なぜ先代の振る舞いをもどかしく感じるのか

親子間の事業承継において、後継者が感じる憤り。
それは、先代の振る舞いにある事も多いようです。

一生懸命対話を重ねて、やっと方向感の一致を見た。
これからは力を合わせて前に進める。
そう思って、安心感や、心強さを感じる後継者。
しかし、その安心感が一瞬にして消えてしまう事があります。

重ねた対話が、まるで何もなかったかのように、
先代が、後継者の考える方向性とは全く合わない振る舞いを始めてしまう。

あれだけ話したのに・・・

そうやって頭を抱える後継者は少なからずいらっしゃいます。

人は一貫性を求める

一貫性が無いかに見える行動の奥にあるもの

もともと、人間は一貫性を求める習性があると思います。
○○種のリンゴは甘くておいしい、という認識をしていたとします。
もし仮に、たまたま手に取った○○種のリンゴが、すっぱかったとしても、まずは「○○種だから甘いはずだ」と自分を説得しようとします。

こういった、自分の言葉と振る舞いを一致させようとするのが人の基本的な行動と言われています。

しかし、なぜか、話し合いの上合意したことに対して、その合意内容に沿った行動を行わない経営者が意外と多くいらっしゃいます。
後継者としては、あれだけ話し合って、お互い理解したはずなのに・・・という憤りを感じるシーンです。

ここで注目したいのが、本当のところ、先代は何にコミットしているか?という部分です。

人の信念

人の持つ信念は、頭で理解したからと言って、簡単に変わるものではありません。
世の中には、根拠のない自信を持った人がいます。初めて行う事に対して、何の根拠もないのに「自分ならできる」と信じきっている人たちの事です。
多くの人が、そういった自信を持つことが出来れば、もっと自由にふるまえてストレスは減っていくだろうと思うのですが、じゃあ、明日からあなたも「根拠のない自信を身につけましょう」といってできるでしょうか?
普通は難しいでしょう。

これと似たことが先代の頭の中で起こっている、と考えるとなんとなく理解できるように思えます。

 何にコミットしているか?

一貫性を持つ行動にもバリエーションがある

先代と後継者が話し合い、これからこうやって行こう!と決めたことが、実際は行われない。
その状況は、先代にとっては先ほどの「根拠のない自身を身につけましょう」と言われている事と同じ状態と言えるのではないでしょうか?
「腹落ちする」という言葉がありますが、そこに至らないものの、頭では理解している。
そんな状態だと思います。
では、先代の一貫性はどこにあるのでしょうか。
もっともありがちなケースとして、「過去の行動との一貫性」を取っていると考えられます。

過去にこのやり方でうまく行った。
その成功体験と、現在の行動を無意識に一致させていると考えられそうです。
少し乱暴な言い方をすれば、「クセ」と言ってもいいかもしれません。
過去の自分との一貫性を無意識に保つものなので、頭で理解しただけの事柄よりも優先される傾向があるのかもしれません。

優先順位

もう一つ考えられるのは、価値観に対する優先順位でしょう。

多くの場合、創業社長の思考は直線的です。
例えば、売り上げを上げるとしたら、直接営業をすればいい。そんな感じです。
仕組みで売り上げを上げるとか、自分が動くのではなく社内の人間で売り上げを作るとか、そういった思考は基本的に持ち合わせていない事が多いでしょう。
厳密に言えば、そういった事を考えない訳ではありませんが、自分でやった方が早いから、そうやり続けていたわけです。

つまり、何かを成し遂げるなら自分で動くべし、という価値観が中心にある方が多いように思います。
すると、組織や仕組みを大事にする後継者の考え方とは、おのずとぶつかる価値観の信者と言えます。
試行錯誤の期間を待つより、自分で動き始めるわけです。
そういった、信念、価値観への最も優先順位が高い事が行動に現れ、それが後継者と示し合わせた内容とは合致しない状態がしばしばおこります。

これを外から見ていると、「話しあった内容と、行動がかみ合わない」となるわけですが、創業者ご本人にとっては、無意識に自分の価値観との整合性を取っているわけです。

どう対処していくか?

培われた価値観を塗り替えることはできるのか

こういった状況になった時、後継者の方からの相談は、
「先代が変わってくれない」
といった言葉で始まります。
しかし、良く考えてもみてください。
創業者であれ、後継者であれ、自分の信じる価値観を変える事など、決して簡単な事ではありません。
それは、時間をかけて繰り返し言い聞かせることでできうる可能性がある事ではないかと思います。
つまり習慣化できるほどに、行動を修正し続けるという方法が考えられるかもしれません。

期待値と現実のギャップ

ところで、先代が自分の考えるように動いてくれない事がもどかしく感じる原因は、どこにあるのでしょうか?
実は、それは期待値のギャップと言えるのではないでしょうか。
例えば、こういう話をしたから、こういう行動をしてくれるだろう、という自分のイメージがあるわけですが、実際に出てくる行動はそれとは違った、というものです。
そもそも期待があるから、その期待を裏切られた時のショックは大きいものになるわけです。
しかし、逆に期待しなければ、裏切られることはありません。
少し投げやりに聞こえるかもしれませんが、考えてもみれば他人をコントロールする事は、自分をコントロールする以上に難しい事です。
であれば、自分の考えの中で、誰かに思う行動を期待するのではなく、自分がコントロールできる範囲のものを活用して展開していく覚悟を持つ、というのも一考ではないかと思います。

面白いもので、そうやって活動していくことで、次第に周囲の協力を得られだす、ということは結構あるものです。
一度、再考してみてはいかがでしょうか。

 

関連記事

  1. 創業者と後継者の確執を防止する、あり得ないくらい簡単な方法(2)

  2. 忙しさは罪

  3. 過去の実績を見る人、未来の戦略を見る人。

  4. 30人以下の企業で、後継者を社内から登用してうまくいかない理由

  5. 兄弟への承継にたいする私の回答

  6. すり替えられる事業承継の目的

  7. 先代をラジコンのようにコントロールする方法?

  8. 先代が自分の成果を誇示しようとするとき

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。