後継者

家業を継ぐか継がないか迷ったとき、メリットとデメリットを見ても答えが出ない理由

「家業を継ぎたくない」という人は多いです。
継ぎたくないけど、無理やり継がされそうだ、という人も多いです。
もし、はっきりと「継がない」と決めたなら、それに応じた行動をとればいい。
しかし全身全霊をかけて「継がない」ための行動をしている人は意外と少ない。
その背景には何があるのか、考えてみたいと思います。

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家業を継がないためにできること

もし家業を継がないという結論が出ているなら

「家業を継ぎたくない」という言葉が、「家業は継がない」という言葉に変わるとできることはたくさんあります。
親と同居しているなら、まずは親元を離れる。
さっさとどこでも就職先を決める。
親には継がない旨をはっきり伝える。
などなど、できる行動はたくさんあります。

それでも親は強くあなたに会社を継げと言ってくるかもしれません。
しかし、それはあくまで親の意向。
あなたはあなたの人生を歩むべきであって、仕方なく会社を継ぐなんて選択肢は考えないほうがいい。
それほど甘いものでもないし、大変なだけです。

しかし、そういう全力で継がないための行動をしてないとすれば、継がないという結論が出ていないということなのでしょう。
実際に、ネット検索でも「家業 継がない方法」という検索より、「家業 継ぎたくない」というほうが多いように感じます。
まず「継ぎたくない」のか、「継がない」のか、あなたの現在の気持ちを確認することが大事でしょう。

家業以外にやりたいことがある場合

今のあなたが、圧倒的多数であろうと思われる、「家業を継ぎたくない」という状況だとしましょう。
継ぎたい、という積極的な意欲がない状態ですね。
この場合、継ぎたくないのであれば、どうしたい?ということを考えてみてください。
これが明確であれば、「家業を継ぎたくない」ではなく、「〇〇がやりたい」に表現が変わると思います。
やりたいことがあるのに、親の都合で違うことを”やらされる”という状態はあまりにも理不尽です。
その場合はぜひ、前の節にお話ししたように、徹底的に抗戦しましょう。
継がないための行動を始めればいいのです。

この時に、よく言われる言葉は、「親に申し訳ない」とかいうたぐいのお話。
この場合もやっぱり、スタート地点が「親のため」だったら、たぶんうまくはいかないことが多いと思います。
はじめから期待を持たせることなく、さっさと他にやりたいことがあるから、ゴメン!と言っちゃったほうが後々いいと思います。
話は振出しに戻りますが、そうしたなら親に頼ることなく、自分で生活や人生を切り開いてください。
親に頼った状態で、親のいうことは聞かないというのはやっぱり不自然ですよね。

それでもやっぱり「親のことを考えると・・・」と行ったり来たりするならそれは、決断できていない、ということになりそうです。

やりたいことが見つからないけど家業だけは嫌

特別やりたいことがあるわけでもないけど、家業だけは絶対いや。
実はけっこう多いんじゃないでしょうか、こういう人。
親は大抵こういうんじゃないでしょうか。
「ほかにやりたいことがないなら、ウチの仕事を手伝え」と。
親からすると、家業とそれ以外という二種類の生き方があって、”それ以外”に思い入れがないなら家業を継ぐのは普通じゃないか、と思っているわけです。

じゃあ、なんでいやなんだ、と聞かれる。
するといろいろともっともらしい理由を作り上げてしまう。
・会社に将来性が見えない
・親と働くのは嫌
・会社を継ぐ自信がない
などなど。
口に出しにくい理由だからさらにややこしいですね。
そんなことを心の中にためながら、「親は自分のことを分かってくれない」と思ってしまう。
親の肩を持つわけではないですが、口にしなければ親には伝わりません。
それを愚痴るってのも、ちょっと都合がよすぎるような気がしてしまいます。

しかし、問題の本質は、そこではありません。
親の会社を継ぐのがいや、というぼんやりした思いがあった時、ここまで具体的な「嫌な理由」を明確に持っていた方は、意外と少ないのではないでしょうか?
理由を考え始めるまでは、「なんとなく嫌」であって、その理由は後から思いついたものではないでしょうか。

家業を継ぐメリットとデメリットを並べてみるとわかる事

家業を継ぐメリットとデメリット

家業に就いてどのようにとらえているかは人それぞれでしょうが、代表的なメリットとデメリットを考えてみましょう。

【メリット】

・なんだかんだいって「社長」になれる可能性が高い
・つまり、自分の会社を持てる
・それなりに特別な立場で働くことができる
・収入も長期的に考えればそこそこ期待できるかもしれない
・家族経営なので融通が利く(ような気がする)
・リストラの心配はあまりない(安定しているかもしれない)

【デメリット】

・社長という役割を担うことはきつそう
・自分の会社ということは責任が重い
・特別な立場だから逃げも隠れもできない
・会社経営が厳しくなれば自分の収入も不安定になる
・家族経営なので自分を表現しにくい
・小さな会社なので会社がなくなるリスクもある(会社の将来性を担うのは自分になる)

こんな感じでしょうか。

家業を継ぐメリットとデメリットを並べても結論が出ない理由

先ほど挙げたメリットとデメリット、じつはそれぞれが一つの事実と対応しています。
たとえば、社長になれるということをメリットの面から見ると、社長というのはちょっとした社会的地位が得られることがいい。
これをデメリットから見ると、かなり重い役割と責任を負うというプレッシャーが嫌なところ。

逆に、家業を継がず普通のサラリーマンになろう、と考えたとしましょう。
今は、サラリーマンの良い部分ばかりが見えているかもしれませんが、そのサラリーマンである状態をマイナスから見ればそこに必ずデメリットもあります。
しかし、あえてそれを見ようとしなかったり、デメリットを知っても「それなら乗り越えられるさ」と思える背景には、「サラリーマンのほうがいい」という前提を持っているからでしょう。

ところで、これまでたくさんの選択をしてきたと思います。
食後の飲み物をコーヒーにするか、紅茶にするか?
お昼ご飯を、うどんにするか、そばにするか?
今日の洋服の色は、紺にするか、グレーにするか?
迷うときは、どっちを選んでも、いいこともあれば悪いこともある。

紺のスーツだとちょっと暑いなぁと思う反面、グレーだと懇親会で汚しそうで心配だ。
どっちにする?となった時、その心配度の大きさだけではだいたい決まらないものです。
心配度の差が圧倒的なら別ですが、悩むときはそれらが僅差で存在するのです。
紺スーツにするデメリットが100デメリット、グレースーツにするデメリットが80デメリットだったとしましょう。
デメリットが高い(より悪い状況)のは、100デメの紺スーツ。
けど、やっぱり、シャキッとみえるから、今日は紺にしよう!
そんな決断を下したことはあると思います。

私たちの決断は、メリデメの点数ではなく、そことは違うところで行っているのではないでしょうか。

なぜ家業を継ぐのを嫌がるのか?

メリットもデメリットもある、家業を継ぐ、という選択。
私の知る限り、「家業を継ぎたくて継ぎたくてしょうがなかったんです!」という人はほとんど見かけません。
みんな、「仕方なく・・・」家業を継いでいます。
なぜこれほどまでに、家業を継ぐのは嫌われるのでしょう。

これは私の考えですが、後継者(候補)にとって、「自由に選ぶことができていない」という感覚が、その中心にあるのではないでしょうか。
こういうと、親は「いやいや、ワシは子供に自分の会社に入るよう強制したことはない」という人は多い。
たしかに、はっきりとそういったことのない親社長も多いと思うのですが、そもそも家業を持つ家庭で育つという環境そのものが、後継者である子に「家業を継がなければならない」というプレッシャーを与えているのではないか、と思うのです。

じつは経営者を親に持つ子供は思慮深い人が多い。
親が自分に継がせたがっている意向は、敏感に察知していたりもします。
そしてそれにこたえたいと思うものです。
こたえたいけど、選択肢のない不自由さにはちょっと反抗したくなる。
だから、家業を継ぐのが嫌なのではないでしょうか。

人は選択肢があることが心地いいといいます。
ほどほどに自由を感じたとき、「ああ、自分が積極的に人生に関わっているな」と実感することができます。
しかし親を経営者に持つ子供の場合、自分の進路に対して自由を感じられていない事が非常に多いのではないでしょうか。

なんとなく嫌、の理由を考えてみる

一番いい選択

これは私見ですが、もしあなたに「どうしてもヤリタイ」と思うことがあるなら、そこにまい進することが一番良い選択だと思います。
消去法で選ぶ針路より、積極的にヤリタイことを優先させましょう。
その時に、いろんなものを振り切らなければならないこともあるでしょう。
それでも進むことができるのは、「ヤリタイ」という気持ちがあるからこそです。

ただ、実際のところ、こういう思いがある方は、すでに行動していると思います。
ヤリタイという欲求はそれほど強いもののようです。

「正しい選択」はあり得ない

特別やりたいということがない、という場合、まずは「家業を継ぎたくない」本当の理由を考えてみる必要がありそうです。
あれがいや、これがいや、という駄々っ子的理由ではなく、その奥にある本心です。
どんな選択をしても、嫌なことはたくさんあります。
家業に将来性がないからいや、というのはもっともらしい理由のように聞こえます。
しかし、私が学生時代「銀行の経営が脅かされるときは日本経済が終わるとき」なんて言われていましたが、今やメガバンクは数千から万人単位のリストラを始めています。
理不尽にリストラされるか、将来性のない家業でも自分で変化させられる余地がある、と考えるとどっちがいいのかわからなくなってきます。

そもそも今の時代「安定」というものが果たしてどこにあるのでしょうか。
もし、安定を求めたくて、家業を嫌うのであれば、それは正しい選択とはいいがたいようにも思えます。

つまり、「正しい選択」というのはあり得ない、ということです。
どんな選択をしたところで、メリットもデメリットもある。
いいことも、悪いこともきっとおこるでしょう。

その時に、あなたに必要なのは、いいことも悪いことも含めて、「自分で決めたことだから、正面から受け止めよう」という心の持ち方ではないでしょうか。
これはたぶん、「覚悟」とか、「決断」と言われるものじゃないかと思います。

実は、家業を継ぎたくない(けど、継がざるを得ないと感じている)という状態は、あなたが「決断」し、「覚悟」することを避けているのではないでしょうか?
恐らく今の状態のままだと、家業を継ごうが、継ぐまいが、後々後悔することが多いように思います。
それは一応の進路の選択はしたものの、決断していない状態だからです。

決断すれば、家業を継ごうが継ぐまいが、それは自分にとって正しい選択だったと思えます。
決断することを避ければ、家業を継ごうが継ぐまいが、失敗した、と感じます。
もしかしたら、「家業を継がなければならない」というプレッシャーを感じながらの進路の検討だから、そこから外れたいと思っているかもしれません。
けど決めきれてないから、はっきりと家業は継がないと言えないわけです。
言えたとしても、それを強行できないわけです。
それは後悔することが怖いからでしょう。

それは当たり前のことです。
誰しも怖い。

そして言われるがままに家業を継ぐのもやっぱり怖い。
これもまたあたりまえです。

その怖さを乗り越えて、本当の意味で「決断」することができれば、どちらを選んだとしてもそれがあなたにとっての最良の選択となるはずです。

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