「後継者は厳しく育てろ!」は本当か?

後継者育成における、一般的な常識として、

後継者は厳しく育てるべき!

というものがあります。

 

実際、私自身、どちらかといえばほかの社員に比べ、

先代からは厳しく接せられたように記憶しています。

営業会社ですから、ただただひたすら飛び込み営業です。

 

そのことが、後の糧となる事ももちろんたくさんあります。

しかし、それが最善の方法なのでしょうか?

今回は、後継者がめでたく入社したのち、先代の取るべき方針について、

考えてみたいと思います。



「常識」に、根拠はあるのか?


事業承継において、後継者育成は非常に重要な問題です。

だから、創業社長は、後継者育成について頭を悩ませます。

しかし、残念ながら、創業社長は忙しい。

人を育てることについて、体系立ててその技術を学ぶ時間はない事が多いでしょう。

だから、経験則から後継者を育てるわけです。

そこで、一つ問題があります。

 

それは、

一般社員とはちがい、後継者は社内外から認められなくてはならない

という思いを強く持たれている創業者が多いようです。

 

恐らくその考えは正しいでしょう。

また、一般社員とは違った学びが後継者には必要となります。

その結果、後継者に、一般社員とは違った期待値を込めて接することになります。

 

もう一つ、重要な視点があります。

それは、世に流布する「常識」です。

後継者は、他の社員と区別し、厳しく育てなければならない。

そういった、常識が世の中に存在することを否定する方は少ないでしょう。

 

すると、周囲の人は訳知り顔でアドバイスします。

「そうかぁ。息子さんが入社されたんですね。それは素晴らしい。

しかし、社長。気を付けてくださいね。息子に甘い顔してると、大変になるからね。

厳しく育てないといけませんよ。」

なんて風に。

 

良く考えてみてください。

そのアドバイスの主は、実際に後継者を育てたことがあるのでしょうか?

逆に、自分が、厳しく育てられた後継者なのでしょうか?

そうでなければ、どんな根拠を持ってそのようなアドバイスをするのでしょうか?

恐らく、明確な根拠はないのでしょう。

であるとしたら、それを実行する前に、そのアドバイスは正しいのか、ご自身で考えて頂くことが必要です。

 

とはいえ、こういった「常識」が流布するには、何らかの理由があるのでしょう。

その理由を少し考えてみたいと思います。

 

 

 

 

「厳しくしなくてはならない」理由


さて、後継者を厳しく育てなくてはならない、という常識。

こういった考え方が主流を占め始めた理由として、私は、

後継者と他の社員を区別しなければならない

という考えに基づいていると考えています。

 

その動機の中で最も強いものは、特に親族間継承だからこそ出てくる問題でしょう。

それは、次の二つの言葉に集約されるのではないでしょうか。

  1. 親子の甘えを断ち切らなくてはならない
  2. 他の社員が後継者を認めなければならない

恐らく、この二つの理由は、真理をついていると思います。

親子間継承においての、後継者育成で最も難しいポイントでしょう。

 

この二つが克服できれば、確かに、後継者育成はかなり完成に近づくと思われます。

しかし、問題は、

「厳しく育てる事」が、この問題の解決策になるか否かです。

残念ながら、必ずしも有効ではない、というのが私の考えです。

 

 

「厳しく育てる事」の弊害


後継者を厳しく育てる、といった場合に、避けては通れない弊害が発生します。

その内容について、少し考えてまいりましょう。

 

他の社員と区別することの弊害
厳しくする、という事は、他の社員と区別する、という事になります。

他の社員から見た時に、

「自分は、創業社長からは優しくされてるからOK。後継者は大変だよなー。」

という考えになると思いますか?
答えは、NOです。
これは、

兄弟への承継にたいする私の回答

でも少し触れていますが、厳しくするにせよ、ゆるくするにせよ、区別は区別です。

これは、立場を変えると差別になります。

 

例えば、Aさんに厳しく接し、Bさんに優しく接したとします。
Aさんは、干渉されないBさんをうらやみますし、

Bさんは、Aさんが「気に留められている」という事をうらやみます。

 

こうやって文章にしてしまうと、子供じみた話に見えてしまうかもしれません。

しかし、これが現実なのです。

これが、社内に無用の軋轢を生みます。

「やはり後継者だから、創業者に構ってもらえるんだよね。」

という他の社員の思いは、一つ間違うと後継者攻撃に移ります。

特に、向上心のある一般社員ほど、こういったことには敏感に反応します。
つまり、安易に「後継者だけを厳しく」育てるというのは、非常に危険な行為なのです。

社内の派閥の溝を広げ、後継者を孤立させてしまう事にもなりかねません。

言うまでもなく、逆に後継者だけ優しく、放任で、というのもご法度です。

 

 

後継者の成長がストップする

これは、意外に思われるかもしれませんが、厳しく育てることで後継者は成長が限定的となります。

なぜなら失敗を恐れるようになるからです。

例えば、特定の技術だけ覚えればいい、という事であれば厳しく育てるのも一考です。

職人さんは、そういった教育法が取られることが多いようです。

 

創業社長のコピーを作りたいなら、厳しく育てるのもいいでしょう。

しかし、できるのは、創業者のコピーの出来損ない・・・となる可能性が大きい。

なぜなら、創業社長はそれだけ、高い能力を持っているからです。

卓越した、職業経験と推進力を、後継者に超えさせようという所に無理があります。

 

後継者は、それがたとえ血族であったとしても、固有の個性を持っています。

その個性は、必ずしも親である創業者と一致するわけではありません。

コピーは、あくまでコピーです。

オリジナルを超えることはできません。

後継者は、自分の持つオリジナリティを発揮できる経営を考えなければならないのです。

そして、多くの場合、後継者がもつオリジナリティは、時代にマッチしているのです。

なぜなら、日本経済の中心、つまり御社の顧客は、後継者世代にシフトしているからです。

 

 

結論


よく言われる後継者育成の常識、「厳しく育てろ!」という言葉は、実は弊害が多い。

まずは、このことを認識する必要があります。

とはいえ、真逆の発想で温室で育てなさい、というつもりもありません。

 

この問題は、二つの視点から見る必要があります。

一つは、社内の他の社員との関係性。

一つは、後継者個人としての成長。

 

 

まず、社員との関係性から考えた時、創業者はたとえそれが後継者であったとしても、区別してはいけません。

これは、非常に難しい事です。

ついつい、気軽に頼めるからと息子に頼みごとをしがちなこともあるでしょう。

逆に、息子が忙しそうにしているから、それを避けて別の社員に頼みごとをしがちなこともあるかもしれません。

よくあるのは、息子の家庭の事情を知っているから・・・という理由で仕事の出し方に偏りが出る。

これは、他の社員からすれば、不公平以外の何物でもありません。

 

ここを可能な限り分離する。

最も良いのは、全ての社員に対して、目配り、気配りができる事でしょう。

社員にかける愛情に関して、妥協をしない姿勢が必要となります。

そうすれば、会社はどんどん良くなります。

 

とはいっても、聖人君子ではありませんから、そんな事完璧にできるか?といえばなかなか難しい。

だから、姿勢だけでもいいのです。

意識するだけでいいのです。

それだけで、100%ではなくとも、他の社員さんはその意向をくみ取ってくれるでしょう。

 

 

そして、後継者に対しては、まず信じてください。

特に親族間継承の場合、息子は自覚しているはずです。

自分が、この会社を背負って立たねばならぬことを。

普通、1年目の社員が目の前の仕事を覚えるのが精いっぱいの時、

後継者は、会社全体を見ようと努力しているはずです。

 

そこは、決して先代には見せないでしょう。

 

後継者が成長している証として、一つのサインとなるのが後継者の話です。

創業社長にとって、理解不能な戦略が出てきたとしたら、後継者は立派に経験を積んでいることでしょう。

その戦略が正しいかどうかは、創業社長は評価されない方が良いでしょう。

間違っていることもあれば、正しい事もある。

しかし、それが失敗だとしても、創業社長が今なら支えることができます。

その間に、失敗の経験をさせることです。

過去の記事でも繰り返しお伝えしていることですが、後継者を成長させる最大の経験は、

どれだけ失敗経験を積ませるかです。

 

それは、ある意味において、非常に厳しい育て方かもしれません。

 

 

近年、子供の修学旅行に親がついていく、というニュースを見て、

「そんな馬鹿な?」

とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

子供に付き合って、自転車に乗る練習をした時、

「転ばないように」

といつまでも手を離さない訳にはいかないでしょう。

 

実は、経営者はそれと似たことを事業承継でおこなわれる方が多いのです。

いつまでたっても、「まだまだ、半人前だ」といって後継者を独り立ちさせないのです。

転ぶこともあれば、不安なこともある。

それが経営でしょう。

そして、創業社長は数々の失敗や、苦しみを経験されて今に至るはずです。

確かに、同じ失敗をさせるまい、という親心もあるでしょう。

実際は、転んでみなければわからないのが人間です。

 

 

今必要なことはただ一つ、

手を放すこと

なのかもしれませんね。

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