創業者

後継者教育は、消去法で行われている!?

会社の事業承継に際して、
後継者教育はどのように行うのか。
これを体系的に行えている中小企業は皆無と言えるでしょう。

ほとんどの場合、消去法で行われているのが
後継者教育です。

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親が家業を営んでおり、子どもが後継者候補となる場合、
その教育方法はあまりに脆弱です。
ありがちなのが、関連事業を営む大手企業で業界経験を積ませる。
他には同業他社だったり、外で仕事をさせる。
その程度。
その程度の選択肢しかないわけです。

ところで、後継者教育には大きく2つの流れがあると考えています。
一つは、知識や技術に関する教育。
そしてもう一つは、マインド。

知識や技術に関する教育は、多くの場合同業他社でも学べるでしょう。
大手の関連事業者に行けば、業界を学び、マネジメントなども学ぶことができるかもしれません。
本来、その程度のことは、先代が見ている世界観をきちんと教えられればそれで済む話です。
私情が絡むから、教える時間がないから、他人にそれを委ねます。
最善の選択というより、消去法で残った方法と言えそうです。

他に方法がないからそれを最善と思いこむわけですが、
それでは足りない部分もあります。
少なくとも、他所で間借りすることで育てることでは、経営者マインドは育たないでしょう。

 

じゃあ、マインド。
心の部分はどう育てていけばいいのでしょうか。
私の知る限り、これといった妙案は浮かびません。

 

ところで、知識や技術は、ある程度集中して学べば、いつでも取り返しが可能です。
特に業種・業界特有のそれは、経営には実は意外と影響度が少ない。
「こいつ、何を言っているのだ?」
と言われてしまいそうですが、専門ばかになることは、経営者という立場では少し問題があります。
それは、非常に視野が狭くなってしまうことです。

中小企業庁が発表している2006年版中小企業白書に、後継者教育の誤りにより廃業に追い込まれた事例が出ています。

事例3-2-3 後継者教育を誤り廃業に追い込まれた企業

C社(千葉県、従業員30名)は設立30年程度の食料品小売業。現社長は堅実な経営方針であり、設立当初より高収益確保、豊富な内部留保を蓄え、店舗数がピーク時には3店舗まで拡大した。しかし、大型郊外型店舗が商圏に次々と進出して来たことにより、徐々に売上が減少、経営が悪化の一途を辿った。
社長自身も事業継続に向け、数々の勉強会参加や陳列商品の見直し、不採算店舗の閉鎖など様々な対応策を図ったものの、それでも売上の減少を食い止めることはできず、売上高は最盛期の半分程度まで落ち込んだ。
後継者候補であった長男は、学校卒業後他社で就業の経験を積んだ後、同社の最盛期に就職。後継者候補として父親である社長のサポートを行っていた。ただし、長男は次期経営者という視点で事業参加しているというよりは、一従業員と同じように一般担当者としての勤務を続けており、業界および時代の変化をつかむことはできなかった。そして社長もその姿にあまり疑問を感じていなかった。
だが、次期経営者を育てて来なかった結果として、同社は事業継続の困難性に気づき、社長の高齢化に合わせて店舗を閉鎖する方向性となった。今後は会社資産であった店舗の不動産賃貸業として再生を図っている。

この事例は、先代も後継者も、業界の常識の中でしか発想を持てなかった可能性があったのではないかと思います。
市場や社会の変化に対応できなかった、と言えるのではないでしょうか。
実はこの問題、業界の中で、業界の専門知識を学ぶことではこういったことに気づくセンスは磨きにくい。
そこを一歩飛び出した発想が必要となります。

だから私は、どうせ消去法で行う後継者教育なら、異業種で学んだほうが効果は高いと考えています。
なぜなら、自分の業界を懐疑的にみることができるからです。

では、なぜ先代は後継者を自分の業界であったり、隣接業界で学ばせようとするのでしょうか。
恐らく、結果を急いでいるのでしょうね。
すぐに会社の中で役立てられる知識を、と考える。
しかし、それが結果として、業界や社会の変化をとらえきれず、会社を支えきれなくなる。

 

本質的な話をすると、同じ方法を試せば、結果は同じ結果しか出ません。
会社の状況が今一つであるなら、違う方法を試す必要がある。
しかし、後継者も先代も同じ枠組みの知識しかないから、違う方法を思いつかない。
違う発想ができない。
そんな風に小さくまとまってしまう。

変化の少ない時代では、小さな専門分野に視野を集中させることで十分何とかなりました。
今は、投入するリソースは小さな分野に集中させるとしても、視野は広くとっておいたほうがいい。
そういった時代に即した後継者育成ができていない、というのが中小企業にとってのボトルネックなのかもしれません。

こういった感性は、座学で体得するのが難しいもの。
それは人と人とのつながりの中で、影響を受けたり与えたりしながら醸成されてくるのではないでしょうか。
そんな場所が後継者には必要なのではないでしょうか。

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