後継者

同情で親の会社を継いではいけない3つの理由

なんだか、親が困っている。
ハッキリとは言わないけど、自分に会社を引き継いでほしいと思っているような気がする。
そんな背景があって、親の会社を継いだ人はけっこう多いように思います。世の中の美談というイメージでいうと、親の遺志を継いで親の会社を継ぎ、大きく育てました!というのがもてはやされるかもしれません。もちろん、それがあなたの夢ならそれもアリだと思います。しかし、単なるイメージで作る理想像なら、一度立ち止まってしっかり考えておく必要があるのではないかと思います。

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親子の経営継承には越えなければならない山がある

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なぜ親は子に継がせたがり、子は親の会社を継ぐのか

親子の事業承継って、親子だからうまくいく、というのが実情を知らない人の考え方だと思います。しかし、現実は逆です。親子だから大変です。なぜなら、単に「同じ仕事をする」ということがテーマに見えて、実際はそんな生易しいものではないのです。

多くの場合、親は自分の作った会社を子どもに継がせたがります。その理由をハッキリと説明している人は恐らくいないでしょう。
私が考えている理由の中で最も根源的なモノをお話しすると、「親は自分の人生を子どもに認めてほしい」という思いから会社を継がせたいともいます。そのことがわかる例として一つの事例を考えてみましょう。たとえば、親が経営者ではなくサラリーマンだったとしましょう。このサラリーマンの親を持つ子供が、親と同じ道を目指したとします。そうすると親はどう感じるでしょうか?まあよっぽど変な業界でない限り、「子どもが自分と同じ道を歩むっていうんだ」なんて喜ぶんじゃないでしょうか。この場合は会社を継ぐとか継がないとかの問題でなく、単に同じ道を歩むというだけなのに親は喜ぶことが多いと推測されます。それはどういうことかと考えると、こんな風に結論付けられるのではないでしょうか。

親がやってきたことを、子どもが目指すことで、子どもに認められたと親が感じられるからうれしいのです。

そして、後継者も同じことが言えます。
すごく印象に残っているのが、長嶋一茂さんの本の中でこのようなことが書かれていました。空手と野球、同じくらい頑張ってきたけど、いよいよどちらか一本に絞ることを考える段階になってきたとき、空手を捨てて野球の道に進んだというのです。たぶん、普通の感覚なら、あの国民的スーパースターの長嶋茂雄さんの息子が、同じ世界に入ればそりゃあ親と比較されて大変なのは普通にわかるはずです。しかし、一成さんはあえてその道を選んだわけです。これはどういうことかというと、子どもは親の歩む道をトレースすることで、親に喜んでもらいたいのではないでしょうか。

こういった構図がベースにあって、親は子供に会社を継がせたがり、
子供はついつい(?)親の会社を継ぐ、という方向に偏りがちです。

余談ですが、近年、親の会社を継がない子供が増えているのは、たとえばゆとり世代という、粉骨砕身会社のために働いた親世代への反発を持っている世代ということがあったりするのかもしれません。もっと軽い立場で仕事をしたい、がつがつせずにマイペースで生きていきたい、という特質がそうさせるのかもしれません。

無機質でビジネスライクな関係ではありえない

親子であるからこそ、会社では親子であることを避けようとし、ビジネスライクな関係を目指します。しかし、そんなに器用に立場を変えられるわけもありません。そうすると極端に厳しくなったり、発言が人格否定的になったりすることもあります。また、他人なら耐えられる傍若無人振りも、同族だと我慢がならないこともあるでしょう。

そもそも、親は子供に認めてほしいと思っているし、子どもは親に認めてもらいたいと思っている。お互いが共にお互いの評価に依存しあっている状態があります。こういった心理背景が、双方、特に目下になる後継者の心を疲弊させます。親は子供に認められなければ、すでに地位もお金もありますから、取引業者やその他の人たちに認められて自分を癒すことが可能です。そして、従業員の関心も自分に向けられるよう無意識に行動します。実はこれが、親はなぜか後継者の方針と逆に進むことが多い原因です。後継者の方針に反対することももちろんあると思いますが、賛成していても後継者に協力的でないように見える行動を起こすことがあるのです。それは、後継者の後に自分がついていくということではなく、自分が指示をし、その指示を受けて動く従業員の服従をみることで親は「自分が認められている」ことを実感するのです。

一方後継者は、「認められたい」という思いを癒す場所が会社には無かったりします。その結果、例えば同業種交流や異業種交流などに精を出しすぎるようになったり、会社への関心を急速に失ったり、場合によってはひきこもりのように心を閉ざしたりすることになるのです。

こういった割とドロドロした心理背景が、実は同族会社の事業承継にはつきものになります。ある程度組織が大きくなっていればそういった感覚は薄まる部分もあるかもしれませんが、必ずしもそうとも言えないようです。数名の規模の会社でも、数百名規模の会社でも、似たような事件が社内で起こっています。

親子の事業承継のポイントは「事業の引継ぎ」ではない

Mylene2401によるPixabayからの画像

親子の対立はビジネスのやり取りで起こるものではない

ここまで見てきたとおり、親子での会社の継承においてよくみられる「親子の確執」はビジネス上の考え方の不一致で起こるものではありません。もちろん、表面上は戦略の違いなどもあるのですが、そんな事であれば話し合えば妥協点は見つかることが多いものです。しかし、親子の関係のなかでは「自説を相手に認めさせる」ことで、自分のアイデンテティを確保するという裏の目的があるため、引きさがることができないのです。結果として血みどろの戦いが勃発しがちです。

さて、ここで考えていただきたいのは、単なる「同情心」でここまでの修羅場に足を踏み入れるのがありなのか、なしなのか、です。
多くの後継者の方は、親の会社を継ぐ、というと単に「親のやっていた仕事を自分が変わってやる」というイメージでしょう。そこにはビジネススキルの問題だけがあって、そのスキルを高めさえすれば何とかなるだろう、という見込みでやり始めてしまうケースがほとんどではないでしょうか。しかし実際は、後継者にはある大事なことが求められるのです。

同情心から親の会社を継いではいけない3つの理由

冒頭にお話ししたとおり、親が困っている気配だ、親が自分に会社を継いでほしそうだ、そんな思いで同情心から事業を継承してはいけない理由をここで考えてみましょう。

まず一つ目。
これは、単なる職業選択ではない、ということです。そして、一度その道を選ぶと、引き返すことは普通の会社を辞める事から考えると難易度は高いと言えます。

そして二つ目。
親子経営における後継者には、ビジネスにおける知識やスキルのみならず、人間的な成長が必須となります。なぜなら、親との関係性の中で今まで受け入れられなかったものを受容する器の大きさが必要だったり、目の前に現れる痛みに対して、そこそこ鈍感になることが求められることが多くなります。自分と向き合うことが出来なければ、後継者として「幸せ」な人生を生きることは難しいと思います。

最期に三つ目。
一つ目、二つ目を含めた総括的なお話となりますが、同情心、つまり他人の意向で務まるような立場ではないということです。同情心から始めると、必ずどこかのタイミングでうまくいかないタイミングが出てきます。その原因は「自分がやりたくてやったわけではない」という逃げ道が残っているからです。一方、同情心というのは「親のために」という逃げ道になります。この逃げ道があるうちは、そもそも自分と向き合うことができず、苦しいところをぐるぐる回る時期が長くなります。(私がそのひとりです)

少しボヤっとした表現で分かりにくいかもしれませんが、わかる人にはわかるんじゃないかと思います。

他人の人生の責任を取ろうと思ってはいけない

少し冷たい話のように感じられるかもしれませんが、親の人生は親が自分で責任を取るべきです。だから同情するというのは、ある意味失礼に当たります。親が自分の人生に責任をとることができない、という前提に立っているからです。後継者の話のなかにはたとえば「社員のためにこうでなければならない」という方もいらっしゃいますが、終局、社員さんの人生もまた、社員さんそれぞれが負うべきものです。その責任を自分が持てると考えることは、ある意味、おこがましいと言えるのではないでしょうか。

たとえば、会社をつぶしてしまったとしましょう。その時に社員さんは仕事先を失います。このあと、奮起してより良い勤め先を見つけたり、自分の技能を活かして起業することもできるし、単に路頭に迷ってあたふたすることもできます。どっちになったとしても、社員さん自身にとってはとても大事な学びの機会ではないでしょうか。そんな社員さんの人生の分岐点を奪うために一生懸命になるというのも、なんだか本末転倒な気はしませんか。

話が飛躍しましたが、親が困っている、親が後継者に期待するのは親の勝手。後継者がどう行動するかは後継者の勝手。まずは自分の人生に全責任を持つことが大事なのではないかと思います。だから人の期待に応えようという行動パターンではなく、自分は本当はどうしたいかを問い直すことが大事なのではないかと思っています。同情で親の会社を継ごうとすれば息切れします。だから、どこかのタイミングで考え方の整理が必要になります。これだけを頭の片隅に置いておいていただくと、「ああ、この事を行っていたんだな」という時が来るかもしれませんね。健闘を祈ります。

 

 

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