親から自分の考えを否定された時、後継者はどう対処すればいいのか?

親子で事業を営んでいると、こんなシーンに出くわします。
後継者(子)としては、絶対こうすべき!と思えることに、
親がダメ出しをするパターンです。

こんな時、後継者はどう対処すればいいのでしょうか?

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意見の食い違いは「話し合い」では解決しない!?

お互いが見ている世界

親子で経営をしていると、意見の食い違いはよくある話です。
その場合、世間的には「よく話し合うべき」と言います。
しかしそうすると、こんどは感情的な衝突で終わってしまう。
そうなると打つ手がないように感じられることも多いでしょう。

では、未熟な後継者としては、道を譲るべきなのでしょうか?
常に親は正しいのでしょうか?

しかし、よく考えてください。
争いになるほどの意見の食い違いがあるというのは、それぞれが「自分が正しい」と思っているからです。
逆に言えば、「自分は正しくて、相手は間違っている」という考え方がベースになります。
だから戦ってでも相手の考えをねじ曲げる。
これが、「話し合い」というもののゴールなのです。

誰も自分の意見を否定されたくない

一方で、後継者としてのあなたが、親から「お前は間違っている」と言われたとしましょう。
たいていのことは、譲歩せざるを得ないと考えるかもしれません。
しかし、ここだけは譲れない。
だからこそ、イヤな思いをしてまで戦って、勝ち取りたいわけです。
いえ、むしろ否定されたことで、強い反発心が芽生えるかもしれませんね。

結果的に、後味の悪い思いをしたり、ますます関係が悪化したりするわけです。
こうなると、毎日が陣取り合戦。
息をつく間もなくなり、会社の中でひとときたりとも油断できなくなってしまいます。
そりゃあ、疲れもしますよね。

しかし冷静に考えたとき、親も同じ状況にあるのではないでしょうか?
あなたが何か意見をさしはさむごとに、親としては身構えてしまう。
普通の状態なら受け入れられる話も、常に緊張状態だから素直に認めることができない。
思わず口を突いて出るのは、人格攻撃の言葉だったりするわけです。
無意識に、相手を徹底的に痛めつける言葉や方法をお互いがとり始めるのです。
これが親子の確執が起こるカラクリです。

我を通すことは相手を侵害する行為

相手を服従させる?

さて、意見の違う者同士が意見を戦わせるとき、そこに必ず勝ち負けが生じます。
どちらかが、どちらかの意見に相手を従わせるのですから。
となると、片方が意見を通し、片方が意見を曲げる。
そして「話し合い」の目的は、相手の心を折れさせることにあります。

これはまさに、戦争ですね。
「丁寧に説明をしてわかってもらう」といえばきれいに聞こえますが、
やってることは相手をひれ伏せさせる行為です。

話し合い、説得は、相手を変えようとする行為。
最近「危険運転」が話題ですが、無理やり相手の進行方向を遮り、ハンドルを切らせることと何ら変わりはありません。

人は自分ではなく相手を変えようとする

逆に言えば、意見が合わない時、自分が変わるという選択肢もあるわけです。
しかし、それはできない、という方がほとんどです。
ということは、親子の話し合いでは、親もまた意見を変えることはできないということは想像できます。
そんな「難しい事」を相手に強いて、自分の正しさを主張しようとしている行為は、ある意味横暴にも感じられはしないでしょうか?

しかし、後継者には正義があります。
「会社のためを思うなら、オレの意見に従うべきだ」と。
それ、たぶん、親も同じことを信じているんじゃないでしょうか。
つまり、双方が信念レベルで自分が正しい、だから相手が間違いだ、と思っているわけです。

そりゃあ争いにもなるわけですね。
侵略戦争ですから、勝ち負けの話になります。
しかし、それ、どこかおかしくないですか・・・?

本当の「目的」はどこにあるのか?

経営に絶対的に正しいことはない

ある世界的に有名な経営コンサルタントがこんなことを漏らしていました。
「それなりに自信をもってやっているけど、私のアドバイスも100発100中ではない。言った通りやってくださってもうまくいかないことはある」
どんなに熟練の経営者も、コンサルタントも、常に正解を導くことはできないのです。

また、1940年頃のアメリカでは、識者と言われる人がこんなことを言っていたそうです。
「ながらで楽しめるラジオにかわり、ながらで見ることができないテレビが国民的な娯楽になるはずがない」と。
しかし結果は、皆さんご存知の通りです。

どんな時代においても、絶対に正しいと言えることは何一つありません。
そうなると、親子経営で親が正しいか、子が正しいか、という議論はまったくの無意味なのです。
そこに「行司役」みたいな人がしゃしゃり出て、勝ち負けを判定するなんて言う話があるとすれば、愚かとしか言いようがありません。

親子の確執の議論の先にあるものは?

親子で経営上の意見が食い違うとすれば、その議論の目的は何なのでしょうか?
本来的には、会社が良くなること、会社が発展することこそがその議論の最終到達地点になるはずです。
しかし現実は、双方の陣取り合戦に成り下がってしまっているのが現実です。
お互いが自分の正しさを主張し、お互いを傷つけあっている状態。
大きな視点で見れば、単なる仲間割れです。

よくあるのが、こういった確執を起点として、双方が訴訟合戦を繰り広げるパターン。
相手を傷つけ、会社のブランドを毀損させ、最後に何が残るのでしょう。
たぶん、勝訴側が自分のちっぽけなプライドをかろうじて守れたというレベルでしょうか。
いえ、実際は、買った側も罪悪感を背負うことになります。
つまり、何も生み出さない不毛な争いをしていることになります。

合意点がどこにあるか?

親子の話し合いは合意点を見つける方向へ

では、どうすればいいのでしょうか。
仮に親子で話し合いをするには、どこが歩み寄りができるポイントか?ということです。
これを心理学者のトマス・ゴードン博士は「勝負なし法」と呼んでいます。

相手が勝つのでもなく、自分が勝つのでもない方法。
つまり、三つ目の案を出すことを推奨しています。

その際には、お互いの「目的」を明確にする必要があります。
たとえば、子が「会社のホームページを作りたい」といっていて、親が「そんなものはいらない」と言ったとします。
これはあくまで手段における議論です。
じゃあ、そもそもその目的はどこにあるのか?を追求してみます。

その目的が、会社の信用やブランドの構築だったとしましょう。
では、ホームページではない方法で、それを実現する方法はないのだろうか?
親はホームページを作らせない目的は、「コスト対効果」の問題だったとします。
では、コストを低く抑えて、後継者の目的を達成する方法はないだろうか?
そんな方法を探っていきます。

勝負なし法を実践する前に・・・

言葉にすれば簡単ですが、現実には少し複雑な要素が絡み合います。
それは、双方の言葉に、相手を押さえつける圧力があるからです。

たとえば、親が「最近売り上げが下がっているな」とつぶやいたとします。
これが後継者の耳に入ると、後継者は自分のことを批判されたと感じることがあります。
自分の働きが十分じゃないから、
自分がしっかりと営業成績を上げないから、
自分が会社の営業部を動かせてないから、
それを責めているんだ、ととらえることがあります。

親はそのつもりもあったかもしれませんし、そうではなく、単に感想を述べただけかもしれません。

逆に、後継者が「何か新しいことを始めないと」とつぶやけば、親にしてみれば自分が作り上げたものを否定されているように感じることがあります。
後継者としては、単に自分のやるべき課題をつぶやいただけなのに。

このように、言葉は発した本人が意図しないところで、相手の状況・立場・心理状況によって相手にプレッシャーを与えます。
このプレッシャーを与えられると相手は反発しますから、フラットな議論のためにはプレッシャーを与えないものの言い方を覚える必要があります。
その参考となるのが、心理カウンセリングの世界で使われる、アイ・メッセージと言われるものです。
これを説明し始めると、相当な量になりますので割愛しますが、気になる方は調べてみてください。

心理的安全性

言葉の使い方は一つのテクニックですが、もう少し大きな枠組みで見ると相手に心理的安全性を確保する、というのが親子関係に必要な本質です。
そもそも親子というのは、小さいころから子は親に従わされてきました。
これは愛ゆえのことではあるのですが、子どもが自立し始めると親が上からモノを言う感覚は邪魔なものに感じられてきます。
常に「親は小言を言うもの」という感覚が染みついているため、親が口を開けば自分への小言だととらえ、即座に緊張状態に入ります。
つまり、心理的に安全とは言えない状態に陥るのです。

親は親で、子どもは親に従うべき、という感覚を長い事経験しているため、そこに子が反抗し始めると身構えがちです。
とくに、双方が同じ会社で働く場合、親はいつ自分の身分が奪われるか、という不安を感じているので気が気ではありません。

こういった状態で、フラットな話し合いはできません。
双方が、ハラの探り合いをして、本音を話すことができないのです。
そのためには、お互いがフラットに話せるよう、「何を言ってもOK」という状況を創り出す必要があります。
そしてそこを目指すなら、相手の言動ひとつひとつにビクビクせず、ゆとりをもって対処することが重要になります。

そこで必要なのは、自分の弱さをさらけ出すことです。
「自分は営業が苦手だ」
「数字の感覚が今一つつかみきれない」
「人とのコミュニケーションが思うようにできない」
などといった自分の弱さを隠して強がろうとするのが人間です。

そこを自分でカミングアウトしてしまう。
「だから、その部分はサポートしてほしい」
と正面からお願いすればいいのです。

「告白」の連鎖

一人が隠し事を話し出すと・・・

こういった弱さを自分で認め、口にして、サポートを求めるというのは勇気のいることです。
しかし、組織の1人がこういった自分の一番知られたくない部分を認め、口にするとそれは周囲に伝染します。

子どものころ、修学旅行なんかで「クラスの〇〇ちゃんが好き」なんてことを一人がカミングアウトすると、みんな次々に秘めていた思いをカミングアウトし始めた、なんてことを経験したことはないでしょうか?
人はほとんどの場合、秘密を隠そう隠そうとして身を固くしています。
しかし、誰かが、秘密をオープンにすることで、「実は俺も・・・」なんていう告白の連鎖が起こる事がよくあります。
これはお互いが、普通は人に言わない弱い部分を見せることで、信頼関係ができていく過程です。

親子においても、そしてその周囲の組織においても、お互いが弱さを見せあえることがとても重要になります。
その一番手となるのはだれでしょうか。
誰かが始めなければ、その組織ではだれもが秘密を腹の中に持ち、お互いがけん制しあう組織のまんまです。
初めに弱みをカミングアウトした人こそが、その組織のリーダーとなりえる資質を持っている、とは私は考えています。

オセロのように周囲が変わる

みんなが秘密を保持したまま、けん制しあっている組織に、「秘密を明らかにせよ!」といっても何も変わりません。
これがまさに、親子が自己主張をしあって喧嘩している状態です。
しかし、1人が弱みを見せた瞬間から、相手の対応は変わります。

それを象徴するような、私自身が体験した小学生時代のエピソードがあります。
団地住まいでしたので、学校が終わると団地の友人でいつも野球をやっていました。
つねに誰がピッチャーで4番を打つかで争います。
しかし、その中の一人が、こういいました。
「俺は、長打力もないし、投手もできない。けど足は速いから1番バッターでセンターを守るよ」

そのとたん、花形ポジションを奪い合ったメンバーに変化が現れます。
「俺は長打力はあるけど、ピッチャーとしてはコントロールがな・・・」
「じゃあお前は、4番でキャッチャーだな。俺がピッチャーをやるよ」

まさに、オセロの角を取ったかのように、黒い駒がパタパタとすべて白い駒に変わったかのように見えた瞬間でした。
初めは花形ポジションを奪い合っていたのに、1人が自分の弱みを明らかにし、適切な選択肢を提案した結果、みんながフラットに話ができるようになったのです。
奪い合いから、チームの勝利という目的に意識が変化したのです。
これは子どもの世界だけの話でしょうか?
いえ、大人においても、企業という組織の中でも同じことが起こります。
なにしろ、そのことをハーバード大学の偉い先生がそんな研究成果を発表しているのですから。

奪い合いから助け合いへ

目的に立ち返ってみよう

親子の確執の中心にあるのは奪い合いです。
お互いの地位、権力、プライドを奪い合っている状態なのです。
双方が正しさを主張する一方、そのような騒動は会社のチームワークを揺るがします。
つまり、親が子に事業を継がせようとするその目的を逸脱した行為に発展していきます。

その奪い合いは、「自分を守る」ことから発生します。
そこに対する私の提案は、自ら武装解除せよ、ということです。
まずは、自分の意見へのこだわりを捨て、手段ではなく目的に立ち返る。
次に、相手の言葉をフラットにとらえる努力をする。
そして、自分が発する言葉に細心の注意を払う。
さらに自分のダメだと思う部分をさらけ出し、協力を請う。
それらを総合して、当初提案した手段とは違う形であったとしても、目的に合致した変化を創り出す。

この過程は、今目の前にある問題のみならず、親との関係、そして周囲との関係を改善する礎にさえもなりうると思います。
なにより、気づけば自分自身が相当変化する起点となるはずです。

 

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