会社の状況がある、という事なのです。

思いどおり=人を動かす?

このような状況に陥ると、私たちはこう考えます。
・どうすれば社員は自分の思い通り動くだろうか?
・どうすれば先代は自分のいう事をきいてくれるのだろうか?
・どうすれば古参社員は、自分の意図を反映して動いてくれるのだろうか?
つまり、自分以外の人たちに、自分の意図に沿った動きをしてもらいたい、と思う。
いえ、意図に沿った動きをすべきだ、と考えているというのが正しい表現ではないでしょうか。

すると何が起こるかというと、思い通り動かない場合に私たちがイラつきます。
私たち後継者がイラつくと、彼らは後継者のことが理解不能となり、去っていきます。
結果として、後継者が躍起になって彼らを動かせば動かそうとすると、後継者から心が離れていくのです。

これが創業社長・先代の場合、社員の逃げ道がないのでしぶしぶでも社長に従わざるを得ません。
そうしなければ、会社に入れそうにない気がするからです。
一方、後継者のシチュエーションにおいては、後継者より力のある先代が社内にいるので、社員や関係者はみな先代からOKをもらえればいい、と考えます。
カリカリしている後継者よりも、今までと変わらない先代の圧のほうが居心地がいいのです。

人を動かそうとすればするほど、人は固く心を閉ざしてしまいます。

人が動きたくなる仕掛け

後継者がやりがちな「天から指示の槍が降ってくるマネジメント」

後継者は、とにかく実績を早く、大きく出したいと常に焦っています。
そして、社員を今一つ信用出来ていないケースが多いのではないでしょうか。

だから、会社の戦略を自分一人で決め、自分一人でタスクを生み出し、それを社員に割り当てようとします

この時の社員の人たちの感想はきっと、「そんなん知らんやん」という感じでしょうか。
何かをやるとき、その決定プロセスに関わることもなく、ただ指示だけが下りてくるという状況は社員からすればかなりのストレス。
それをやる意味が分からないし、それがどんな価値を生むかもわからない。
人は何かをするとき、その行動や苦労がどういう結果に結びつくかを知ることで、行動の力が湧いてくるものです。
しかしそのプロセスがまったくわからないまま、後継者の指示に従え、と言われても素直に「ハイ」とは言えないのです。

だから、まったく知らないところで決まったタスクは、まさに天という見えない世界から指示という名の槍が降ってくるようなもの。
社員はみな逃げまどい、それを後継者は「やる気がない」「自分の意図通り動かない」といった評価を行っている、という状況があるのではないでしょうか。

槍から自分事へ

人が動くためには目的が必要です。
その目的を生み出すのが、物事を計画段階からかかわってもらう、という事です。

後継者はきっと誰よりも勉強して、誰よりも会社のことを考え、誰よりも真剣だと思います。
そんな後継者は自分以外の意見を採用することはちょっと不安があるし、回り道をするかのように見えることもあるかもしれません。
しかし、どうせ後継者の意見や計画がどんなにすばらしくても、それを実行する社員が動かないなら何の意味もありません。
まずは広い心で、社員の意見を聞き、彼らのやりたいことを試し、そのうえで必要なアドバイスや試行錯誤の工程を一緒にやっていくことで、指示の槍は喜びの素にかわります。

後継者はどうしても「自分が…」という思考に陥りがちですが、ちょっとそんな思考と距離を取り、社員を主人公にしてみてください。
そうすると、不思議なのですが、社員は後継者をいろんなシーンで頼りだします。
後継者が誰にも信頼されなくて孤独になりがちなのと同様、社員も孤独を感じています。
後継者から信頼されていないからです。
この信頼関係を生み出すのは、まずはリーダーがメンバーを信頼することから始めるのが現実的です。
それさえできれば、実は、後継者の悩みのほとんどは解決していくはずです。

 

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