非常識な後継者50の心得

非常識な後継者50の心得(9)素直に「ハイ」と受け入れよう

後継者はいつも何かと闘っています。
世間とか、社員とか、先代とか。
闘うというのは、争うという意味だけではなく、別の意味もあります。
別の意味というのは、「誰かの意見に抵抗する」という事です。

ただ、抵抗している本人は、抵抗していることに気付いていません。
しかし、抵抗する人は、何かを言われた時に、
「でも…」
「そうはいっても…」
「しかし…」
という反論を行います。

自分の意見を持つことは大事なことなのですが、その意見で物事がうまく行っているならそれもいいでしょう。
しかし、上手くいかず悩んでいるなら、自分の意見と違う意見を受入れることが必要なのです。

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ハイと言えない後継者

頑なに自分のアイデンテティを守ろうとする

伝統芸能の世界で言われる「守・破・離」という言葉があります。
先人がやってきたことをその通りにまずはやる。
それができるようになってきて、違った表現を試行錯誤し、最期は自分独自の世界観を作り上げる。
ざっくりとこんなイメージの言葉ではないかと思います。

ただ私は、この言葉は行動レベルのことをいっているというより、心構えをいっているように思います。
特に何かを始めたときは、自分のアイデンテティを確立したいがために、どうしても独りよがりになりがちです。
そうすると、他人の意見を全く聞かなくなる傾向があるので、そういった時こそ様々な人の意見に耳を傾けよ、と言っているのではないかと考えています。

特にやり始めの時期は自信もありませんから、それを構築するためにも「自分でやった」「自分で考えた」という事が重視されがちです。
しかしそれではうまく行かないことが多いので、あえて、人の話を聞け、という教えが込められているのでしょうl

「ハイ」と言えなかった私

私自身の経験においても、誰かに何かアドバイスを受けてもなんだか稚拙に見えたものです。
いやいや、自分はもっといろんなことを学び、深いことを考えている。
だからそういったアドバイスを論破することが、自分の自信につながると思っていました。
というか、何かを考える前に、受けた話に対して「でも」という言葉と共に反論し、自説を認めさせることでアイデンテティの確立を意図していたように思います。

しかし実際のところ、そうやって自説の正しさを証明しようと躍起になればなるほど、孤立していきます。
社員の心は離れ、先代との考え方のズレは広がり、同業他社とも解りあえない状態になっていきました。

素直にハイというと広がる世界

抵抗をやめる

ところで、私は最近、人生というのは「流れに任せる」というのが充実した生き方のコツだと感じています。
人生を川の流れに例えると、ある一定の流れがあって、素直な人はその流れに流され、スイスイ生きていきます。
すると、水は流れやすい方向に自然と流れますから、私たちも流れやすい方向に導かれます。
一方で、その流れに逆らったり、意図して違う方向に行こうとしたりすると、変に力を加える必要が出てきます。
パドルで岩をはじいてみたり、垂れているツルにつかまってみたり、余計な力を使います。
結果、とてもすごいところに行けるかというと、実は流れる場所は同じ場所で、余計なことをした分そこへの到着が遅れてしまった、という事になりがちです。

誤解を与える表現になりますが、流れがあるならばその流れに逆らわず、その中での最善を目指すというのがスムーズな生き方ではないかと最近思います。

自分では見ない世界に連れて行ってくれる

もうひとつ、他人の提案やアドバイスに「ハイ」を言うと、自分では普段選択しない道が開かれてきます。
その際は、ちょっと抵抗があるお誘いのほうが、知らない度が高く面白いかもしれません。
私も50年以上生きてきて、自分は「苦手だしキライ」と思っていたことが、「ハイ」を繰り返してお誘いに乗っているうちに、実は「苦手だけど好き」だったとわかったこともありました。
これがやりこんでいくともしかしたら、「得意だし好き」にかわることもあるかもしれません。
とにかく、大した理由もなく嫌っていたことをやってみると、実はとんでもなく面白かった、なんて話は枚挙にいとまがありません。

経営においても同様で、自分の考え方を強制しようとしてうまく行かないなら、人の意見を採用していけばいいのです。
「それはちょっと…」と思うことの大半は、自分の勝手な思い込みです。
自分らしさを追求するのもいいですが、私たちは40を過ぎても50を過ぎても自分のことなんてたいしてわかっていません。
ならば、今からでもいろんなことを体験してみるのが、一番の手立てではないでしょうか。

人生は案外、あなたにやさしいものだと思います。
自分の人生を信用し、ちょっと寄り道感覚で「ハイ」の行き着く先を見てみてはいかがでしょうか。
実はそれが最短距離だったことに気付く人は多いのではないかと思います。

 

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