後継者

後継者が経営を学びたいと考えたとき、なかなかその答えが見つからない理由

ある後継者・二代目経営者の自主運営の勉強会に参加した時、彼らはこんな悩みを持っていました。
これまでの自分たちは、個別の技術やスキルに関してばかり学ぼうとしてきた。
しかし、そろそろ「経営」について、しっかり考えるべきではないか?
というものです。

しかし、「じゃあ、経営ってなんだろう?」となると途端につかみどころがなくなってしまいます。
後継者や二代目経営者が、「経営」をとらえようとしたときに、どんなヒントがあるのでしょうか?

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私自身、様々な経営者の会に属しています。
そのなかで、「経営について学ぼう」という趣旨の会であったとしても自然とこんな風になりがちです。
・なかなか社員が定着しないけどどうすれば?
・売上を上げたいけどどうすればいいだろう?
・社員のモチベーションが上がらないけど方法はないか?

これらはそれぞれ、経営の問題の一部を示していますが全体とは言えないような気がします。
そもそも、次々と現れる問題に、モグラ叩きのように対処するのが経営なのでしょうか?
多くの場合は、ここで行き詰ってしまいます。

そこで例えば、
・会社の会計・資金繰りについて学ぶ
・先達に学ぶ
といった結論に陥りがちです。

会社の会計などは、自分たちが今まで接してきていなかっただけで、売上を上げる方法を学ぶのとさほど変わらないと思います。
これも個別の知識やスキルの話から出るものではない。
だんだんとそんな感覚になってきて、今一つ実が入らないことも多いのではないでしょうか。

じゃあ、会社って、経営って何だろう?
初めのうちは激論が交わされますが、その問いはたいていフェイドアウトして、今までの勉強会に戻っていくのがよくあるパターンです。

この問いに対して、わかりやすい答えを出しているのが、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏です。
彼は、大ヒットした「サピエンス全史」で歴史ある自動車メーカーのプジョーをモデルに会社とは何か?を説明しています。
ざっくり要約するとこんな感じです。

プジョーの存在を証明するものは何か?
・プジョー製の乗り物自体は会社ではない(世界中のプジョー製の乗り物が廃車にされてもプジョーという会社はなくならない)
・従業員や工場やオフィスもプジョーそのものではない(これらがなくなってもプジョーは再建されるだろう)
・経営陣と株主がプジョーそのものでもない(株式を売却し、経営陣をクビにしても会社自体はそのまま残る)
つまり、プジョーという会社は物理的側面においては、存在を証明するものは何ら存在しない。

ハラリ氏が示す結論は、会社とは集合的虚構である、というのです。

「サピエンス全史」を一部要約(ユヴァル・ノア・ハラリ)

 

結果として、哲学チックな話にならざるを得ないのが、「経営」の話なのかもしれません。

冒頭の、〇〇するにはどうすれば?なにをすれば?いいのかというはなし。
この手の話は、WHATであったりHOWという部分と言えるでしょう。
しかし、経営というものは、WHYを明確にすることがはじめの一歩なのかもしれません。
集団的虚構であるとすれば、従業員や周囲の人間にどんな虚構を見せるのか?
それを明確にするのが冷静に考えたときに出てきてもおかしくない考え方です。。

しかし、後継者や二代目経営者においては、目先の成果を求められていることが多い。
すると、なにを、どのようにするかばかりを考えてしまうわけです。
一刻も早く売り上げを上げたい、
一刻も早く社員のモチベーションを上げたい、
一刻も早く会社の仕組みを完成させたい・・・
目の前の問題はさまざまでしょうが、インスタントに解決できればありがたいわけなんですが、たいていはうまくいかない。
なぜかというと、いいか悪いかは別として、先代の時代になんだかんだ言ってある程度社内はバランスされているものです。
バランスがとれてる状態に力を加えて変化させようとすると、それが元に戻ろうとする力が働きます。
後継者はその力を必死に抑え込み続けていないと、会社は元の状態に戻ってしまう。

だから常に力を加え続けなければならなかったりするわけです。

だから無意識にそうならない方法を探すんですが、意識の上では手っ取り早いノウハウに飛びついてしまう。
社内で共有している”虚構”は変化していないので、やっぱり社員は元通りになろうとする。
そんな悪戦苦闘があるんじゃないかと思います。

 

さて、私たちはなぜ、ノウハウが大好きなのでしょうか?
その理由は簡単です。
自分で考えなくてもよいからです。
人から教わり、やってみればすぐに成果が出る。
インスタントラーメンのように、お手軽です。

しかし、会社の「集団的虚構をデザインしなおしましょう」なんて言われても、そもそもやり方以前に、「どんな虚構を見せるのか?」という部分を考えなくてはなりません。
こればっかりは人にならうことはできないし、自分たち独自の物であるべきなのは誰もがわかります。
じつは古くから存在する、異業種交流会的勉強会ではとてもこの部分を大事にしています。
しかしそのメッセージを受け取ることができている人は思った以上に少ないように思います。

経営においては、日々さまざまなことが動いていきます。
だから、腰を据えてじっくり考える時間はあまりないのかもしれません。
しかし半ば強制的にでも時間をとって、自分たちの会社は何を成すつもりなのか。
なぜこの会社が存在するのだろうか。
そんな問いを自分に発する必要があるような気がしてなりません。

経営というのは、どうやら他人に教わるものというより、自分で考える物なのかもしれません。

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