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事業承継、荒療治(?)の事例

tabi

 

 

 

「難しいな・・・」

そんな印象の多い、事業承継。

しかし、当然、成功例も多数あります。

 

一つは、しっかりした組織化が出来上がっている場合。

この場合、会社の売り上げは10億円を超えていることが多いようです。

創業者の力量や、個性だけでは立ち行かなくなるのが、売り

上げ10億円ライン。

ここを超えるためには、創業者は一歩引いた形で会社にかかわる必要性が出てきます。

このケースでは、後継者の力量や、従業員からの人望が試されるステージになります。

後継者がどれだけの経験を積み、どれだけの力量を発揮できるかがキーとなっていきます。

 

一方、売上10億円に至らないケースでは、まだまだ会

社の中で創業者の個性が色濃く反映します。

場合によっては、創業社長の号令が、会社のすべてを決するステージといえるかもしれません。

この規模の企業においては、後継者の力量以前に、創業者がどのように従業員や後継者に

仕事を任せていくか?という事が重要となるようです。

 

ある経営者の苦しみ

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ある企業にご訪問した際、創業社長がおっしゃいました。

その創業社長は、齢75歳。

非常に、頭の回転の速い方で、自社のビジネスを堅実に育て、

一代で相応の資産を築きあげた方です。

 

今も、元気に活躍されていますが、病気の経験もあり、

そろそろ引退という文字が頭をよぎっています

形式上、ご子息に代表権を譲ったものの、未だ最前線で采配を振るっておられます。

 

その方が、ふと漏らされました。

「これからは若い者の時代だ。

だから、若い者に仕事を任せていかなければならないのはよくわかる。

実際、わしもだんだんと無理ができなくな

てきている。」

続けておっしゃいます。

「とはいえ、家でぶらぶらするわけにもいかんから、会社に出てくる。

若い者に任せた以上、口を

出してはいかん、と思うのだけど、

どうしても口が出てしまう。

 

ご本人も随分つらいご様子です。

その言葉を、横で新社長(ご子息)が苦笑いをしながら聞いている様子が印象的でした。

 

 

興味深いアイデア


近くにいると、ついつい口を出してしまう・・・。

それなら、とある企業の経営者は決断しました。

 

3か月間、海外旅行に出る。

 

さらに、「3か月後、自分が戻ってきて会社が残っていたら、代替わりだ。」と

おっしゃいます。

 

あまりに破天荒な決断に、私もびっくりしました。

しかし、実は、結構理にかなっているのです。

 

 

まず、後継者は創業者に甘えることができません。

目の前にどんなことが起ころうと、自分で決断し、

自分で解決していかなければなりません。

これは、後継者を経営者として育てるには、うってつけの環境です。

まさに背水の陣

 

創業者にとっては、きっと不安も多い事でしょう。

なにしろ、まだ若い後継者にすべてをゆだね、会社から距離を取るわけです。

国内でいるならまだしも、海外であれば携帯電話はつながるのでしょうが、

おいそれと電話するわけにはいきません。

しかし、この経営者が純粋に願っているのは、後継者の成長だと思います。

でなければ、こんなことはできません。

 

確かに、お客様への責任もありますし、

社員への責任もあります。

しかし、それをすべて含めて後継者を信頼し、任せきるわけです。

この勇気を私はたたえたいと思います。

 

実際のところ、すぐに旅立たれるわけではなく、一定の”猶予期間"を取られているようで、

いざ出発!というその日まで、後継者は必死になって準備をされることでしょう。

 

実は、敢えて、会社から距離を取る、という考え方を実践される方は意外と多いようです。

ある方は、1週間出張に出たきり、全く携帯電話を取らないようにした、

といいます。

確かに、帰ってきたら大変だったそうですが、皆、それなりに自分で考え、

物事をきちんと処理していたそうです。

そういう意味では、組織を成長させるもっとも手っ取り早い方法が、

社長との連絡手段を断つ、という事なのかもしれません。

 

 

では、自分は?


その時に、気になるのが創業者の心のよりどころです。

苦しいながらも、人生のすべてをかけた会社経営が、ある日突然手元からなくなってしまうとなると、

えも言えぬ恐怖を感じる事もあるかもしれません。

時間の流れの中で、必要なこととはいえ、なかなか心の折り合いがつかない事もあるでしょう。

 

先の例のように、旅行に出ると決め、

そのことが自分にとって大きな楽しみであればよいのですが、

働きづめだった創業者にそのような、夢中になれることは少ないかもしれません。

 

ここで、一つ参考になる事例をご紹介します。

ある経営者の会で一緒だったメンバーが、一緒に会社を興されたそうです。

それは、飲んだ勢いだったようですが、これが結構いいのです。

地方の社長さんたちなので、彼らのミッションは「地元の振興に寄与する」というものでした。

少しずつお金を出し合い、地元の特産物なんかをPRしたり、

売上を上げる手伝いをしたり。

 

事業に成功し、ある程度財と、社会的地位を得た経営者は、

引退後も、何らかの形で地域や社会とかかわりを持ちたいと思う気持ちは少なからずあるようです。

その年齢になってからいきなり、こういった企画をするのは難しいかもしれませんが、

様々な経営者と気軽な横のつながりを持ち続けることで、

こんな楽しい企画が出てくるのかもしれませんね。

 

まとめ


創業社長と、会社の精神的距離を取るのに、物理的距離を取る。

この方法は、もっともシンプルといえるかもしれません。

一方で、顧客対応の一時的な低下は発生する可能性が高いと思われます。

 

そのためには、一定の準備期間を経て・・・

という事が合理的には思えますが、多くの場合は結局ギリギリにならないと

動き出さないというのが現実でしょう。

 

メリットとデメリットを天秤にかけて検討するのが良いかと思われます。

 

一方で、創業社長の「次のステップ」については、早い対応が必要と思われます。

ある日突然、「次の人生をどうするか?」と考えたところで打つ手は限定的です。

ですから、今のうちに様々な分野に知見を広げ、

精神的なシェアを現状の「ほぼ100%を今の会社に負っている」状況から、

徐々に小さくしていくことが肝要かと思われます。

 

会社の創業者への依存度を減らし、

創業者の会社への精神的依存度を減らす。

これが、事業承継の根幹にある考え方です。

 

 

 

 

 

 

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