後継者

賞味期限切れのビジネスを、誰が変えるのか? 後継者の責務

少し古いデータですが、日本経済新聞社が1996年に新設法人8万社の行方を調査したところ、
会社が残っている割合はこんな感じになるようです。

1年後は60%
3年後は38%
5年後は15%
30年以内に、0.02%になるといいます。

 

つまり、100社起業しても、一年持つのはせいぜい60社。
5年たてば、15社になるわけです。

ここから考えると、事業承継を行う会社の社歴は20年、30年の歴史があるところがほとんどでしょう。
つまり2/10000という競争を勝ち抜いてきた企業です。

 

これは二つの側面を表しています。
競争の中勝ち抜いた強さがあると同時に、古いビジネスである、という可能性があります。

この相反する二つの事実について、少し考えてみたいと思います。

 


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親の会社を継ぐ技術

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賞味期限切れのビジネス

ビジネスには、賞味期限があります。
例えば、任天堂の例を挙げるとわかりやすいでしょう。

任天堂は、1889年、花札製造業として創業しました。
大日本帝国憲法(現在の日本国憲法ではありません)が発布されたとし、明治22年のことです。
創業者が起業し、2代目がその基盤整備をしました。
そして、戦後、3代目がプラスチック製のトランプを販売、また、ウォルトディズニープロダクションとの提携により、これまで「大人の玩具」であったトランプを、子供向け玩具とすることに成功。

トランプ業界のリーディングカンパニーとなりますが、1970年代は厳しい時代に入ります。
そして1980年代になって、「ゲーム&ウォッチ」のヒットから、「ファミコン」という流れができ、今に至っています。

この歴史を見ていて、今も花札を扱っているとしたら、任天堂はここまでの成長があったでしょうか?
どんどん市場が縮小していったことは、容易に想像できます。

 

こういった事業の転換点というのは、どの業種にもあるでしょう。
任天堂のケースでは、それが国内の技術的な革新があったからかもしれません。
社会の変化であったり、法制の変化、政治の変化、様々な要因はありますが、企業は同じことを同じように、永遠に続けることは難しいのです。

その変化のスピードは、扱う商材によってさまざまかもしれません。
しかし、20年、30年続いたビジネスが、これから10年続けられる可能性はおそらく低いでしょう。

いくら動きの遅い業界だったとしても、違う業界が侵食してくるケースもあります。

例えば、印刷業界。

印刷業界自体、イノベーションは進んでいたのですが、専門家の道具であるコンピューターが、各家庭に安価で提供されてしまったことで、かなりの仕事を失っているという現実があります。
そこに、印刷通販のような新たな考え方が持ち込まれたことで、昔ながらの印刷業者はかなり厳しい状況に追い込まれているように聞きます。
しかも、「エコ」や「情報漏えいリスク」の問題が浮上したことによる、ペーパレス化はそれをさらに加速しているでしょう。

過去にしがらみのないベンチャー企業は、身軽に新たな仕組みを業界に持ち込みます。
特に、インターネットの存在は非常に大きいと思われます。

社内に破壊者がいなければ、企業は変わらない

とはいえ、数十年ビジネスを継続するという力は並大抵のことではありません。
そういう意味では、事業承継をまじかに控えた企業には、これまでの激戦の中を生き抜いた体力があります。

少し極端な表現になってしまいますが、
●数年で大半が消えていく可能性の高いベンチャー企業
●コンマ数%の確率で生き残った、古い体質の企業
という二つのタイプの企業がこの日本の市場で併存しているという構図が見えるような気がします。

 

古い体質の企業は、過去数十年で培った体力があります。
しかし、残念ながらその体力を食いつぶしてしまう事も少なくありません。
大企業になってしまえば、経営においても人の新陳代謝がありますが、中小企業の場合はそこが固定化されてしまいます。

これは、同じビジョンで腰を据えてビジネスできる強みであり、変化に弱いという弱みでもあります。

強力なリーダーシップで会社をけん引してきた創業社長に、古参社員がたてつくことは難しいことが多いでしょう。
そこに一矢報いるのは、おそらく同族継承者の役割ではないかと思います。
任天堂のケースでも、新たなビジネスの陰に世代交代があったとすれば、世代交代=ビジネスモデルの転換点といえるのではないでしょうか。

 

事業を受け継ぐことは、リスクの少ない起業

今、後継者として会社を継ぐか?という決断に迫られている後継者の方がいるとするなら、こんなお話が参考になるのではないかと思います。

星野リゾートの再建で有名な星野佳路さんが、「星野佳路と考えるファミリービジネスマネジメント 1 継ぐべきか、継がざるべきか」という本のなかでかたっている言葉として、「事業承継は、リスクのない起業」という言葉がありました。

この言葉は、正直なところ私の発想になかった言葉です。

ともすれば、「継承」にフォーカスしがちな事業承継ですが、ただ受け継ぐという思いだけではうまくいかない。
「起業」としてのチャレンジが後継者には求められている、という事を明瞭に表しています。

後継者が、親の事業を継ぎたくない、と考える理由は様々でしょう。
その中の一つに、古臭い、格好悪い、といった考えが含まれていることも否定できません。
そう考えると、今ある基盤を利用して、新しくかっこいい事業に育てるという選択肢があるとしたら、とても面白い、やりがいのあることではないでしょうか。

逆に考えると、先代が非常に先進的で、常に会社の内容が更新されていればよいのですが、そうでない場合は、それを大きく変える役割を後継者はにないます。
そこに必ず衝突は発生すると考えた方がいいでしょう。
それでもなお、やってみたい、と思うなら、ケンカ上等でその世界に飛び込んでいただければ、と思います。

自分の親が事業を営んでいて、その家庭に生まれたことはきっと偶然ではありません。
会社を生きながらえさせるためでもあり、あなたが社会に影響を与える、大きな器がそこにあるのです。

ぜひ、利用したいものですね。

 

 

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