後継者

後継者特有? お客様や社員からうける「先代はそんなことはいわなかった」という言葉

たぶん、後継者の方は一度はこんな言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「先代はそんなことはいわなかった」
「社長(親)はここまでやってくれたのに」
「お父さん(お母さん)の時代はもっとサービスしてくれた」
などなど。

私もそういう言葉は何度も聞いたことがあります。
じつはこの言葉、真摯に受けるべき時もあると思いますが、でたらめな時も少なからずあります。

 

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私の家の家業は保険屋さん。
ある自動車事故を起こしたお客様、そのケースでは保険が出ないという状況でした。
そして私はそのことをお客様に伝えたとき、お客様は激怒して言いました。
「あんたのお父さんの時代はそんなこと言わなかった。もうあんたなんかと契約しない!」

いえいえ、保険で出る、出ないは、同じ商品においては同じ回答しか原則できません。
そもそも私たちは代理店で、保険の支払いに関する権限は何一つ持っていません。決めるのは保険会社。
だから、私を責められたってしょうがないし、父だってそんなことで保険を支払うなんて言うはずがありません。

これはまさに、自分の主張を認めさせたい、あるいは自分のメンツを保つためのとんでもない言いがかりです。

こういったことを社員が言う事もあります。
先代はそんなことはいわなかった、先代はもっと自分たちのことを考えてくれた、と。
まあ創業社長は、とても人に感謝されるのが大好きなので、ルールや全体最適を差し置いて、自分が感謝されるステージに立とうという行動をする傾向が強いです。
ある相談者の二代目社長のところでは、会社の資金繰りがかつかつなのにもかかわらず、社員のボーナスを奮発したり、寄付活動をする先代社長に困っておられました。
もう少し冷静な後継者と比べると、あるいは「後継者は冷たい」と映ることも多いかもしれません。

さらに、先代の時代はコンプライアンスについて非常におおらかでした。
今ならパワハラとなりそうな「会議中に灰皿が飛んでくる」も普通に行われてましたし、印鑑が必要なシーンは認め印を買って代理押印。
見積もりに関しても結構メチャクチャだったり、ルール違反をしてでも安売りしようとする。
顧客情報の書かれた紙の裏をコピー用紙として使うといった今ならびっくりするようなふるまいを普通にしていた時代もありました。
そういう風土の中では、ちょっとしたずるをしてでも目の前の顧客や社員にいい顔をしようとする。
それが普通のことでしたし、誰も咎めることはなかった時代。

しかし今やそんなことをすれば、会社が消し飛んでしまいます。
だから後継者は、しっかりとコンプライアンスを守れというのですが、先代は全く意に介さない。
そんなやりとりも普通に起こりますね。

 

こういったコンプライアンス違反を繰り返す先代は、後継者にとっては「自分達の陣地に地雷をあちこち埋めている」かのような存在。
いつ爆発するとも知らない地雷に、後継者は何十年にもわたってビクビクしてしまいます。

 

これを止めようとすることはもちろん大事だと思います。
しかし残念ながら止まらないことが多いと思います。
あとは、覚悟をするしかないのです。

私はそういう事がきっかけで親を会社から追い出したい、と強く思いましたが、結局それも含めて受け入れざるを得ないのだな、と感じるまでには10年位要した気がします。
たぶん大事なのは、思い通り動かない人がいて、リスクもたくさんあって、しかもしれは自分の身すとかではない所からやってくる。それってまさに経営じゃないですか。それをその特定の人を抑えることで何とかするというのは間違いで、正しい方向に進む社風を作っていくのが経営者の仕事じゃないか、と最近は思います。

また、親と比べられると、ムカっときますよね。
そのムカッと来るのはなぜかを内省する機会を頂いてるんじゃないかと、今からならば思えます。(当時はとてもそんな気にはなれませんでしたが)
そうやって、ちゃんと経営者として一人前になれるような試練が順番にやってくるんだな、と最近は思っています。
嫌な事や辛いことはいわば進級試験。
ひとつひとつ、進級して、一人前の経営者になるんじゃないでしょうか。

人は、人との摩擦で磨かれていくのだと思います。

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