後継者が「やりたいこと」がわからない理由

今の風潮として、「好きなことを仕事にしよう」といった風潮があります。
その言葉にぜひ乗りたい、と思うことは思うのです。
しかしやりたい仕事なんて・・・
といきなり立ちどまってしまいます。

一時の私がまさにそんな状態でした。
わからないから結局、むしろ仕事なんてせずに生活できたらどんなに楽か、と思うわけ。
そんな日々って、結構つらいんですけどね。

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会社にいる後継者は別人格

会社のドアをくぐった瞬間の変化

日頃はだらしない毎日を送っていました。
基本的にルーズだし、常識知らず。
社会人としては、グダグダです。
できることなら外出もせず、自分の趣味に没頭していたい。
もともと私はそういうタイプの人間です。

しかし、ひとたび会社のドアをくぐると、変身するわけです。
それなりにちゃんとしたビジネスマン風の仕草をする。
一応ちゃんとスーツを着るし、ある時期までは人前でネクタイを緩めるどころか、暑い夏でもお客さんの前ではジャケットは脱がない。
個人のお客様のところでは、正座は崩さないし、気の利いたヤツを演じる。

社内でも、完全無欠のミスのない人を目指しました。
言葉も崩さないし、スキも見せない。
そういう人格を”演じて”いました。

別人格であることに気づかない

普通、オンとオフはわけるのが大人のたしなみでしょう。
私もその程度のつもりでした。
社会人たるものこうあるべき、と信じる何者かになっていたわけです。
当然、仕事における判断は、その「何者か」が判断を下します。
「きっちりした自分」を演じて、そのキャラで判断を下す。

すると何が起こるかというと、好きか嫌いかという判断基準はどこかに消え去ってしまいます。
だってそうじゃないですが。
仕事で好き嫌いを言うことって、タブーなわけです。
「きっちりした自分」人格の基準では。

たとえば、社員の採用で、パッと見た感じ、
「この人とはうまくやれるかも」という基準では選んでいけないと思うわけです。
むしろ、「スキルは?経験は?」なんて言うマジメ腐った判断基準を持ち出してくる。

何かのプロジェクトを始めるにしても、
「現実可能性は高いか?」なんて言うロジカルに考える。
「楽しいか?そうでないか?」という価値観は無視。
そんな状態なわけです。

無視し続けた価値観

本当の自分が忘れ去られていく

だんだんと、ビジネスの現場では、本来の自分の感情が邪魔になってくるわけです。
先ほどの採用の話で言うと、「好き嫌いで人を選ぶ」という感情はあってはならないことだから消えてくれ、となる。
それを奥に沈めて、「きっちりした自分」人格で決めるから、だいたいうまくいかない(苦笑)

こういう傾向は、仕事の現場だけではないと思います。
学生時代には、学校には学校の社会があります。
そのなかでは、自分なりに表現していい自分と、表現してはいけない自分がたいていあります。
いい奴に見られたいとか、ワガママにみられたくないとか。

子供のころから、「他人から見た自分を意識した自分」像を作り上げてきているはずです。
そうすると本当の自分とは別人格で日ごろから考える癖がつきます。
(人から見た)自分は、こう考える人であるべき、って感じですね。
本当の自分より、人が見たイメージを大事にする。
それが癖になって、人から見た自分が破綻しない思考をするようになるわけです。

当時の私は、別人格を生きて、別人格で考えていたわけです。

他人が評価する「好きなこと」、他人が見た「自分」

人から見た自分を、どう演じるかが常に自分にとっての判断基準です。
だから社員採用で、「相性重視」「顔重視」とかいうと、ああ人は自分のことこんな風には見てないな、とか、
後継者である自分の立場を考えると、これはふざけたやつと思われるかもしれないな、とか、
社会人としてどうよ、とか、まあ他社における評価で物事を決めてしまう。

その時は、「ああ、これでイメージダウンせずにすんだ」とほっとしてるかもしれませんが、あとからだんだんと思うわけです。
あれ、ちょっと違うぞ、と。

これ、気づいてしまうと愕然とするのですが、こんなことを繰り返していたんです。
・人から見たときの見栄えを考えて、親の家業を継ぐことを決めた →本当にやりたかったことじゃないのかも・・・
・親の家業を継いでからは、周囲の目から見てちゃんとしてる感のある後継者になろうと頑張った →ちょっとしんどい
・親の会社辞めたいけど、家業である以上そういうわけにはいかない →自分はもう手詰まりだ
こういやって、壁にぶつかると、本当の自分と別人格の自分の想いがぶつかります。
「2つの選択肢があって、どちらか選ぶことができない」
という場合、そんな状態に陥っているのではないでしょうか?

後継者が何をやりたいかがわからない理由

「別人格」のいうことは納得できない

後継者にとって何がやりたいか?ときかれたらたいていまずは「別人格」が答えます。
会社をこういう規模にしたいとか、上場が夢だとか。
私も当初そうでした。
けど、本当にそうなんだろうか?と問い詰めてみたわけです。
すると、会社の規模を大きく?上場?だからなに?って話なわけです。

マジメ人格が考える「やりたい事」なんて、実は、本当の自分にはあまり響かないんですね。
そのことに気づいている後継者は、
「あ、オレ、やりたいことって何だろう?」
という質問の中で、頭を抱えてしまうのです。
今の風潮として言われる「やりたいことで稼ごう」なんて言うのは意味不明なわけです。

しかし、仕事が楽しくなければ、後継者なんてやってられるか!って話になります。
後継者が親の会社をやめたがるのは、そういうメンタリティがベースにあるんじゃないかと思っています。
じゃあこれが、親の会社を離れたらうまくいくのでしょうか。
まあいい上司やいい環境に恵まれれば、上手くいくかもしれないし、そうでなければそうでない。
結局そこにも間違いなくリスクはあるわけです。

自分が、本当の自分にアクセスすることを迂回して、上手くいくことはかなり難しいと思うわけです。

そもそも別人格ができる理由

さて、この「別人格でなければならない」「別人格を作らなければうまくいかない」という発想の根っこには何があるのでしょうか。
それは、「本当の自分ではダメだ」という前提があるわけです。
本当の自分をダダ洩れにしていたら、社会生活や、仕事生活がうまくいかないと考えているから、別の「きっちしりた自分」を作る必要がある。
つまり、誰よりも、自分自身が、自分のことにダメ出ししてる状態。
本当の自分は社会では使い物にならないから、偽りの自分として生きなければならない、という図式が頭の中で成り立っています。

このことが最終的には、後継者がよく口にする「自信がない」という言葉にもつながってきます。

じゃあ、外から隠してしまっている本当の自分がダメなのか?というと実はそうでもない。
もちろん、欠点もありますが、いいところもある。
これはきっちりした自分だって、おんなじです。
だったら、変に別人格を演じるより、本当の人格で勝負したほうが楽じゃないですか、って話です。

けどね、怖いんです。
”地”を出すのは。
これは、失礼なたとえですが、毎日お化粧して外出する習慣のある女性が、「明日からすっぴんで出かけてください」と言われるのと似ています。
日頃完全武装している人が、その奥にあるものを外に出すには勇気がいります。

しかし一方で、芸能人なんかのインスタでも「メイクするよりすっぴんのほうがかわいー」なんていう書き込みがあったりします。
自分としては、化粧した状態が自分のあるべき姿と思っているのかもしれませんが、実はそれがないほうが魅力的なことはけっこうあります。
さすがに女性のお化粧の魔力はすごいものがありますが、かつてはやったヤマンバギャルとすっぴんなら後者をとる人が多いのではないでしょうか。
けど、彼女たちは、ヤマンバであることが重要だったようです。
見栄えを気にして、すごくいいものを隠してしまうという矛盾、けっこうあるのではないでしょうか。

マジメ人格のやりたいこと、本当の人格のやりたいこと

すっぴんで外出するのが怖いなら

とりあえず、すっぴんで会社に行き、すっぴんで人と接してみましょう(あ、もちろん比喩ですよ)
そう提案されて、それができるならやってみるのがいいと思います。

けどもしそれが難しいとすれば、せめて「やりたいこと」と聞かれた時に、マジメ人格で考えるのをやめる努力をしてみてください。
後継者はまじめな方が多い。たぶん、マジメ人格全開なんですよね。
そのマジメ人格で考えると、つまらない「やりたいこと」しか出てきません。
だからそこに力が入らない。

そうじゃなくて、仕事と紐づけしなくていいので、とにかく今やって楽しいこと、過去やって楽しかったことを全部上げてみる。
夢中になった趣味があるかもしれません。
一つのことに夢中にならなかったとしても、たとえば、絵をかいたり、音楽をやってみたり、小説を書いてみたり、という経緯をたどったのなら、何かを創り出すのが好きなのかもしれません。
もう何でもいいので、楽しかったことをひたすら無理やり書き出してみる。
で、その中で一番楽しかったことを、
「もしこれが今の仕事と結びつくとしたらどんな形だろう?」
と考えてみる。

私の知人で、1年の半分以上を全国のゴルフ場で過ごしている人がいます。
この人、めちゃくちゃ稼いでます。
他にも何やってるんだかわからない人がいますが、けっこう本業は好調のようです。
まじめに、今までの延長で会社を伸ばそうとするからしんどくなるんであって、思いっきり遊び心を注入してみる大胆なアイデアを出してみてください。

すぐに実現はできなくとも、そのアイデアのごく一部でいいので小さく小さく始めてみる。
「やるぞー!」とか気合い入れちゃいけません。
軽やかに始めてください。
ちょっとやってみるか、って感じです。
続かなくても、失敗しても恥をかかないようにやってみる。
(そもそも失敗したら恥というのは、マジメ人格くんが考えてるんだと思いますけど)

いくつかそんな軽やかなチャレンジをやっていると、そのうち「あ、これもっとやってみたいかもしれないな」と思うことが出てくるはずです。
というか、その時点で夢中になってるかもしれませんね。

一つ愉しみができると起こる事

きっと今までは、こんなループを繰り返していたのではないでしょうか。
マジメ人格で判断する
→やってみて何かが違うと思う
→その違和感が大きくなる
→違う場で仕切り直しをしたくなる
→マジメ人格ではそのようなことは許されない

この段階で、マジメ人格は「そんな判断できるはずがない」と思いつつ、
本当人格は「もうやめたい」と思って揺れに揺れる。
そこに来ると、10年以上結論が出ないこともしばしばです。

じゃあ、このループのどこかを変えなければなりません。
その時に、一番初めの「マジメ人格で判断する」をほんの少し変えてみる。
すると以下のステップは、オセロの角をとるかのようにパタパタパタと変わる可能性はあります。

同じことをやっていても同じ結果しか出てこない。
ならば、違うことをやる必要がある。
その時に、実は一番手っ取り早くて、自分でコントロールできる部分というのが、
「マジメ人格で判断する」を変えることではないでしょうか。

ダメもとでいいと思います。
軽やかに変化してみることを考えてみませんか?
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