仕事の関係である業種の創業社長とお話しさせていただく機会がありました。
彼を仮にA社長としましょう。
A社長は現在、72歳。
会社には44歳のご子息がおられて、学校卒業後別の会社にいったん就職し、家業に戻って18年になると言います。
業種は専門卸売商とでも言っておきます。
業界全体的に元気のない古い業界です。
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Contents
後継者・二代目社長を過保護にする先代社長
仕事から離れる決意ができない先代社長
私はA社長に単刀直入にこうお聞きしました。
「社長はいつになったら引退されるんですか?」
もう20年来のお付き合いをさせていただいているので、遠慮はありません。
A社長はおっしゃいます。
「75歳になったら引退しようとは思ってるんやけどな・・・」
なぜ今引退しないのかと伺うと、景気が悪くタイミングが良くないとおっしゃいます。
思わず私は言い返しました。
「いつになったら景気は良くなるのでしょう?」
A社長は、口をつぐみました。
私が推察するに、A社長は自分が仕事から離れる決断はまだできていないようでした。
頼りにならない後継者
「そろそろ譲らなければならないとは思うけど、どうも跡継ぎの息子が頼りなくてな」
A社長はおっしゃいますが、私は返す刀で
「たぶんそれは、いつまでたっても変わらないと思いますよ。
息子さんは、会社以外の世界を知っていますか?
社内の営業以外の役割をどれだけ知ってますか?
会社をどうしたいか聞いたことはありますか?」
A社長は答えます。
「いや、学校を卒業して数年他所で世話になったけど、それ以外はまったく」
つまり、ある意味においては超過保護状態なわけです。
まさに温室育ち。
日々の営業の繰り返しだけで、経営者として高い視座に立つことなどできません。
いつまでたっても他の社員と同列にしか働けないのではないでしょうか。
私は提案しました。
なんでもいいから、まずは異業種の社長の中でもまれる体験をお勧めするのがいいんじゃないですか?
A社長は悩みます。
「ライオンズやロータリーといった奉仕団体は、カネがかかる割には実入りが少ないしな・・・」
「いえいえ、お客さん探すつもりでそんなところ言ったら時間とお金の投資に見合うわけがありません。
息子さんの自覚を促すことが目的ですから、奉仕団体というより学びの会がいいでしょう」
「もしかしたら息子さんはそういった場で学ぶことに関心があったかもしれません。しかし、A社長は『売り上げの目標達成するのが一番や』的なことを言いそうです。何か言えばそう返されるのがわかっているから、息子さんはA社長に物を言わなくなったんじゃないですか?」
横で聞いてた奥様が口を開きます。
「そのとおりです!」
私の特技は、親子の経営の中で起こってる人間関係を割と的確にとらえることです。
創業社長が存在感を消す
後継者にとっては最後のチャンス
このA社長、私が想像するに、75歳になっても元気で、会社を譲ることはできないでしょう。
景気も決して良くならない(そもそも業種的に将来性が薄い)上に、あと数年しても後継者は頼りないままであると想像できるからです。
A社長に私は、「今と同じ努力を繰り返しても会社の売上は上がらないと思いませんか?なら、やることを変えるタイミングだと思いますけど」とお話ししました。
するとA社長は「もうこの年になったら新しいことは・・・」といいます。
いえいえ、それをやるのが後継者じゃないですか、と私は切り返します。
だからA社長はそれを後押しすればいい。
けど後継者はきっと、新しいことをやろうなんて言い出さないと思います。
なぜなら、そんな事を言おうものなら、「もっと営業成績をあげよ、それからだ」とA社長から言われると思っているからです。
前に向いて動けない状態です。
ただ年齢的にも、息子も新しいことをそれなりに精力的にトライするのは最後のチャンスともいえる年齢に差し掛かってきました。
また、失敗してもフォローできるとしたら、A社長も限界に近い年齢でしょう。
だからここで一歩踏み出したほうが良いのではないでしょうか。
私はそんな風にお話ししてきました。
もしそれでも後継者であるご子息が動かないなら、社長と奥様は数か月形態を持たず、旅行でも楽しんではいかがですか、とお伝えしました。
トップがいなけりゃ、何とかしなきゃいけなくなります。
今は頼りになるオヤジがい続けてるから後継者は無理に頑張らなくていいのです。
その傘がなくなれば、動かざるを得なくなります。
そんな経験も今ならできる年齢じゃないでしょうか。
「必要に駆られる」ということ
人間だれしも必要に駆られないと新しいことに踏み出すことはできないものです。
たとえば、新しいビジネスプランをスタートさせようということも、それなりに必要に駆られないとできないもの。
後継者に至っては、責任を持てと言われて持てるはずがありません。
その必要性にかられないとなかなかそういう意識付けはできないものです。
一方で、先代が存在として見えなくなると、自分が前に立たなければならなくなります。
そういう状態を一時出来にも作り出すと、驚くような変化が現れます。
もちろん、場合によっては最悪の結果になることもあるのかもしれませんが、それはそれで、遅かれ早かれ同じような結果が出る物なのではないでしょうか。
少し早く結論を見ておいて損はないのかもしれません。
そういった状況を創り出すには、創業社長は仕事から手を引く覚悟が必要になります。
これができていない創業社長が多いのが、事業承継がうまくいかない原因の一つといえるかもしれません。
少し話がそれましたが、後継者を育てる一つの方法は必要に駆られる状態を作るということです。
良かったらご検討ください。
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