社員は、自分ではなく先代に判断を仰ぐ。
その様子を苦々しく見ている後継者。
自分の前を素通りして重要案件に関する情報がやり取りされている。
社員だって悪気はないし、先代だってわざとそうしているわけでもなさそうだ。
なぜ、この会社は自分を抜きに物事が決まるのだろうか。
なぜ、後継者として担ぎ上げられているのに、自分がこんな目に合わなければならないのか。
原因を考える。
どうやら、先代のカリスマのせいだ。
ならば・・・
そうやって親子の確執は深くなっていくのかもしれません。
私の著書です。
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社内での存在感という意味では、圧倒的に先代が強い威光を発揮している。
知識も、経験も十分で、声や存在感も大きい。
当然、社員は、誰の顔色をうかがうかといえば、先代の顔を伺う。
後継者や二代目経営者の言葉は優先順位が低い。
もちろん、社員だって後継者に反抗的な態度をとっているわけではない。
言ったことはきちんと聞くし、その通り動く。
しかし、先代の鶴の一声で、後継者の指示は泡のように消えてしまう。
「ちゃぶ台返し」
私はそんな様子をみて、ひっそり自分一人心の中でつぶやいたものです。
これを無理やり変えようとすると、大体やることは決まっています。
会議での先代の発言権を奪う。
いや、そもそも会議への参加を拒否するかもしれません。
会社の情報を先代に与えない。
仲間を引き入れる最も簡単な戦略は、共通の敵を自分たちの外に作る事。
だから、コミュニケーションの取りやすい社員を自分の陣地に囲い入れ、共通の敵として先代をターゲットにする。
会社は真っ二つに分かれ、激しい水面下での闘争が繰り広げられます。
あちらでもこちらでも、ちゃぶ台返しが行われ、いつしか殺伐とした空気が広がる。
割とよくある、親子の対立です。
お家騒動なんて騒がれる事例の多くは、大枠でこんな経過をたどるのではないでしょうか。
なぜか、人は「自分が望む状態に、人を強制する」事をやってしまうことが多い。
泣きぐずる子供に、ダメよとしかりつけたり、
士気の上がらない社員に、やれー!と号令をかけたり、
受け入れられない意見にふたをしたり。
力で強制しようとすると、必ずと言っていいほど力で反発を受けます。
そして最後は力比べ。
ところで、事業承継の目的とは何なのでしょう。
一般的な理解で言えば、事業を引き継ぎ、顧客や事業を守り育てていく事でしょう。
しかし、その目的はどこへやら。
権力闘争に明け暮れる日々がそこにはあるわけです。
それは、”強制”しようとするからではないでしょうか。
先代を黙らせよう、
社員を従わせよう、
自分の存在感を認識させよう。
押し付けると、それと同じ力で反発がおこります。
膨らんだ風船をぐっと押して小さくしようとしても、風船は押し付けられた空気を指の隙間から逃がそうとしていびつに膨らみます。
押せば押すほど、強い力で風船は伸びてくる。
それが続けば、いずれ破裂してしまいます。
強制すると、短期的な効果は出やすいかもしれません。
ただ、その効果を持続させるためには、常に力を加え続けなければならない。
相手が抵抗をあきらめて、自分の前にひれ伏すまで。
その時、組織が、会社が、破裂状態でなければいいのですが・・・。
中長期的に考えれば、
先代が口を挟まなくてもよい状態、
社員がついていきたくなる状態、
周囲が後継者の存在感に強く引き付けられる状態を作り出す。
その過程は、多少の時間はかかるかもしれませんが、トータルで見ると案外こちらに分があるではないか、と私は考えています。
そのために何が必要かというと、その重要な要素の一つは組織の「心理的安全性」。
これを言ってるのは、私の経験則・・・という側面もありますが、Google社による調査分析結果が根拠。
心理的安全性が保たれている状態というのは、ごく簡単に言うと、どんなことでも言い合える組織。
そのために必要なことは、社員一人一人の考えや個性が尊重できる社風を作る事です。
個性を尊重するから、自発的に動き出す。
そして、その状況を作ったあなたは、メンバーを強制という檻から救い出したヒーロー。
存在感が出ないわけがありません。
そんな状態を実現するためには、リーダーの成長であったり、幹部社員の理解であったり、まあ色々あります。
しかしそんなことを待ってはいられない。
そこで提案できる一つの仕組みがあります。
それは、業務とは直接関係のない質問、突拍子もない質問について社内で考える事。
これが結構効くのです。
毎日ほんの少しの時間を、3週間ほどとるだけで会社の雰囲気は激変します。
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