自営業の親を持つ子供として親の会社に入った時、当初想定しなかった悩みにぶつかる人はけっこう多いようです。
自分としては、きっと親のような経営者になれるだろうと思っていたのが、どうも様子が違う。
なんだか、早い段階でつまずいてしまい、自分の将来が見えなくなってしまった。
上手くいかない親との関係、仕事に対する不安、見えない未来に悶々とする状況。
そんな状態に陥っているとすれば、あれもこれも、と欲張りすぎてしまっているのかもしれません。
経営者なんて聖人君子ではありません。
すべてがうまくできるとか、すべてが道徳的に正しいとか、ありえません。
私は、自営業の親を継ぐ後継者が知っておくべき一つの目的があると思っています。
以下、そんなお話をさせていただきます。
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Contents
会社がつぶれたとしても後継者だけの責任ではない!?
もし今、後継者として芽が出ていないのであれば・・・
恐らく自営業の親を継ぐために会社に入った後継者は、若いころからいろんなことを学ぶべき、と言われてきたのではないかと思います。
商品や業界のことといった直接的な仕事に関わること、
また経営者としての資質を育てるための人格形成や、人脈作り。
社内での人望や、その他さまざまなことを後継者はクリアしていかなければならない。
そう信じられているのではないでしょうか。
もちろんすべてクリアできれば、そんなにいいことはありません。
しかし、後継者だって人間です。
あれもこれもすべてできるなんて言うのはまず不可能でしょうし、そもそも親だって完ぺきじゃないはずです。
しかし、それは根拠のないデマだったとしたらどうでしょうか。
こういった「後継者はこうあるべき」という話のほとんどは、個人の経験や、単に「そう思う」というレベルの話がほとんど。
エビデンス、つまりそれを証明する証拠などないものがほとんど。
発言している人が「自分を偉い人に見せたい」から言ってるとすると、ミスリードの可能性もありそうです。
なぜ企業に寿命はあるのか?
ここで一つ考えてみたいことがあります。
それは、本来、永続的な発展を願って法人化される企業に、なぜ寿命があるのか、ということです。
1980年代に出版された、『会社の寿命』という本があります。
この本は、当時から100年さかのぼり、日本の上位100社、つまりのべ1万社のデータを分析して導き出された会社の寿命について書かれた本です。
そこで導き出された会社の平均寿命は30年。
日本のトップ100社という大企業でもたった30年しか生き延びられないのです。
ここで考えてみましょう。
中小企業の場合なら、会社が30年くらいでつぶれてしまったとします。
その時に、後継者が会社に入っていたら、世間はこう考えるような気がしませんか?
「あの会社は後継者が頼りないから潰れた」
「あの会社は事業承継に失敗した」
私たち跡継ぎは、こういった恐怖と闘っている、と言えるのかもしれません。
さて、トップ100社の話であれば、さすがに後継者問題でつぶれたというケースは少ないでしょう。
なにしろ、社長になりたいという人は、たくさんいたから、少しでもミスをすれば社長は後退すると思います。
しかし中小企業においてはなぜか、それは後継者の問題とされて今います。
それは「創業社長は優れていたから会社を創れた。後継者は資質が足りなくて会社をつぶした」という単純な思い込みが世間を支配しているからではないでしょうか。
会社の命が限りある理由
自営業が成り立つのは〇〇があるから!?
では、会社という、本来半永久的であるはずのものが限られた命というのはなぜなのでしょうか。
そのヒントはやはり、『会社の寿命』の中にあります。
どんな優良企業でも、本業比率が七割以上を占め、社員の平均年齢が三十歳を超えた時、明確に衰退の道をたどり始める。そして、会社が生き残るために必要なことを、こうまとめました。会社の寿命を延ばす唯一の方法は、「変身」である。
1万社を調査した結果、会社が衰退する兆しを明確にしたのです。
社員の平均年齢というのは、若い社員を淹れないことによる社内の停滞。新陳代謝が起こっていないことを表していると考えられます。
さらに大事なのが、この本業比率が7割という事。
これはいいかえると、「次の本業となるであろうビジネスのテストを行っていない」という事ではないでしょうか。
たとえば、富士フィルムは、まだ写真フィルムの売上が会社を支えていたときに、いち早くデジカメの開発を行い、次のビジネスの支柱にしました。
しかし写真フィルムにこだわったコダックは、そのままダメになってしまいました。
これを中小企業に当てはめて考えると、中小企業はそもそも本業比率がほぼ100%のところが多いと思います。
それはどういうことかというと、それだけ不安定な状況だったと言えるかもしれません。
親が自営業を始めた時点から今まで、常に不安定だったけど、たまたまうまく行っていた。
そして、30年くらいするとその商品にも寿命が来るのでしょう。
飽きられたり、違う技術で代替されたり、必要性がなくなったりして、親の代から愛されてきた商品の魅力がなくなってくる。
つまり、私は会社に寿命があるのは、その主力商品の賞味期限が切れるからだ、と考えています。
ちゃんとそれを代替する商品やビジネスモデルを開発した会社は、その後も10年、20年、30年、と生き延びていくのです。
大事なのは商品です。
ほとんどの後継者教育は会社の存続にあまり大きな影響を及ぼさない!?
さらに驚くべき考え方をお伝えしたいと思います。
これは、心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン氏の著書『ファースト&スロー』のなかの一節です。
相関係数が0.30だとすれば、優れたCEOの率いる会社が相手より良い業績を上げる確率は約60%になるーーーこれでは運頼みの場合より10%高いだけであり、ビジネス書に頻繁に見受けられるCEO英雄神話を裏付ける数字とはいいがたい。
ノーベル賞学者が言っているのは、会社経営においてCEO(平たく言えば経営者)の能力は意外と小さいよ、という事です。
さすがに大企業と比べると、中小企業においては経営者の能力の影響度はもう少し高いと思いますが、世の中で思われているほどには経営者の影響力は大きくないかもしれません。
考えてみれば例えば、野球でも、サッカーでも、ある年に優勝したりする監督はほめたたえられます。
そしてその監督がいかに素晴らしいかを様々なメディアが特集します。
しかし同じ監督のまま数年すると、そのチームもだんだんと弱くなってきます。
もちろん名監督であることはちがいないのでしょうが、結果としての勝ち負けは「たまたま」という要素が大きいのかもしれません。
だとすると、道徳チックな偉い先輩経営者の言葉は、後継者にとってどの程度大事なのかは微妙かもしれません。
良い商品さえあれば・・・
企業業績の優劣は経営者の優劣ではない!?
ここでもう一つ確認しておきたいと思います。
以下は、日本でいま最も有名と言っても過言ではない、経営コンサルタントの神田昌典氏の『60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法』の一節です。
企業業績の優劣は、経営者の優劣と同一視される傾向がある。確かに長期的に見れば、企業業績のほぼ九割九分は経営者の実力が決める。それについて、私は全く異論がない。しかし短期的に見れば、経営者の優秀さと、ビジネスの成功は必ずしも一致しない。運よくこれから成長する商品に出会えば、どんなにバカな経営者でも、爆発的に儲かってしまうのである。
氏は、ビジネスの成功は経営者ではなく、商品だと言い切っています。
これから成長する商品です。
ただ、先ほどの『会社の寿命』で言っていた会社衰退の兆しである、本業比率の高さという事で考えると「成長期を終えた商品と心中する」というのが寿命を終える企業の一つのパターンなのかもしれません。
だとすると、後継者が本来やるべきことは明確になってきます。
これから10年、20年、30年、会社を引っ張ってくれる商品の発掘・開発ではないでしょうか。
後継者がやるべきことはたった一つ
会社をつぶさず、繁栄させる。
事業承継の目指すべきゴールがそこにあるとしたら、後継者のやるべきことはたった一つです。
先ほども申しあげたとおり、これからの会社をけん引する
・商品
・製品
・サービス
と、
・出会い
・発掘し
・開発し
・軌道に乗せる
という事になります。
社内をまとめるとか、自分を成長させるとか、そういうことはすべて、この目的のための手段となります。
まとめ
ここまで見てきたことをまとめてみたいと思います。
一般的には、事業承継においては後継者の経営者としての成長が必要不可欠だと信じられています。
しかし、実際のところは、経営者の資質と企業の業績はあまり関連性が深くはない(ダニエル・カーネマン氏)。
会社の寿命という本を紐解くと、会社の存続要件はどうやら「本業にしがみつく」よりもむしろ「新たな商品との出会いやテスト」が重要に推察できるデータが見える。
さらにいえば経営者がどんな人であれ、成長期の商品と出会えば会社は儲かる(神田昌典氏)
つまり、自営業の親を継ぐ後継者が完遂すべき目的は、
・親の会社の商品・製品・サービス・ビジネスモデルが今成長期か、それを終えているかを判断する(多くは終えてる)
・もし成長期を終えかけているなら、その商品等にかわる自社の主力ビジネスをテストし、ビジネスとして成立させる
という事に尽きるのではないでしょうか。
あれこれとすべてを満たして完ぺきな後継者を目指すよりも、ここに集中して必要なものだけを取り込み、学び、行動していくのが結果が出やすいのではないかと私は考えています。
そのために必要なのは、いつもとは違う人脈ではないかと思います。
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