後継者

ワンマン経営の先代と後継者

創業社長であったり、創業社長ではなくとも現在60歳を超えるぐらいの年齢を超える社長。
だいたい、ワンマンですよね。
そしてほぼ例外なく、社内の空気は悪い。
社員はみんな肩をガチガチにして、私語の1つもない。
会議なんて、社長の独演会となるか、反省会になるかのどちらか。

仕事を人に任せないくせに、机に決裁事項の書類がたまったりすると一人イライラ。
私たちは、火の粉を浴びないように首を縮めて仕事に集中するふりをする。

そりゃあ、会社に行くのも嫌になります。
さて、どうしたものでしょうか。

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ウチの父も、今でこそずいぶん丸くなりましたが、バリバリのころはんまさにそんな感じでした。
とにかく自分が中心に世界が回ってると思うタイプ。
会社に父が返ってくると、会社の空気は一変します。
社員は全員ガチガチ。
私語なんてひとこともありません。

しかし、父が外出すると、一気に空気が緩む。
みんなふぅ、と息を吐くのが聞こえるかのようです。

 

父がいなくなったオフィスで、ある女子社員が言いました。
「専務(当時の私)は、こうやって話をしてる時のほうが全然いい。
お客さんの前でも、そんな感じに接したらすごくいいと思うんですけど」

実は自分でもそう思っていました。
たぶん、素の自分は、どちらかと言えば緩めの人。
だから素でお客さんと接することができれば、もう少し楽だし、逆に結果も出るんじゃないか、と。
だってやたらとかしこまった人って、ある程度信用はできても、心のつながりはつくれないでしょ?
私は、仕事マシーンと化していて、仕事の現場から人格を排除していたのです。
きっとお客さんからは線の細い二代目だとか、マジメだけが取り柄の男とか思われてたんじゃないでしょうか。

 

振り返ってみれば、私と父との関係は子供のころから壁を一つ隔てていたような感じだったと思います。
幼稚園の時はいじめられた経験がありますが、そのことを父に相談しようとは思いませんでした。
どうせ、もっと男らしくしろ、と言われるのは目に見えてる、と子ども心に思っていました。
私にとって、父は頼ってもいけない、泣きを入れてもいけない、男として認められなければいけない、という存在だったように思います。
私が10代も後半に至るころには、こちらから父に対して壁を作っていました。

父の仕事観は恐らく、闘い、だったのではないかと思います。
そりゃあそうでしょう。
何もないところから、会社を興し、お客さんを集め、売り上げを作ってきたのです。
孤独な戦いを繰り返してここまで来たわけです。
会社がある程度安定してからも、父は何かと闘っていました。
つまり、父にとって会社は戦場です。
息を抜くことは、死を意味します。
きっと父も、会社という戦場では、本来の自分を弱さを含めてさらけ出すことなどできなかったのでしょう。
父が会社を経営する中で必要だと思ったのが、真剣勝負という感覚だったのだと思います。

本人は無意識ですが、ワンマン経営というのが本人にとっての会社のあるべき姿なのだと思います。
誰かに任せるとか、協力して成し遂げるとか、そういう前提には立っていない。
どんなことでも一人でできなければならない。
独立心のはき違えかもしれませんが、そうやって生きてきたから仕方がない。

親のワンマン経営にうんざりする後継者は、たくさんいると思います。
私の例を引いてみると、これ、親の中に自分の弱さを見ているんだと思うんです。
どういうことかというと、私は自分以外の何かを演じて仕事をしている。
このことに無意識に苦しみを感じているわけです。
一方、親は親で、自分以外の何者かになり切って会社を切り盛りしてきた。
親子で何かを演じていることに、言いようのない気持ち悪さを感じるわけです。

 

そこから脱するのは、親を変える事でしょうか?
自分が変わらず、周囲を変えられたらそりゃあ、楽かもしれません。
けどそうしたところで、自分が自分以外の何者かであり続けることには変わりはありません。
たぶん、こんどは違うところで、フラストレーションを感じるだけです。
だから手っ取り早く、自分を変えたほうが根本的な解決になるわけです。

で、自分探しを始めるのもいいです。
旅をする、日頃と違う体験をする、関心の赴くままに行動する、そんな感じですね。
あとは、幼少期の自分が本来的な自分の個性をあらわしていることが多いので、その時のことを思い出してみる。
これで劇的に自分の本心を知ることができる人もいると思います。
しかし一方で、自分のことを客観的に見るのは難しいもの。
そこで、親を観察することで、ヒントをつかむということもおすすめです。
あなたが日頃仲たがいしがちな親。
目の前に見える言動は知っているけど、その背景に何があるかを考えたことはあるでしょうか?
同年代の友人として見たとして、あなたにとって親はどんな人間に見えるでしょうか?
実は、親子で確執を持ってしまう場合、相手を一人の人間として人格を見ていないことが多いのです。
小さいころから、親が支配的な立場をもつ関係で、極端な言い方をすれば親を「人」として見ることがあまりなかったのではないでしょうか?
親を人として見たときに、親のことが理解でき、自分のことが理解できることがあります。

 

親のことが理解したからと言って、親のワンマン経営は変わるわけではありません。
しかし、少なくとも、親のふるまいの見え方は変わってくるでしょう。
そしてあなたが、自分を変えよう(本来の自分をとりもどそう)とし始めれば、その行動は伝染します。
人は周囲の人の行動にかなりの確率で影響されることは、学術的にも解明されています。
つまり、あなたが変われば、周囲も変わるということはあり得る話です。

・・・とまあ、今日はウェットな感じの話で、こっぱずかしいのですが、ちょっとだけでいいので、ぜひ変化を起こしてみてください。


【今日の田村】

今何とか本を出版できたら、と空き時間に原稿を書いてます。(出版社さん、もし関心があればぜひご連絡を!→ご連絡はこちらから
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だそうです。すごくないですか?
ひとりはしゃいでおりました。
スミマセン(苦笑)


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