事業承継

事業承継の失敗は後継者の責任か?創業者の責任か? 後継者の器と譲れない創業者

事業承継の失敗を論じる時、概ね世論はこう断じることが多いようです。
後継者がその器ではなかった・・・と。
確かに、後継者は経験と器にそぐわない会社を引き継ぐことになります。
しかし、後継者の立場としては、世の多くの意見にスッキリ納得できないことも多いのではないでしょうか。
なぜなら、事業承継は共同作業だからです。


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よくよく考えてみると、後継者が否定されやすい要素はたくさんあります。
なんといっても百戦錬磨の創業者と比べると、圧倒的に経験値は少ないといえるでしょう。
そのことは多くの後継者の方も受け入れざるを得ない現実として、真摯に受け止められていると思います。
しかし、それだけにとどまらない後継者のやる気をそぐような情報があふれているようにも思えます。

また、一部の後継者が、実際に放蕩息子を絵にかいたような振る舞いをしているのも事実です。
多くの後継者は、真摯に事業に向き合っているものの、こういった一部の人たちの印象が世間に強く印象付けられている状況もあるでしょう。

それを差し引いたとしても、先代が正しく、後継者が間違っているといった論調が多いように思えてなりません。

 

その理由を考えてみると、背景には以下のような三つの理由が考えられます。

(1)創業者は比較対照する人がいないが、後継者は先代との比較にさらされる

創業者はゼロからスタートしているため、誰にも干渉されず、誰とも比較されず、自分のペースでビジネスを作ってきたケースが多いと思います。言ってみれば、社会において「無名」の状態でデビューするようなものです。一方、後継者は「創業者の子供」であるところからのスタートになります。つまり、まったく未経験の状態から、注目を集める状態でのスタートになります。この状況で、完成された創業者と比較対照されるため、どうしても力不足感が目立ってしまいます。

(2)経済原理に影響されている

書籍やネットにおける情報は、その著者のビジネスに誘導するものが多いと考えられます。税理士、弁護士、コンサルタントなどにおいては、事業承継の資産移転などに関するビジネスに誘導する目的をもって情報を開示しているケースが多いのではないでしょうか。こういった人たちは、資産を形成し、会社の実権を握る創業者の味方であることを強調します。その結果、情報の多くは創業者に偏ったものが多くなる傾向を持っています。

(3)後継者を叩く方が世の中の共感を得やすい

社長の息子であるだけで、次期経営者という状況に妬みを持つ人は少なからずいます。多くの人々の共感を得る事で得をするのがマスメディアです。苦労の人という創業者を悪く報道するより、親の七光りで経営のポストに就く後継者を叩く方がビジネスとして成立しやすいと考えられます。

 

(1)については、非常に難しい問題です。
恐らく、創業者が途中で挫折したとき、周囲の目はほとんど創業者に注目さえしなかったでしょう。
しかし、後継者はその一挙手一投足を誰かに見られています。
何かを始めれば、抑止する人が出てきたり、反対する人が出てきたり、ひどい場合には会社から追い出そうとする人が出てきたり。
これはまさに後継者特有の悩みといえるでしょう。

それを振り切ろうとすれば、「先代をないがしろにする」なんていわれるのですから、八方ふさがりです。

 

しかし、現実問題として、事業承継の失敗が起こるとすれば、それは本来共同作業のはずです。
事業承継を「バトンタッチ」と表現することがよくありますが、バトンタッチはあくまで渡す側と、受け取る側の息が合わなければ上手く行きません。
傾向としては、

本来バトンタッチする場所で創業者がバトンを渡すことなく、
「走れるところまで走る」
といって、トラック2周目に入ったものの息切れしてやむを得ずバトンを渡す。

といった様子を目にすることが多いように思います。

 

伴走した後継者も、走りぬいた創業者も、その頃には疲弊しています。
疲弊しきった会社を渡されても後継者が打つ手は限定的ですね。
そうならないためにも、本来あるべきタイミングでバトンを渡す事が肝要です。

もし、後継者がいつまでまってもバトンが渡されないとすれば、やはり自分が動かざるを得なくなります。
その時は、そんな先代の心にあるものを理解する努力をするとともに、自分がどうありたいかを考えていく必要があります。
共同作業であるという事は、ともに責任を負っているという事です。
どちらかが一方的に悪い、という議論の先に解決策はないのですから。


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