日本ではなんとなく、中小企業の廃業が問題になっているような雰囲気があります。
だから、廃業を食い止めるために、跡継ぎ・後継者が必要で、
そういう人たちが、会社をしっかりと守っていかなければならない。
これが一般的に認識されている事業承継におけるストーリーだと思います。
しかし、それは本当なのでしょうか?
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Contents
廃業率より問題なこと
開廃業率の推移
まずは、下のグラフを見てください。
中小企業庁が発表している、2017年版の中小企業白書に掲載されているものです。
緑の折れ線が「廃業率」、黄色の折れ線が「開業率」です。
ざっと全体を見てみると、1981年~2015年にかけて、廃業率はだいたい3%~5%に収まっています。
1999年以降、若干増えている傾向はありますが、比較的安定しているようにも見えます。
むしろ大きく動いているのが、開業率。
1989年あたりをピークに、どんどん下がってきて、廃業率が開業率を上回る年が散見されるようになりました。
ごくシンプルに中小企業の数だけを考えたとき、開業率が廃業率を上回れば、日本経済全体としてはそこそこバランスが取れそうな気もします。
実は問題は廃業率というより、開業率の低さなのかもしれません。
時代背景を考えてみると・・・
こういった事実が、大きな時代の流れで何を物語っているのでしょう?
神田昌典氏は、著書『2022――これから10年、活躍できる人の条件」』の中でこんな分類をしています。
時代の流れとその時期に活躍した人の名前を並べてみてみると・・・
1945年~1963年:志(創造者)の時代
ソニー創業者の井深大
ホンダ創業者の本田宗一郎
1963年~1980年:能(実務者)の時代
イトーヨカドーの伊藤雅俊
ダイエーの中内功
1980年~1998年:公(管理者)の時代
大前研一
堀紘一
糸井重里
1998年~2015年:商(放浪者)の時代
村上世彰
堀江貴文
なんとなく一貫性があるような気もしてきます。
放浪者の時代と名付けられた1998年を上記のグラフで見てみると、
ちょうど開業率と廃業率のグラフが近づくタイミング。
一つの時代の変化と見ることが出来そうな動きと私には見えます。
今はまさに「志」の時代!?
さて、では今はどんな時代なのでしょうか。
前述の時代サイクルから考えると、2015年~2032年くらいまでは「志」の時代となります。
そういわれてみれば、まずお金というものの価値観がずいぶん変わりました。
ヒルズ族なんて言う風にお金こそがヒーローの証と言われた時期があり、ライブドア事件という象徴的な事件があり、お金というものの価値観や、新興勢力と旧体制の衝突をメディアを通して全国の人が目の当たりにしました。
物やお金に対する欲というのがこの時期ピークになっていたのかもしれません。
そして人は、そういった考えが支配的になると、逆の価値観に次第に考えがうつっていきます。
それがまさに志で、宇宙開発だったり、自分の個性を活かそうという価値観だったり、自分の内にある思いを増幅するのが今の時代。
元ZOZOの前澤さんしかり、SHOWROOMの前田さんしかり。
ユーチューバーや歌い手さんなんかも、人に夢を与える人たちとして強い印象を残しているのは、そんな時代にあってこそだと思います。
跡継ぎ・後継者の役割
志世代の商品を広める役割をした親世代
冒頭のグラフで言うと、跡継ぎ・後継者は「緑のグラフ、つまり廃業率を減らす」という役割を担っている。
これが、昭和の時代の跡継ぎ・後継者のミッションでした。
もちろん、現代においても、そういった考えに異論はありません。
しかし一方で、時代は「志」を求めています。
多くの人が求める志がこの事業にあるのか、と一度振り返ってみる必要はあります。
たとえば、私の親が今の会社を起業したのは1970年です。
1970年と言えば、前述の分類によると「実務者の時代」です。
ダイエーやイトーヨーカドーが生まれ、力をつけていった時代。
つまり、「志」世代の人たちが産み落としたものを、広げることがこの世代のミッション。
なるほど、私の親の会社は保険の販売店。
すでにある商品を社会に知らしめ、広めることがその役割だったのです。
ここには、ゼロから何かを生み出すという発想はあまりなくて、目の前にあるものを広めていくことが手っ取り早く成果につながるビジネスだったわけです。
製造業であるならば、すでに開発されている何かしらの商品やパーツを作る企業がたくさんできた。
形が出来上がったものを多くの人が作り、売り、広めた時代、と考えればそれなりに時代を理解できそうに思えます。
後継者は夢を語れ
そのご公の時代で、規律が出来上がってきました。
大気汚染や水質汚染といった公害を垂れ流した親世代の時代の問題が世の中でクローズアップされたのが、「公」の時代に様々な規制がかけられるようになりました。
現在でも社会生活に大きな影響を与える個人情報保護法は、成立は2003年に入ってからですが、その基本的な思想は1988年「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」にお盛り込まれています。
そして「商」の時代には従来の価値観が破壊されます。
ヒルズ族といった拝金主義的価値観から、ライブドアショックに至るながれは大きな価値観の変化を感じた方は多いと思います。
そしてそれは、「お金」という人間にとって非常に身近であり、重要なものとの付き合い方の変化を起こしているようにも思えます。
都会のタワーマンションが人気なのと同時に、田舎暮らしがもてはやされる。
お金はもはや現金は世の中から消え始めていて、もはや単なる数値としてのデータでしかなくなってきています。
円のみならず、さまざまなポイントやマイレージがまるで通貨のように流通し始めている今、やはり時代の節目を感じざるを得ません。
で、何が言いたいかというと、跡継ぎ・後継者にとっての役割は、
「会社を廃業から守る」ことではなく、「夢を語る」という事なのではないかと思うのです。
言葉にしてしまうと陳腐に聞こえますが、ここはやはり、第二創業が必要なわけです。
これからの会社をけん引するにあたって、
「志」の時代にあたって、
夢を語ることが、会社を成り立たせる最もシンプルで重要な要素なのではないかと思うのです。
ブレイクスルーが必要?
これは私の主観ですが、跡継ぎ・後継者のあり方って、なんか地味な印象が強くないですか?
デーンと、やたらと目立つというか、自己主張の激しい親がいて、
ボクはその後ろからコソコソついていく。
20代の私はそんな感じでした(苦笑)
今から考えると、それがすごく楽なんですよ。
あの「チームバチスタの栄光」で有名な、海堂尊さんの小説、「スカラムーシュ・ムーン」では、面白いシーンがあります。
卵をとるために養鶏場を経営するお父さん。
そしてそこにアルバイトで勤める大学院生の娘。
娘は、会社を継ぐかつぐまいか迷ってる。
そんなある日お父さんは、もうあと数年のうちに養鶏場をたたむことを娘に告白します。
そんな父の言葉に、娘は「なんで!」と憤る。
父は娘に、「じゃあ、本気で継ぐのか?」と聞くと、娘は決めきれないという。
ハッキリと決められないのに口を出すというのはどういうことか、と問い詰める父。
娘には娘の思いがあるのだけど、やっぱり楽だから親の庇護のもと気楽にやりたい。
そんな複雑な感情がかなりリアルに表現されています。
恥ずかしながら、その情景に、自分の若いころを重ねて見てました(苦笑)
他人事だと、「覚悟がないな」と言えるけど、自分のことだとなかなか気づけないんです。
そんな状態だと、思い切ったことができない。
そして思い切ったことができない理由を、時に親のせいにすることもあります。
もちろんそうでないこともありますが、その辺が混在してるからややこしいのです。
ここでもう、何がおころうと、自分の責任である、という覚悟ができればスッキリします。
そしてそうやってスッキリした状態でないと、なかなか夢って語れないんじゃないかと思います。
語ったとしても上滑りする感じになるんじゃないですかね・・・
(私は自分で言ってて上滑り感があるので、言うのやめた時期がありましたが苦笑)
まとめ
ながながと書いてきましたが、まとめてみましょう。
どうやら時代は、「志」の時代に入っているようです。
この時代はつまり、未来へつながる大きな夢を語り、それを実現していく時代背景と言えそうです。
参考となるイメージは、ミカン箱(別にリンゴ箱でもいい)の上に立って、空を指さしてこういう社長です。
「世界をとるぞ!」
まだ何にもない創業時に、そういった夢を語れる社長の時代、という事です。
幸いにして私たち跡継ぎ・後継者には、オフィスや工場、設備や、多少のお金はあります。
これを使って、「ちっぽけでも安定した会社を・・・」なんて言ってたら時代に嫌われます(笑)
「どんどん攻めていくぜ!」というべき時代です。
そしてそんなせりふを、それなりに本気で言うにはあるものが必要です。
それは、覚悟。
どんな結果が訪れても、受け入れ、立ち向かう覚悟です。
どうせ俺なんて二番手だし、とか、誰も俺のこと大事にしてくれないし、というやらされモードだとやり切れないと思います。
そうすれば何とかなるんじゃないかと思います。
確かに怖い。
怖いんですけど、自分で「怖い」と感じられたらそれは割とオッケーだと思います。
時々いるのが怖くて足がすくんで前に進めないのを、人のせいにする人。
こういう人はまず、怖がってる自分に気付かないとだめだと思います。
で、自分が怖がってるのがわかったら、怖い感情を良ーく味わっていてください。
たぶん、怖さになれますから。
その時に、そこそこ冷静な判断が下せるようになります。
これで覚悟が整いました。
後は語るべき夢を探します。
決定的な方法はないと思うので、とにかく今まで会わなかった人と会い、経験しなかったことをするよう心掛けてみましょう。
小さなステップからでOK。
たぶん1年後には、ガラッと付き合う人も、考え方も変わってきていると思います。
そんな中で、あ、これかも、なんていう自分の志が固まってくるんじゃないでしょうか。
いつか、あなたの夢を聞かせていただくことを楽しみにしております。
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