「先代にはかなわない」
まじめな後継者ほど、この言葉を使います。
「先代には勝てないと思ってはいるけど、自分なりに頑張る」
なんだか、聞こえはいいんです。
ちゃんと、親である先代を尊敬してるみたいで。
けど、それって、洗脳されてるんじゃないですか?
私の著書です。
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いろんな後継者の方とお話ししてるとこんな話がよくあります。
「私は、今の会社でこんなことをやりたいと思っているんです。確かに、親にはかなわないかもしれないけど・・・」
「今の会社をこんな風に変えたいと思っています。なぜならば、親には普通にやっても勝てないから・・・」
世襲後継者にありがちな会話です。
親への尊敬とか、親に対して一歩引いた姿勢を表しているんでしょう。
けど、やっぱりなんか気持ちが悪い。
これって、尊敬どころか、自分を卑下してるだけなんですよね。
親はすごい。
そのすごい親に自分は至らない。
親はすごい。
そのすごい親に勝てないから別の方法をとる。
さて、ちょっと視点を変えてみましょう。
後継者であるあなたが、親ができないことをできる事って一つもないでしょうか?
もしかしたら、親よりあなたの方が、社員に仕事を教えるのは上手かもしれない。
親よりあなたの方が、システムについて詳しいかもしれない。
親よりあなたの方が、社員の気持ちをわかっているかもしれない。
親よりあなたの方が・・・
思いつく限り、書き出してみてください。
すると驚くことに、親が得意な事より、あなたが得意なことの方が多かったりしませんか?
じゃあ、もう少し考えてみましょう。
親ができていて自分にはできないこと、経験を積めばできるようになりそうですか?ならなさそうですか?
親に勝てないと思っていること、それが必要になったときにできるようになりそうですか?ならなさそうですか?
単に経験があるかないかだけの問題も、相当数あるのではないでしょうか。
もちろん、そうやって考えてやっぱり自分にはできないこともたくさんあります。
この二つの質問の答えを比較してみてみる。
後継者の方が人として圧倒的に劣っているということは、まずありえないと思います。
能力の問題でも恐らくないでしょう。
それでも「勝てない」と思っているとしたら、それは価値観の問題かもしれません。
経営者として必要とされるスキルやあり方。
それはこういうものです、という洗脳があるのではないかと思うのです。
たとえば、リーダーシップ。
今時、グイグイ社員を引っ張るリーダーシップというのはメジャーな路線からは外れつつあります。
自分は出来る男(女)だ―!と証明するかのように実績を見せつけ、社員がへへーと頭を地面にこすりつける。
水戸黄門じゃあるまいし、それはさすがに古いでしょう、と思ってしまうのですがいかがでしょうか。
もちろんそんな組織にあこがれるなら、そうすればいいと思います。
否定するつもりもありません。
けそ、そんなあなたも、先代の高圧的な物言いに不満を感じているのではないですか?
だとすると、あなたも同じ道を歩むのが正しいとは思えません。
なのになぜか、親と同じ方法を採ろうとするのです。
しかも、自分にはない資質を育てて、鬼軍曹になろうとしているとしたら、しんどいと思いますよ。
人には、人それぞれの良さも欠点もある。
本来、その良さを引き出してこそ、組織はよくなっていくはずです。
近年の最先端のマネジメント理論は、そういう組織こそが成長する組織だという研究を一生懸命やっています。
なのに、あなた自身が今やっていることは、自身の欠点をほじくりだしてこれでもかっ!と自分で自分を攻撃しているわけです。
実は、経営者のなかにも、そんなマゾな人はたくさんいらっしゃいます。
「あんた一体何やってんだ!もっとこうしなきゃいかんだろ!」
なんていう内容の講演、けっこう受けるんです(苦笑)
そんな話を受け入れる人というのは、自分で物事を考える事が苦手な人に多いと感じます。
これから会社をどうしていこうか、どんな風に戦略を練ろうか、そういうことを考えるのが苦手だから、誰かが強制してくれるとすごーく楽になるんです。
ちゃんとやることを決めてもらえると、よかった、とホッと胸をなでおろすんです。
だから厳しく言ってくれる人が大好き。
これ、実は現在60歳代以上の創業社長に多い傾向です。
けど、後継者の方は、たぶん何かを強制されることが嫌で嫌でしょうがない。
なにしろ、親である先代にいろいろ強制されてきましたからね。
それって実はもしかしたら、自然が生み出した後継者育成プログラムなのかもしれません。
なぜなら、強制という枠を飛び出すには、自分で考えなくてはならない必要性が出てくるからです。
つまり、もはや親と自分を比較する事には何の意味もない。
そうやって、親に比べて自分がどうとか言ってる時点で、それは親や世間による洗脳を受けているということなのではないでしょうか。
あなたはあなた自身が思い、感じることを忠実に実行すればいい。
回り道をすることもあるかもしれませんが、自分が70歳、80歳になったとき、「これでよかった」と思う事が出来ればそれでOK。
その時に悔いを残すか残さないか。
それだけが、今必要な価値判断の基準なのではないでしょうか。
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