家業を持つ家庭に育った子にとって、最も摩擦の少ない進路は家業を継ぐことです。ですから、なんとなく家業を継ぐ、という跡継ぎ・後継者・二代目社長は多いと思います。
流れ、流され、そんな立場に立った時、「ああ、自分はやっぱり家業を好きになれない」と思う人は一定割合でいるようです。その時にどうすればいいのか、私の知る範囲で考えてみました。
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Contents
家業があわないと感じるときの3つのパターン
①経営者・社長という立場が自分には合わない
人にはそれぞれ得意分野と苦手分野があります。そういった中で、人を大きく二つに分けると、リーダーシップをとって周囲の人間を巻き込むタイプの人と、自分一人でコツコツと何かを作り上げたい職人気質を持ったタイプの人という分け方ができるのではないでしょうか。とくに、一般的には親の会社を継ぐべく期待されるのは、長男長女であることも多いと思うのですが、こういった立場の場合、家族の中ではリーダー的存在でいるという一方、人を頼るのが苦手な自己完結気質も併せて持っているケースが多いように思います。
実は私自身がまさにそんなタイプで、長男だからリーダーであるべきという想いが頭の片隅である一方、何かをするときに人を頼りたくないからついつい自分でやってしまいます。これ、組織を預かる人間としてはあまり好ましくない傾向だと思います。いつまでも組織が大きくならない典型的なパターンに陥りがちです。
②家業のビジネスそのものが自分に合わない
家業の営む業種やそこで働くひとの傾向、雰囲気、あるいは扱う商品やサービスの価値など、自分の価値観やポリシー、得意分野と、家業の仕事が折り合わないケースも少なからずあると思います。たとえば、建設や製造の現場では、わりと荒っぽい人たちが集うことがありますが、そんなところにお上品なキャラの跡継ぎ・後継者・二代目社長が来たとなると、なかなか手ごわい職場になりそうです。そんな人たちと同じ職場で働くだけならいざ知らず、リーダーとしてそんな人たちを引っ張れ、といわれてもついついしり込みしがちです。
私の場合は父の仕事は保険の仕事です。保険の厄介なところは、商品に実体がなく、そのスペックはすべて「約款」という小難しい小冊子に依存します。さらにはその解釈をめぐるグレーゾーンもあるため、お客様が普通に「この場合は保険出るだろう」と思っていたケースが実は出ません、といったケースも少なからず生じます。それが自分の裁量で動かすこともできず(勝手にそんなことをすると法律違反になるんです)、めったにお客様の役に立つことのない商品であるにもかかわらず、いざというタイミングの稼働を保証できないというのが自分的には非常に心苦しい思いなのです。多くの同業他社はそういうものだ、と割り切って、その仕組みの中で最大限お客様に寄与しようと頑張っておられますが、私にとってはそこに夢中になれず、ほかの方法論を探し続けてきた経緯があります。
③親と仕事をすることが苦痛
三つめは、かなり根本的な話になるのですが、そもそも親と仕事をするのが嫌だ、というケースが少なからずあります。入社したころは、多少のことは覚悟はしていたものの、実際にどっぷり会社に使ってくると、「これは思った以上に大変だぞ」ということになるケースは少なからずあると思います。ある意味、普通の親子関係の中では親の本質的な性格を知るほどの関係を持つケースは案外少なく、一緒に働いてみて初めて「自分の親はこんな性格だったんだ」と知ることになった、ということは多いように思います。
たいていは、独善的で、排他的。
理不尽で、頑固、人の話を一切聞かない。
後継者だ、跡継ぎだ、と責任は押し付けられるけど、権利は継承されない。
ほかにも、後継者の手柄をあたかも自分の手柄と喧伝する人、やたらといい恰好しいで、会社の財政が厳しいのに考えもなくバンバンお金を使う…など、このあたりの話はいろいろ伺います。
そういったこと以外にも、単に親と同じ場所に四六時中いることで、跡継ぎ・後継者・二代目社長自身が自分の個性を出しにくいという意見もあったりします。ここでなければ活かせる自分の能力が、親元では発揮しにくいというケースを耳にします。
家業が合わないと感じたときにどう対処するか?
変わる、変える、ほかを探す
家業となると、家族という単なる職業としての環境ではないので、すべてをドライに割り切ることは難しいと思います。それでも家業とのかかわり方をどうするかという問題は、自分の人生をどう選択するかというかなり大きなテーマです。ですから、あえてドライに三つのジャンルで考えていきたいと思います。
まずは、「変わる」ということ。
これは単純に自分が変わるということを示しています。乱暴な表現をするなら、「合わないと感じても、合うように仕向けよう」ということです。とはいえ、いきなり家業を丸含みで好きになれ、というのも途方もない話なのでちょっとしたコツを考えてまいります。
二つ目は、「変える」ということ。
合わないならば、合うように変えてみよう、ということです。
三つめは、散々努力してもやっぱり合わなければ、ほかの生き方を探すしかないですよね、という話。
なんだか、戦国時代のホトトギスの歌のようですが、信長的なものはないと思いますので、ご安心ください。
そして、検討する順序は、ここに表した順序が良いんじゃないかと思います。
変わる
まずは能動的に自分が変わるということ。そうはいっても、できないから困ってるんじゃないか、という方は多いと思います。そういう場合、家業を全部含めて大好き!とはなれなくても、今やっている仕事のごくごく小さなパーツでいいと思うのですが、何か一つでも好きだな、と思える部分ってないでしょうか。
私たち人間の脳は、どちらかというと嫌な思いや、つらい思いをした記憶が強く頭に残ります。そして、ほんのちょっとその時の状況に近づくだけで、過去の嫌な思いや辛い記憶を頭の中に、デフォルメして再生します。一度嫌な思いをした行為は自分にとって危険な場所だから、近寄らないで!という警告反応です。
しかし、毎日の仕事の中で、それと同じくらい、あるいはそれ以上に、楽しかった経験、夢中になれた経験、うれしかった経験などがあったはずです。だけど、この記憶は、意識しないとなかなか蘇らない。
結果、私たちは「いやだな」と感じたことの「いやいや度」を強化し続けているわけです。だから、普通に嫌と感じる以上に、いやと認識していることは結構あると思います。歯医者さんや注射など、終われば大したことのないものでも(もちろんいったら大変だった、ということもありましょうが)、行くまではドキドキしたりするのはその一例といえるかもしれません。
そんな知識を持ったうえで、まずは今やっている仕事の中で「やり始めると夢中になる部分」をピックアップして、その時の感触を味わうという意識を持ってみてはいかがでしょうか。そしてその仕事(というか作業?)を拡大して、自分が好きな部分、夢中になる部分をもっと増やす方法を考えていくのも面白いかもしれません。
変える
家業の仕事全体は好きとは言えないけど、部分的には楽しかったり、夢中になれる部分がある。そんなところまで来たら、次は、会社の中で、その好きな部分を作業規模として大きくすることを考えてみます。たとえば、営業は嫌いだけどお客様とのコミュニケーションは好きならば、シンプルにお客様との親睦の機会を用意すればいいのかもしれません。別に仕事上の商品発表会でなくとも、セミナーでなくともいいと思います。お客様と遊ぶというコンセプトの会合を開催し続けた結果、その会合にお客様が友達を連れてきてくれて、お客様の友達が常に新規の受注先となったという事例もあります。
また、顧客との接点を増やすために始めた新商品の取り扱いが、後の会社の主力商品に変わっていったというケースもあります。こうなると、家業の業種がどうのこうのという話はあまり関係なくなってきたようです。
こんなにシンプルに方向性が見えることはまれかもしれませんが、一生懸命考えることで、好きな作業で満たすことが会社の売り上げ増につながるような仕組み作りが見えればこっちのものですね。
ほかを探す
いろんな努力をしてみても、家業がやっぱり合わないというひともいることと思います。そうなるとやっぱり最後は、会社を出ることを考える必要が出てくるかもしれません。比較的良く耳にするのが、仕事をしている中で知り合った方の会社にお世話になるとか、古い友人が起業したのでそれを手伝うことにしたとかというのが多いと思われます。先代がなくなった場合は会社ごと同業他社に買い取ってもらうケースも結構見受けますが、先代がお元気な場合は、縁をたどって…ということになります。
もちろん一般的な就職活動もありだとは思いますが、年齢によってはこれも難しい部分があるようです。
そういう意味では、最終的に家業に骨をうずめるにしても、そうでないにしても、会社の顔として様々な交流を社外に持っておくことはとても大事だと思います。そういった人のつながりがきっかけで、自分が変わることもあれば、会社の方向性のヒントをもらえることもあるでしょうし、また、会社を辞めざるを得なくなった時の仕事探しの役にも立つのではないかと思います。
家業が合わないと感じる3パターンへの対処
経営者という立場が嫌ならば……
跡継ぎ・後継者・二代目社長の中には、自分は社長なんてやりたくない、と思う方も一定数いらっしゃいます。この場合、もちろん親である先代の意向もあるかとは思いますが、別の代表を立てて彼の参謀をするような位置づけもありなんじゃないかと思っています。
例えばある会社では、兄弟で役員をしていますが、兄は早い段階で「俺は社長の器じゃないから、現場を頑張る」といって、弟に社長を任せ、兄は専務として現場を取り仕切っています。そんな体制をとってもう数十年になりますが、仲良く会社を盛り立てているようです。さらに似たようなパターンで、兄が子会社を立ち上げ、本体を弟、兄が社内ベンチャー的な取り組みに従事しているケースも目にします。
ある会社では、創業社長がなくなった折、一旦は社内にいた長男に白羽の矢が立ちましたが、長男は自分にはできないと拒否。一般の従業員の中から社長が選出され、長男はいまもそのサポートをしていて会社はいい感じに発展しています。創業社長が義理に熱い人で、経営幹部は皆、義理堅く長男をほどほどに立てて組織がうまく運営されているようです。
きっとここにあげた例のみならず、いろんな方法があるんじゃないかと思います。様々な事例を見分してみると、自分なりの立ち位置が作れるのではないかと思います。
家業のビジネスそのものが自分に合わないならば
この問題に対してはすでにお話が出たとおり、会社というのはいろんな変化を受け入れながら運営していくものです。特に近年の社会の変化は激しく、「変える」の項目でお話ししたような変化が必須とされつつあるように思います。これを焦ってやると、その焦りが周囲に伝わりますが、じっくり腰を据えてやっていくことで、いろんな出口が考えられるように思います。大事なのは、「今のビジネス以外のことを」という想いに始まるのでしょうが、「〇〇をやりたい」という具体的な思いにコミットするところに早くたどり着くことだと思います。そのためには、いろんな勉強をし、いろんな人の話に耳を傾け、いろんな小さなチャレンジが必要になるかと思います。ぜひ、少しずつやってみてください。
親と仕事をすることが苦痛ならば
一番大きな問題が、ここですね。親との相性です。
まず言っておきたいのは、どこともみんなそうで、親と仲良く事業をやっているというケースは残念ながらあまり見かけません。もちろんゼロではないと思いますが、私も長い人生の中でほとんどありません。一見うまく言っていそうに見えても、こっそり聞き出すと、いろいろ悩みがあるようです。
ところで、社会人経験のある方だと、たいていこんな人に出会うことはないでしょうか。
「あのクソ上司、やってらんねいよ。もうこんな会社辞めてやる!」
今日も、3年後も、5年後も、こういうひとって「辞める」って言い続けてることが多いと思います。一方で、本気でやめる人は、ある日スパッ!と辞めていったりする傾向はないでしょうか。
私たちもまた、本気で親と仕事する気が失せたなら、きっとある程度のところでやめる決断をしていると思います。それでもまだ会社にいるのは、なんだかんだ言って親の会社にいるメリット、あるいは親の会社を辞めるデメリットを感じているからです。嫌な部分もあるけど、得してる部分もあるわけです。
ここで考えたいのは、メリットを捨ててなおもうやめたいと思うならば、誰に言われるまでもなく会社を去っていると思います。けど、そうでないとしたらもう少しこのメリットを大事にしたいと思っている、ということだと思います。そうしたときに考えたいのは、「まあ、こういうメリットがあるから、こういう環境で仕事してるんだよな」ってこと。この「メリット」こそが親の会社で働く理由です。
この「メリット」を私たちは意識することなく、嫌な面ばかりにクローズアップしているから「やってられない」と思ってしまうのですが、実際は十分なメリットも享受しているはずです。そこを認識したうえで、そのメリットを捨ててもなお辞めたいのなら、辞めるという選択肢も考える余地が出てくるのではないでしょうか。案外私たちは甘い汁を吸っているのかもしれません。
さいごに
家業が好きか嫌いか、という話ですが、さらに言うと「自分で選択したという自主性が感じられない」というスタート地点での問題もあるかもしれません。自分で家業を選んで生まれてきたというわけではなく、選択肢がなかったことが人のモチベーションを奪うのはよく知られる話です。
とはいえ、そういったことに左右されることにあまり意味はありませんし、こういう環境にいるという前提は変えられませんが、この前提をどうとらえて、どう行動していくかは私たちにゆだねられています。その決定にはいろんな人からの反対意見もあるかもしれませんが、その人たちはあなたの人生の責任を負うことはできません。自分の人生の責任を負えるのは自分だけです。そんな観点で検討することが大事かと思います。
本稿では、そういった決定をする際にいろんな問題をごチャットして一つの問題としてとらえがちなところを、細分化し、そこそこグラデーションのない形で分類しておりますので、リアルな状況と完全一致というわけにはいかないかもしれませんが、検討の道筋の一助にはしていただけるのではないかと思います。
皆様が、ご自身の人生の重要な決断に、納得感のある結論を出せることを祈念しております。
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